できそこないの幸せ

さくら怜音/黒桜

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第五章 VS相羽勝行

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普段温厚で優しい代わりに、いつも綺麗な作り笑いを浮かべていた。その腹奥にまるで違う凶悪な人格が潜んでいることは前から知っていた。

その人格に初めて会ったのは桐吾と身体を重ねた後。
次に出会ったのはWINGSを辞めると告げた病院での夜。
三度目は、温泉を前に嫌がる勝行を押し倒した日。
そして四度目。自宅に来た村上晴樹と抜き合いをした後で。

勝行の本性と思われるその人格は、だいたい彼を本気で怒らせた時に現れる。けれど今回は、その人格すら二人いる気がする。――否、今まで気づかなかっただけだろうか?

「お前の細胞の全部、俺のものだ。勝手に他人に振りまくな、この淫乱野郎」

勝行の顔。勝行の声。勝行の匂い。何もかもすべて好きな人のものなのに、どこか今までとは違う気の狂った男が目の前にいる。自分を見下ろし泣きそうな表情で嗤う。

「こんな痕、俺は知らない。俺のじゃない……許されない。全部書き換えないと」

馬乗りになって裸体の光を否定し続けるその男は、灯りのない部屋では闇暗い影にしか見えない。そのセリフをそっくりそのまま返したい。――こんな勝行、俺は知らない、と。

気を失い、あれから相当時間が経ったはずなのに、目覚めても状況は何一つ変わらなかった。違うと言えば、引き千切られたシャツやベッドシーツ、肌のあちこちに精液が飛び散っていることぐらいだろうか。
肌を伝う体液を啜られ悪寒に身を捩ったら、頬をぐいと鷲掴み、無防備な首に噛みついてきた。キスというより飼い主が力でねじ伏せる愛玩動物の躾のような行為。頭上で手錠の鎖の金属音が鳴るたび、二人で大切にしてきた時間が砕けて壊れていく気がした。

「逃げるな。勝手にどこか行くなと何度言えばわかる?」
「ちが……っ、あ、んんっ」
「親父の言いなり教師なんかに簡単に絆されやがって……ほんと、お人好しのバカ犬だよな」
「な、んの話……っ」
「ダメだよ、お仕置き中なんだから口答え禁止。ほら、まだあいつの匂いが残ってる。空っぽになるまで全部抜いて、中身を入れ替えて」
「そ、んなの……も……ぁあ、る、わけなぃ、の……にぃ……っ」

意味の分からない主張を呟いては乱暴に身体を抑えつけ、あちこち噛みついてくる。
かと思いきや、優しい口調で狂ったように何度も光の肌を丹念に舐り、体液を吸い上げるように啜る。唾液も、涙も、精液も全て。ふたりの勝行が目の前で何度も顔を変え、代わる代わる自分を嬲る。

「俺がきっちり見張ってなかったせいだ。やっぱりお前を自由にはしてあげられない……俺がずうっとお前の傍にいないと……いないとダメなんだ……俺の手の届く範疇以外には置いていけない」

独り言のように何度も同じことをブツブツと呟きながら、勝行は光の身体の拘束をどんどん増やしていく。どこから持ち込んできたのかわからないロープに手錠、足枷と、複数の大人のおもちゃ、ローション。
普通の家にはないようなものが不自然に床に散らばっていた。

「あぅ……あ、あ、やめ、むね、も……さわんなぁああっ」
「そう言いながら射精してるのはどうして?」
「し、知ってるくせに……いじわ、るぅうっ、もうやめ……っ出ない、イキたくない……っ」
「ダメだよ……まだ溢れてきてるじゃないか……あの男のものは唾液ひとつ残しちゃいけない」
「もうないって……あいつのじゃ、ないってば……っ」

執拗に弄られ、真っ赤に膨れ上がった蕾を再び吸い上げられて光の腰がびくびく跳ね上がるも、足枷の鎖が動きを阻む。完全拘束のまま、ふたりの勝行から執拗な愛撫を受け続けた光の身体は普段以上に過敏になっていた。まるで気が狂う薬でも盛られたようだ。ほんの少しの刺激でも緩い射精を繰り返してしまう。だがもう何も出ないと文句を吐いても聞き入れてもらえない。これは罰なのだと耳元で囁かれる。しびれる程に疼く後孔部には、ビーズ型のアナルプラグを差し込まれたままだ。時折それの電動スイッチを切り替えては反応を愉しむ様子が眼前に映った。

「ほら……光は後ろを弄るのが好きだろ……知ってるよ」
「う、ぅうあ、あぁあ……っ」
「この穴もあの教師に使わせた?」
「してない……して、ない……ってば……ぁあああ!」

胸とプラグの同時攻撃に負けて再びどろりと白濁汁が零れ出す。「まだあるじゃないか」と嗤われるも、それはもうすっかり中身の薄まった体液のようだった。
散々な辱めを受け続けているけれど、あれから勝行本人の股間にある武器は埋め込まれていない。一度怒りに身を任せてイラマチオしただけで満足したのか、その後は衣服すら乱すことなく、素っ裸で乱れる光の姿を眺め楽しんでいるだけだ。ベッド端に下ろした長い足を組み、首輪に繋がるリードを持ち上げる姿はまるで映画にでも出てきそうな――悪人組織の頭領のようだった。
ボス、という言葉が本当によく似合う。彼を『姫』と呼んで親しんでいるクラスメイトたちがこの姿を見たら、一体どう思うだろうか。

散々喘ぎ過ぎて声が枯れてきた。呼吸もままならない中、電動プラグに犯され続ける光を視姦して楽しむ勝行を見上げ、光は必死に懇願した。

「あの。と、トイレ……トイレ行きたい。これ、外せ」
「介護用のおむつあるよ、つけてあげる」
「っざけんな! 誰がそんなもん……っ」
「精液絞り出すとこは他人に見られても平気なんだから、糞尿だって同じでしょう? 大丈夫、俺はお前のすべてを受け入れられる」
「あほかっどっちも嫌に決まってんだろ。いい加減にしろよ……勝行、自分がおかしいこと言ってるって気づけよ」
「誰がおかしいって。おかしいのはお前を誑かした教師の方に決まってるだろう」
「……っそ……れは」

視線を泳がせた途端、勝行の逆鱗に触れたのか無理やり頬を捕まれ「始末が足りてないようだね」と口腔内の隅々まで舌に浸食される。口の中にある晴樹の残りカスを全部掻き出して匂いも消さないと気が済まないらしい。だがその執拗なまでの口吸いはかえって光の情欲を掻き立てるばかりだ。

「どうして俺じゃ駄目なんだ……どうして」
「ん、まっ……んんっ……」

違う、本当は勝行とシたかった。そう伝えたいのに、何度も口を塞がれて何も上手く話せない。こんな不毛なやりとりを延々と続けてばかり。水分も勝行の唾液以外入ってこないし、食事をした覚えもない。けれど光の鈴口はダラダラと我慢汁を零し続け、情けない姿を晒したままだ。それに気づいた勝行が、指先でピンと弾いて「まだお仕置きが必要だ」と低音で呟く。

「あうぅっ」
「いいものをつけてあげる」

そう告げると床上の不自然なアイテムの山から一本、黒いスティックを手に取った。動けない光の腹の上にぬるっとした熱いローションを垂らし、先端周辺にしっかり塗り込むと、鈴口に棒先をちょんと付けた。瞬時にしてそれが尿道に入ってくるアイテムだと気づく。

「そ……それ、入れたら、ダメ……」
「ああ……やっぱり知ってるんだ。あの男と使った? それとも……今西桐吾と?」

口調は優しいのに、その声は冷たくて残酷だ。そして桐吾の名を告げられ咄嗟に反応した途端、スティック棒は遠慮なく光の尿道を貫いた。

「いやっ、あああああっ、や、それやめ……、ひうぅんっ」
「ふうん……あっという間に飲み込んだね。これも知ってるのか……つまらないな。どんな愛撫をすれば俺だけが知る光が見れるんだろう」

どんどん奥へと押し込まれる棒の凹凸が光の内壁をゴリゴリと刺激する。それが半分以上入った段階で後ろのアナルプラグもぐりぐりと押し込まれ、腹奥の何かが両サイドから押しつけられた。光の眼前に火花が散る。

「ひぁああああっ」

光は可動域ギリギリまで身体を持ち上げ、甲高い嬌声を上げた。痛みと同時にクる快感の波に打たれ、何も考えられない。枯れた声で泣き喚く。

「あーっ、あ、あああ、や……あ、い……っやめ、ぬいて、ぬいてええ!」
「抜いていいの?」
「ひぅ、動かすなっ、ああっ、や、イク、出る……おしっ、漏れ、るぅ!」

ふいに逆走され、ついでに前も後ろも出し入れを繰り返された光はいやいやと首を振り涙声ばかり漏らした。勝行はぐずぐずになって涎と涙まみれの光の顎を掴み「これはお仕置きなのに、随分嬉しそうに呑み込むね?」と笑う。

「ちが、やら、いぁ、ぁああん……これ、いや、嫌い、きらいだ、からぁ!」
「ふうんそう? じゃあ続けようか」
「な、なんで?!」
「俺がさっきからお前に何をしているのかわかってる?」
「……っ」
「……は、はははっ、お前ホントにどうしようもない馬鹿だなぁ!」

突如スイッチが入ったかのように罵倒し、笑い声をあげる勝行は、光の泣き喘ぐ声をうっとりした顔で聴きながらプラグを持つ指を動かし続けた。

(くそっ……も、無理ぃ……息、とま……っ)

光はびく、びくんと激しく足を揺らして果てた。しばし痙攣した後、脱力してベッドに堕ちる。ゼェゼェと乾いた喘鳴音だけが鳴り響く。
息が上手くできなくなった光の唇を再び塞いでしまうと、勝行はねっとりと口の中を舐め回し、狂ったように愛の言葉を注ぎ続けた。意識が遠のいていく光の耳元で、いつまでも。

「こんな厭らしい身体、全部オレ以外の男に作られたものだなんて……絶対に許さない。お前の過去全てを塗りつぶして、髪の毛から爪の先まで全部……全部、愛してあげられるのは俺だけだ。俺だけの光でいて……俺が必ずお前を守ってあげるから……どこにも行かないで。俺を見捨てないで。誰の元にも、行かないで……!」
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