皇帝にプロポーズされても断り続ける最強オメガ

手塚エマ

文字の大きさ
160 / 306
第三章 争奪戦

第71話 軟禁

しおりを挟む
 宮殿の正面から続く、幅広い華麗な廊下を直進した後、右に曲がり、しばらく歩いて再び右折や左折をくり返した。
 奥まった領域にも、廊下の片側には半円形の窓がずらりと並んでいる。
 そして、もう片側には、月桂樹のレリーフに、金箔を貼った装飾的な漆喰壁しっくいかべと、大理石の柱と、重厚な木製扉が続いていた。

 どれも優雅で繊細ではあるものの、正面玄関から続いた廊下に比べれば、華美な装飾は減っている。


 公の場から、皇帝が寝起きする居住区に移動しているような気がした。

 壁に直に取りつけられた燭台の数も減っている。

 窓から斜めに射し込む月明かり。大理石の廊下に映し出された窓枠の影が、静謐さを感じさせた。


「どこまで連れて行く気だよ」

 まるで迷路を延々歩かされているようだ。
 サリオンはうんざりしながら問いかけた。すると、サリオンの腰から肩へと右腕を移動させたアルベルトは、楽しそうに一笑した。


「お前が一人で宮殿から抜け出すことができなくなるまで」
「勝手に帰れなくするつもりかよ」
「ああ、そうだ。ここまで来れば、お前が今すぐ帰りたいと思っても、案内なしでは宮殿からは出られない」
「俺は、どこで何回、廊下を曲がって来たのかぐらい覚えている」
「だとしても、俺の許可なく帰ろうとすれば、衛兵に捕らわれる」


 不敵な笑みを浮かべる男を、サリオンは憎々しげに見上げて睨んだ。


「……このまま軟禁する気じゃないだろうな?」
「それは今夜のお前の返答次第だ」

 皇帝アルベルトの宮殿は敵地であり、戦場なのだと知らしめるような宣告だ。


「何にしろ、この宮殿のどこに何があるのかを、少しでも覚えてくれたなら、それはそれで、ありがたい。近いうちに、お前もここで暮らすんだ」
「誰が決めた? 俺はそんなことは一言も言ってない」
「それなら何の為にここに来た? 二人きりで話がしたいと言ってきたのは、お前の方だぞ?」

 ぐっと喉を詰まらせたサリオンに、上目遣いに睨まれたアルベルトが、ふっと口元を緩ませた。

 自分ではなく、レナとの間に子供をもうけるように、画策をしに来たなどと、うかつに言えないサリオンは、憮然と横を向く。
 アルベルトは含み笑いをこぼしたあと、サリオンの柔らかな金髪を、くしゃりと片手で掻き混ぜた。

しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

若頭と小鳥

真木
BL
極悪人といわれる若頭、けれど義弟にだけは優しい。小さくて弱い義弟を構いたくて仕方ない義兄と、自信がなくて病弱な義弟の甘々な日々。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

黒とオメガの騎士の子育て〜この子確かに俺とお前にそっくりだけど、産んだ覚えないんですけど!?〜

せるせ
BL
王都の騎士団に所属するオメガのセルジュは、ある日なぜか北の若き辺境伯クロードの城で目が覚めた。 しかも隣で泣いているのは、クロードと同じ目を持つ自分にそっくりな赤ん坊で……? 「お前が産んだ、俺の子供だ」 いや、そんなこと言われても、産んだ記憶もあんなことやこんなことをした記憶も無いんですけど!? クロードとは元々険悪な仲だったはずなのに、一体どうしてこんなことに? 一途な黒髪アルファの年下辺境伯×金髪オメガの年上騎士 ※一応オメガバース設定をお借りしています

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

処理中です...