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第三章 争奪戦
第71話 軟禁
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宮殿の正面から続く、幅広い華麗な廊下を直進した後、右に曲がり、しばらく歩いて再び右折や左折をくり返した。
奥まった領域にも、廊下の片側には半円形の窓がずらりと並んでいる。
そして、もう片側には、月桂樹のレリーフに、金箔を貼った装飾的な漆喰壁と、大理石の柱と、重厚な木製扉が続いていた。
どれも優雅で繊細ではあるものの、正面玄関から続いた廊下に比べれば、華美な装飾は減っている。
公の場から、皇帝が寝起きする居住区に移動しているような気がした。
壁に直に取りつけられた燭台の数も減っている。
窓から斜めに射し込む月明かり。大理石の廊下に映し出された窓枠の影が、静謐さを感じさせた。
「どこまで連れて行く気だよ」
まるで迷路を延々歩かされているようだ。
サリオンはうんざりしながら問いかけた。すると、サリオンの腰から肩へと右腕を移動させたアルベルトは、楽しそうに一笑した。
「お前が一人で宮殿から抜け出すことができなくなるまで」
「勝手に帰れなくするつもりかよ」
「ああ、そうだ。ここまで来れば、お前が今すぐ帰りたいと思っても、案内なしでは宮殿からは出られない」
「俺は、どこで何回、廊下を曲がって来たのかぐらい覚えている」
「だとしても、俺の許可なく帰ろうとすれば、衛兵に捕らわれる」
不敵な笑みを浮かべる男を、サリオンは憎々しげに見上げて睨んだ。
「……このまま軟禁する気じゃないだろうな?」
「それは今夜のお前の返答次第だ」
皇帝アルベルトの宮殿は敵地であり、戦場なのだと知らしめるような宣告だ。
「何にしろ、この宮殿のどこに何があるのかを、少しでも覚えてくれたなら、それはそれで、ありがたい。近いうちに、お前もここで暮らすんだ」
「誰が決めた? 俺はそんなことは一言も言ってない」
「それなら何の為にここに来た? 二人きりで話がしたいと言ってきたのは、お前の方だぞ?」
ぐっと喉を詰まらせたサリオンに、上目遣いに睨まれたアルベルトが、ふっと口元を緩ませた。
自分ではなく、レナとの間に子供をもうけるように、画策をしに来たなどと、うかつに言えないサリオンは、憮然と横を向く。
アルベルトは含み笑いをこぼしたあと、サリオンの柔らかな金髪を、くしゃりと片手で掻き混ぜた。
奥まった領域にも、廊下の片側には半円形の窓がずらりと並んでいる。
そして、もう片側には、月桂樹のレリーフに、金箔を貼った装飾的な漆喰壁と、大理石の柱と、重厚な木製扉が続いていた。
どれも優雅で繊細ではあるものの、正面玄関から続いた廊下に比べれば、華美な装飾は減っている。
公の場から、皇帝が寝起きする居住区に移動しているような気がした。
壁に直に取りつけられた燭台の数も減っている。
窓から斜めに射し込む月明かり。大理石の廊下に映し出された窓枠の影が、静謐さを感じさせた。
「どこまで連れて行く気だよ」
まるで迷路を延々歩かされているようだ。
サリオンはうんざりしながら問いかけた。すると、サリオンの腰から肩へと右腕を移動させたアルベルトは、楽しそうに一笑した。
「お前が一人で宮殿から抜け出すことができなくなるまで」
「勝手に帰れなくするつもりかよ」
「ああ、そうだ。ここまで来れば、お前が今すぐ帰りたいと思っても、案内なしでは宮殿からは出られない」
「俺は、どこで何回、廊下を曲がって来たのかぐらい覚えている」
「だとしても、俺の許可なく帰ろうとすれば、衛兵に捕らわれる」
不敵な笑みを浮かべる男を、サリオンは憎々しげに見上げて睨んだ。
「……このまま軟禁する気じゃないだろうな?」
「それは今夜のお前の返答次第だ」
皇帝アルベルトの宮殿は敵地であり、戦場なのだと知らしめるような宣告だ。
「何にしろ、この宮殿のどこに何があるのかを、少しでも覚えてくれたなら、それはそれで、ありがたい。近いうちに、お前もここで暮らすんだ」
「誰が決めた? 俺はそんなことは一言も言ってない」
「それなら何の為にここに来た? 二人きりで話がしたいと言ってきたのは、お前の方だぞ?」
ぐっと喉を詰まらせたサリオンに、上目遣いに睨まれたアルベルトが、ふっと口元を緩ませた。
自分ではなく、レナとの間に子供をもうけるように、画策をしに来たなどと、うかつに言えないサリオンは、憮然と横を向く。
アルベルトは含み笑いをこぼしたあと、サリオンの柔らかな金髪を、くしゃりと片手で掻き混ぜた。
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