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第五章 VS相羽勝行
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「……さん、光さん! ご無事ですか」
遠くから懐かしい声が聴こえてくる。相羽家の護衛、片岡荘介だ。 随分緊迫しているように感じるが、いったいどうして――。
「……っ!」
「ああよかった、意識はあった」
ハッと覚醒した時には片岡が手枷を外してくれていた。一瞬あの恥ずかしいアダルト玩具も刺さったままなのではと焦ったが、何も残っていなかった。おまけに身体はいつの間にかシャワーでも浴びたかのようにさっぱりしていて、シャツや下着も真新しいものに変わっている。散々辱められたのがまるで夢だったかのようだ。
けれど身体に残る倦怠感と痛みがそれを現実だと物語っていた。じわじわと痛む尿道弄り後の感触も久しぶりだ。
「おっさん……勝行は……?」
「……」
いるはずの男の所在を聞くが、なぜか片岡は黙りこくった。気づけば窓の外からはすでに真上近くまで上がった太陽光が差し込んでいる。 久しぶりに自由になった両腕の手首は真っ赤に擦りむけていた。
「昼、か……。学校行ったのか、あいつ」
「いえ……あの、光さん」
拘束具を全てジュラルミンケースに押し込むと、片岡は床に両手両足を付いて座り込み、頭を垂れた。
「このたびは勝行さんがご迷惑をおかけし、大変申し訳ありませんでした」
「……は?」
突然の土下座に光は戸惑った。
「何言ってんだ? あんたが俺を助けてくれたのに。あ、もしかして今から家、追い出されるのか。俺……勉強の邪魔、したし」
「いいえ。いいえ……私は勝行さんの暴走をお止めするのが遅すぎたことをお詫びしております。そのせいで光さんの身体に危害が……主人に代わって深く陳謝申し上げます」
「……意味が分からねえ。なんで勝行じゃなくてあんたが謝んの?」
「あの方が何らかの条件で人格が変わり《暴走》した時は私が阻止するお役目でした。そして同時に貴方を守るようにとも。――ですが対応が遅くなり、光さんの身体をお守りすることができず……」
「それ……勝行の命令?」
「そうです。私の意思でもあります」
光はここにきてようやく片岡の存在が腑に落ちた。勝行の護衛のくせに何かと自分の様子を確認しては手を差し伸べてくる。ただのお節介だと思っていたが、それは彼の仕事だったのだ。そして勝行は人格が豹変するたび記憶を失い、毎回何かをしでかしていないかと恐れていた。暴力的なもう一人の自分が、いつか光を傷つけるかもしれない――そう片岡に相談していたのだろうか。
「 あいつの中身が入れ替わるの、知ってるんだな……あんた」
「……ええ。私と現当主、相羽家の主治医のみが知る極秘事項です。いつの日か光さんにお伝えするべきだと思案しておりましたが……光さんは既にお気づきだったんですね。いつからご存知でしたか」
「え。えーっと……俺の親父とバトって、拳銃撃ち合ってた時……かな」
「そうですか……やはりあの時すでに暴走されていたんですね。では止めて下さったのは……。あのような姿の勝行さんを知っても変わらずお付き合いくださったのは光さんだけです。そうか……だから勝行さんはあんなに……」
「……?」
「失礼しますね」
独り言を呟きながら片岡は光の両腕を手に取り、傷の様子を確認している。それから「主治医に治療させますので、相羽家に来ていただけますか」とベッド下から伺うように尋ねられた。たいしたことないのにと断りかけたが、相羽本家に勝行がいると聞いて声が詰まった。
「今日はもう……月曜日?」
「はい。学校にはお休みの連絡を入れております」
「……勝行も?」
「ええ。今は薬が効いていますから」
「は? クスリ……? 何であいつにそんなもんを⁉」
「落ち着いてください。移動しながら車内で説明致しますので」
思わず詰め寄った光の身体にふわりとフリースの上着をかけ、片岡は視線を若干逸らしながらひとつ咳払いした。
「着替えて、いただけますか」
「……さん、光さん! ご無事ですか」
遠くから懐かしい声が聴こえてくる。相羽家の護衛、片岡荘介だ。 随分緊迫しているように感じるが、いったいどうして――。
「……っ!」
「ああよかった、意識はあった」
ハッと覚醒した時には片岡が手枷を外してくれていた。一瞬あの恥ずかしいアダルト玩具も刺さったままなのではと焦ったが、何も残っていなかった。おまけに身体はいつの間にかシャワーでも浴びたかのようにさっぱりしていて、シャツや下着も真新しいものに変わっている。散々辱められたのがまるで夢だったかのようだ。
けれど身体に残る倦怠感と痛みがそれを現実だと物語っていた。じわじわと痛む尿道弄り後の感触も久しぶりだ。
「おっさん……勝行は……?」
「……」
いるはずの男の所在を聞くが、なぜか片岡は黙りこくった。気づけば窓の外からはすでに真上近くまで上がった太陽光が差し込んでいる。 久しぶりに自由になった両腕の手首は真っ赤に擦りむけていた。
「昼、か……。学校行ったのか、あいつ」
「いえ……あの、光さん」
拘束具を全てジュラルミンケースに押し込むと、片岡は床に両手両足を付いて座り込み、頭を垂れた。
「このたびは勝行さんがご迷惑をおかけし、大変申し訳ありませんでした」
「……は?」
突然の土下座に光は戸惑った。
「何言ってんだ? あんたが俺を助けてくれたのに。あ、もしかして今から家、追い出されるのか。俺……勉強の邪魔、したし」
「いいえ。いいえ……私は勝行さんの暴走をお止めするのが遅すぎたことをお詫びしております。そのせいで光さんの身体に危害が……主人に代わって深く陳謝申し上げます」
「……意味が分からねえ。なんで勝行じゃなくてあんたが謝んの?」
「あの方が何らかの条件で人格が変わり《暴走》した時は私が阻止するお役目でした。そして同時に貴方を守るようにとも。――ですが対応が遅くなり、光さんの身体をお守りすることができず……」
「それ……勝行の命令?」
「そうです。私の意思でもあります」
光はここにきてようやく片岡の存在が腑に落ちた。勝行の護衛のくせに何かと自分の様子を確認しては手を差し伸べてくる。ただのお節介だと思っていたが、それは彼の仕事だったのだ。そして勝行は人格が豹変するたび記憶を失い、毎回何かをしでかしていないかと恐れていた。暴力的なもう一人の自分が、いつか光を傷つけるかもしれない――そう片岡に相談していたのだろうか。
「 あいつの中身が入れ替わるの、知ってるんだな……あんた」
「……ええ。私と現当主、相羽家の主治医のみが知る極秘事項です。いつの日か光さんにお伝えするべきだと思案しておりましたが……光さんは既にお気づきだったんですね。いつからご存知でしたか」
「え。えーっと……俺の親父とバトって、拳銃撃ち合ってた時……かな」
「そうですか……やはりあの時すでに暴走されていたんですね。では止めて下さったのは……。あのような姿の勝行さんを知っても変わらずお付き合いくださったのは光さんだけです。そうか……だから勝行さんはあんなに……」
「……?」
「失礼しますね」
独り言を呟きながら片岡は光の両腕を手に取り、傷の様子を確認している。それから「主治医に治療させますので、相羽家に来ていただけますか」とベッド下から伺うように尋ねられた。たいしたことないのにと断りかけたが、相羽本家に勝行がいると聞いて声が詰まった。
「今日はもう……月曜日?」
「はい。学校にはお休みの連絡を入れております」
「……勝行も?」
「ええ。今は薬が効いていますから」
「は? クスリ……? 何であいつにそんなもんを⁉」
「落ち着いてください。移動しながら車内で説明致しますので」
思わず詰め寄った光の身体にふわりとフリースの上着をかけ、片岡は視線を若干逸らしながらひとつ咳払いした。
「着替えて、いただけますか」
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