皇帝にプロポーズされても断り続ける最強オメガ

手塚エマ

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第五章 皇帝の寵姫として

第22話 取り残されている

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「ああ、それから」

 一度は部屋を出たはずのアルベルトが、護衛に開けさせた両開け扉から戻って来た。

「サリオン。お前はこの王宮のどこへ行っても構わない。離宮を離れて少し歩けば川もある。釣りがしたければ自由にしろという意味だ。ただし、俺の目を盗み、王宮を出ようものなら、たとえお前でも許さない。俺としても、それ相応の対応をせざるを得ない」

 但し紙を読み上げるようにして釘をさされ、サリオンはむっとした。

「俺は自分の意思でここに来た。どんな生活が待っていようと逃げ出すぐらいなら来ていない」

 鉄の覚悟を疑われ、サリオンは反論した。
 すると、目に見えてアルベルトの顔が和らいだ。

「すまない。お前の親友だというミハエルと抱き合うお前が里心を起こすんじゃないかと、不安になったまでだ。お前が俺との約束をたがうはずがないことを失念していた。許してくれ」

 言葉を尽くして詫びながら、アルベルトに手を取られ、そっとキスをほどこした。
 その手をさりげなく引いてから、サリオンは後ろ手にして言い返す。

「別にそこまで謝らなくても……」
「許してくれたのか?」
「……うん」
「ああ、サリオン」

 先ほどのミハエルのように両腕を広げかけた恋人を、素早く反転させて追い出した。
 サリオンは自分で扉を閉じた後、ドアに耳を寄せ、足音が遠のくまで待っていた。
 ほどなく、彼らしい歩幅で立ち去る音がし始めて、初めてほっと、息をつく。

 まさか、毎朝こんなやりとりが続くのか?

 それだけで一日の我慢の限界と体力の両方を消耗しそうだと、今から頭が痛くなる。

「相変わらずだな」
「ミハエル様。それをおっしゃらないで下さいませ」
「逆だぞ? サリオン。ここでは俺がサリオンに様をつける立場だぞ?」
「もう、どちらが上でどちらが下かなんて関係ありません」

 サリオンは眼光鋭くミハエルをきつく見据えて申し出る。

「でしたら、今後は互いに差別はしないよう、名前で呼び合わせてください、ミハエル。アルベルトも、それならわかってくれるはずから」

 下男として招いた訳ではなく、ひとりの友人として招いた彼から様呼ばわりはされたくない。

 その気持ちが伝わったのか、ミハエルは快く頷いた。

「昨日の夜のうちに宮殿に招かれたんだ。お前と皇帝陛下が居住する離宮に隣接している王宮内の一室だ。まるで王族にでもなったような部屋だったぞ?」
「それは良かった。安心した」
「ありがとう。サリオン」
「俺の方こそ」

 互いに礼を言いながら、互いの脳裏にレナが浮かんでいるはずだ。
 レナだけが見ず知らずの男を相手に体を開く醜業を強いられ、ひとりでいる。

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