皇帝にプロポーズされても断り続ける最強オメガ

手塚エマ

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第三章 争奪戦

第53話 帝位の危機

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 サリオンはアルベルトの胸の中で瞠目し、噂話に聞き入った。

 レナと同じ最高位の昼三男娼のオリバーなら、皇帝の従弟にあたる提督の世継ぎを産み、妃として取り立てられるにふさわしい美貌のオメガだ。


 オリバーも、自分達と同じように隣国から、奴隷として連れて来られたオメガだった。

 テオクウィントス帝国のオメガやクルム国とは違い、懐妊の兆しは僅か五、六日後には見られるという。
 オリバーの国のオメガは子供を孕むと、全身の皮膚に軽い痒みと、痛みをともなう発疹が出る。

 そして数日後にはそれが消え、半年余りの妊娠期を経て出産に至る。

 受胎による体の変化も、胎児の成長も速いのだ。


「今日の昼過ぎ辺りから、その発疹が出始めたそうだ」
「日にちをたどって数えると、相手は提督だったっていう訳か」
「どうやら皇帝よりも提督の方が、男としての機能は勝っておられたようだな」


 と、嘲笑が微かに聞こえた瞬間に、アルベルトの胸の中でサリオンはカッとなり、振り向いた。
 噂をしていた二人の男を、火のような目で睨んだサリオンに当て擦るように、トガをまとった彼等は軽く首をすくめ、せせら笑いを浮かべながら、門の中へと姿を消した。

 怒りで肩をそびやかせていたサリオンは、その両肩に手を置かれ、我に返って顔を上げた。

「……知っていたのか?」

 
 オリバーの懐妊をという問いかけに、アルベルトは重々しく頷いた。

 サリオンは、アルベルトの麻の貫頭衣の、胸元辺りを握り締めた。目を見張り、瞳を激しく戦慄かせた。
 公娼に来る客の耳にも入ったぐらいだ。

 皇帝には真っ先に、報せが行っていたはずだった。

「オリバー様が……、ダビデ提督の御子様を……」

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