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第五章 皇帝の寵姫として
第58話 夕食の宴
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「庭師を呼んだそうじゃないか」
今夜も同じ食卓についたアルベルトの手元の皿には、縦に串刺しにされた猪の丸焼きを長大なナイフで削られた肉片がのせられ、別の下男に酸味のあるソースがかけられる。
サリオンは公娼の宴席でしか見たことがない高価な 猪肉が、何の変哲もない夕食に出されたことで驚いた。
しかも盛り付けまでの一連の給仕は、まるで見世物であるかのようだった。
「構想は、今朝話をした通りで決まったのか?」
「ウリュウから聞いていないのか?」
「いや、どうせならお前の口から直に聞きたい」
猪肉を豪快に頬張ると、ワイングラスの柄を持った。
アルベルトは土足で踏み込みすぎないよう、気を遣っているらしい。
「俺は水辺が好きだから、小型の噴水をあちこちに作りたい。やっぱり花壇よりも樹木をたくさん植えて、木立の散策路ができるようにしたいんだ。あとは彫刻だな。彫刻には興味がないから置かないことにした」
「斬新だな」
「だって庭には好きなものだけ置きたいんだ」
思わず前のめりになり、はしゃいだような声になる。すると、アルベルトが愛でるように両目を細めた。
サリオンも浮かれた自分に気がついて、決まり悪げに目を伏せる。
猪肉を口にしてから、ワイングラスに手を伸ばす。
すると、下男の給仕がつかつかとやって来て、グラスに赤ワインを注いで去る。
「今日も飲むのか?」
「あっ……」
無意識にグラスを持った自分にサリオンは、慌ててその手を引っ込める。
「別に咎めたわけじゃない」
アルベルトがふと笑う。
「夕べは酒の勢いもあったはずだ。今夜は一人寝でゆっくりしろ」
「アルベルト」
「今日一日、お前はずっと浮かない顔をしていただろう。お前の中で何か整理がつかないものがあるのなら、それを解決させることが先決だ」
今夜も同じ食卓についたアルベルトの手元の皿には、縦に串刺しにされた猪の丸焼きを長大なナイフで削られた肉片がのせられ、別の下男に酸味のあるソースがかけられる。
サリオンは公娼の宴席でしか見たことがない高価な 猪肉が、何の変哲もない夕食に出されたことで驚いた。
しかも盛り付けまでの一連の給仕は、まるで見世物であるかのようだった。
「構想は、今朝話をした通りで決まったのか?」
「ウリュウから聞いていないのか?」
「いや、どうせならお前の口から直に聞きたい」
猪肉を豪快に頬張ると、ワイングラスの柄を持った。
アルベルトは土足で踏み込みすぎないよう、気を遣っているらしい。
「俺は水辺が好きだから、小型の噴水をあちこちに作りたい。やっぱり花壇よりも樹木をたくさん植えて、木立の散策路ができるようにしたいんだ。あとは彫刻だな。彫刻には興味がないから置かないことにした」
「斬新だな」
「だって庭には好きなものだけ置きたいんだ」
思わず前のめりになり、はしゃいだような声になる。すると、アルベルトが愛でるように両目を細めた。
サリオンも浮かれた自分に気がついて、決まり悪げに目を伏せる。
猪肉を口にしてから、ワイングラスに手を伸ばす。
すると、下男の給仕がつかつかとやって来て、グラスに赤ワインを注いで去る。
「今日も飲むのか?」
「あっ……」
無意識にグラスを持った自分にサリオンは、慌ててその手を引っ込める。
「別に咎めたわけじゃない」
アルベルトがふと笑う。
「夕べは酒の勢いもあったはずだ。今夜は一人寝でゆっくりしろ」
「アルベルト」
「今日一日、お前はずっと浮かない顔をしていただろう。お前の中で何か整理がつかないものがあるのなら、それを解決させることが先決だ」
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