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第一章 新しき世界

第14話 転移の先は

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「はぁ~。転移陣と言っていましたよね。ということは飛ばされたんでしょうね」

 久しぶりの虚空へと消える独り言。グーダラ王は更に恐ろしいことを言っていましたよね~。

「確か、死を求めるほどの罰でしたっけ。恐ろしいですね~」

 怖いあまり独り言が増えてしまいます。とにかく、安全の確認ですね。

「魔物はいませんね。えっと、一応は地球と太陽の入りの方角は一緒なので西があちら。ん? お昼を過ぎていたころでしたよね」

 日の傾きでどの辺りか予想すると大変な距離ですね。日本から欧州のどこかといったところでしょうか。地球の裏側まで移動なんてできませんよ……。

「ま、まあとにかく……生きていきましょう」

 二度目の新しき素晴らしい世界です。後ろを見ずに前を向いていきましょう。

「マジックバッグに食べ物を入れていてよかった。水も沢山あるから一人なら一年以上持ちますね」

 お店を任されていたから手荷物は沢山あります。マジックバッグは日持ちもするから本当に重宝します。

「しかし、この大地はどういった経緯で黒くなったのでしょう」

 普通の状況では黒い大地なんてあり得ないと思うんですよね~。あの赤く燃え盛っている山が原因でしょうか。

「大地を焦がす熱があったということだと思うのですが。溶岩くらいしか思い当たらないですね」

 色々と不可解な大地ですね。……不安が募りすぎて独り言が止まりません。

「とにかく……高いところに登りましょうか」

 あの燃えている山は無理でも別の山があるはずです。今のところは見えないので驚きですが。

「もしや!? この大地は海に浮かぶ島? あの山がどんどん溶岩を流していて出来たとか? ……いやいやそうだとしたら海が見えるはずですよね」

 恐ろしい推測を呟いて自分で否定する。本当に独り言が止まりませんね。虚しさが24連勤した時の夜のようです。

「おっと、高いところがないなら飛び上がればいいんじゃないでしょうか? よし!」

 ステータスが凄いことになっているんですからお城のベランダに飛んだ時は力を抑えていましたが思いっきり飛べば山よりも高いところに行けるはずです。

「どっこいしょ~~~」

 思いっきり屈伸して跳躍。風が顔を凄い形にしているのを感じます。横目で周りを見渡すと燃え盛る山が見下ろせました。風が緩やかになってくると体をゆっくりと自転させる。

「どこまでも続く黒い大地……これは凄いですね」

 燃え盛る山が遠くにも見えて等間隔に見えます。先ほどの推測は当たりかもしれません。

「等間隔にある活火山が溶岩を流し続けて大地を作り続けている。生物も寄り付かない大地……死を求めるほどの罰とはそう言うことですか」

 グーダラが言っていた言葉がよぎる。ようは飢え死にや脱水症になることで苦しむってことでしょう。何とも残酷な……島流しなんて刑が昔ありましたがそんなもの可愛いものですね。

「生物がいない大陸ですか……。ん? あれは?」

 自由落下が始まり降下しながら周りを見ていると小さな動くものを見つけました。よく見て見ると大きな四足歩行の魔物に追われているのが見えます。生物いるじゃないですか!

「だ、誰か助けて~」

「グルルルル!」

 声も聞こえてきた。まだ落下中なので助けに行けませんが……手は届かなくても物は投げれます。

「肉を投げます! そいそいそい!」

 ファングディアの肉を投げます、武器を投げて助けを求めてきてる方に当たってしまったら目も当てられません。肉を投げて魔物の注意を逸らせれば助けられます。

「キャ~ン! キャンキャン!」

「な、なに?」

 魔物は肉の匂いに気がついたようです。可愛らしい声をあげて肉にくらいついています。その間に私は着地……痛くはないのですが足が黒い大地に食い込んでしまいました。軽いクレーターのようになっていますね。

「どっこいしょ。大丈夫ですか?」

「だ、だれ! ど、どこから来たの! え? え?」

 私と私の着地跡に驚きながら見る少年。黒い大地に住んでいるのでしょうか。ティシーさん達と違い、褐色の肌ですね。

「落ち着いてください。私はユアサ マモルです。マモルと呼んでください」

「に、人間? 白い肌ってことは別の大陸の人だよね。今どこから来たの!」

 落ち着くように言っても驚くばかりの少年。自己紹介をしたのに名前も教えてくれません。やはり、この大地は別の大陸なのですね。

「私もどこかわからなかったので跳躍して周りを見ていたんです。それであなたが見えたので降りてきたんですよ」

「ええ!? ちょ、跳躍って。こんな地面が陥没するほど高く!? や、やっぱり人間じゃないんじゃ?」

 少年は説明を聞くと更に驚いてくれます。ここまで驚いてくれると楽しくなってきますね。

「グルルル」

「あら? もう食べ終わったんですか?」

 魔物がファングディアの肉を食べ終えて帰ってきてしまいました。まだ食べ足りない様子ですが、尻尾をブンブン振っていて犬のようです。

「ベヘモス!?」

 少年が絶望で表情を作ると声をあげた。ベヘモスという魔物のようですね。怖い魔物のようですが私からするとなぜか可愛らしい犬に感じます。顔は怖いですが。

「お腹すいているんでしょう? これを食べたいですか? ほら、投げるので食べなさ~い」

「キャ~ン! キャン!」

 ファングディアの肉を更に取り出して投げ放つ。まるで犬の棒拾いですね。完全に犬ですね。

「す、すごい!? ベヘモスをしもべのように……」

 少年が驚愕しています。表情豊かな子ですね。見ているだけで楽しいです。

「あなたの名前を聞いてもいいですか?」

「え? あ……ヴィスです」

「ヴィスさんですか。良い名ですね。おうちはあちらの方ですか?」

「は、はい……」

 逃げてきた方向を指さすと頷いてくれる。自己紹介もしっかりとしてくれました。空から見た時は建物らしいものはなかったのですが隠してあるのでしょうかね。

「じつは転移で飛ばされてきまして、出来れば雨風をしのげる家が欲しくてですね」

「あ、そうだったんですか。そういう人たまにきますよ。大体は骨になって見つかりますけど」

「そ、そうなんですか……」

 ヴィスさんは楽しそうに説明してくれています。やはり恐ろしい土地のようですね。

「あっ。すみません、助けてもらったのにお礼を言い忘れていました。ありがとうございます」

「いえいえ、どういたしまして」

 顔を赤くさせて改めてお礼を言ってくれました。礼儀正しくてよい子ですね。好感が持てます。

「じゃあ、村に案内しますね。こっちです」

 一時はどうなることかと思いましたが何とか人里にたどり着けそうです。ヴィスさんの後ろをついて歩くとなぜかベヘモスが私の後ろをついてくるようになってしまいました。旅は道連れと言いますし、攻撃をしてこないのならこちらから手は出さずにいましょう。
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