皇帝にプロポーズされても断り続ける最強オメガ

手塚エマ

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第五章 皇帝の寵姫として

第59話 誘えない

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  心の気鬱を話せるものなら話したい。
 サリオンは胸の奥底でうそぶいた。
 アルベルトはキリスト教徒だと知ったなら、どんな顔をするのだろう。
 そして信者達にするように、自分を棒杭に巻きつけて火を放ち、街灯代わりにするのだろうか。
 または円形の競技場に追いやって、猛獣に食いつくされるまで剣一本で戦わされたりするのだろうか。

 皇帝の立場を優先するなら、そうするだろう。
 禁忌の異教徒を放置する訳にはいかないはずだ。
 たとえ皇妃であろうとも。

「ともかく庭造りはお前の性に合ってるらしいな。水辺が好きだというのなら、離宮の庭から海にかけて階段がある。海水浴場も完備している。好きなだけ泳いで楽しむといい」

 ひとつになれた夜のことを喜んで欲しいだけなのに。
 満足どころか口数さえも少なくなっていることを、アルベルトは見抜いている。

 夕食の最後に供される干した果物と甘みの強いワインを共に味わって、アルベルトが先に席を立つ。

「おやすみ。サリオン。今日は朝昼晩と一日お前と食事ができて嬉しかった」

 サリオンの手を持ち上げて、お休みのキスを手の甲にほどこす恋人。
 本来ならば名残惜しくて抱き合って、離れがたさをキスでうめるか、ベッドへなだれ込むはずなのに、何ひとつ自分からは迫れない。

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