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第一章 新しき世界
第17話 モミジ
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「戻りました」
「お帰りなさい!」
村に戻るとヴィスさんが迎えてくれる。ソマツさんも顔を革づくりの家から覗かせて微笑んでいますね。
「ダンジョンはどうでしたか? 強い魔物が出るってきいていましたけど」
「ははは、何とかなりました。ジェネラルオークと言う魔物が出てきてお肉が沢山です」
「ジェネラルオーク? どのくらいの魔物なのかな?」
「さあ? ですがベヘモスが難なく仕留めてきていたので弱いんじゃないですか?」
ジェネラルと言ったら将軍ですよね。とは言ってもベヘモスが傷一つなく倒してきていますし、弱い方の魔物なんでしょう。
「フォッフォッフォ。ジェネラルオークはAランクと言われる魔物ですよ」
ヴィスさんは話しているとソマツさんが家から出てきて教えてくれる。
「Aランクですか?」
「はい、因みにベヘモスはSランク。マモル様のベヘモスは子供なのでS-といったところでしょうか。それでもAランクとの間にはかなりの開きがありますので簡単に仕留めて見せたのでしょう」
魔物にもランクがあるのですか。ということは冒険者さん達もランクがあったのですかね。オットーさんは間違いなくAランク以上だったと思いますけど。
「そうですか……。この子は子供だったんですね。では大人はもっと大きいと?」
「はい。あの山と同じくらい大きなベヘモスです」
「ええ!? あの山と!?」
ソマツさんは色々と物知りですね~。
「では食事にしましょうか」
色々と聞きたいのも山々ですが、質問してばかりも悪いので食べながら聞きましょう。
◇
「マモルさん!」
私達を助けてくれたマモルさんがギリルさんをかばって魔法陣で消えていった。みんなが唖然とする中、ギリルさんがグーダラの胸倉をつかんで声をあげる。
「この転移陣はどこに飛ぶものだ!」
「ぐへへ、死の大陸じゃよ。死を求めるほどの罰をおぬしにしてやろうと思ったがまさかあの男が。ふふふ」
「し、死の大陸だと!?」
グーダラの声にギリルさんが震えながら声をもらす。死の大陸……その名前だけで恐ろしいところだってわかる。
「な、なぜそんな転移陣を扱える! 死の大陸への転移陣は連合へと送られる犯罪者にしか使われないはずだ。知っているものも少ない。私ですら数えるくらいしか見たことがないというのに」
「ははは、儂に逆らった者は連合に送る以上の犯罪者だ。儂自ら死の大陸へと送るのが正しい。儂こそが一番正しいのだ」
ギリルさんの声に答えになっていない声をあげるグーダラ。
「もういい! この者を連合へと送る準備を。顔も見たくない。王へと忠誠を誓っていたものは牢獄へ」
ギリルさんが声をあげると彼の仲間達が兵士達を連れて行く。それを見送ったギリルさんが大きなため息をついて私達に顔を向けた。
「サクラ様、モミジ様、ミント様。本当にお騒がせしました」
「……これからどうなっちゃうの? 王様いなくなって、おじさんもいなくなっちゃって」
ギリルさんが謝るとサクラが声をもらす。
「そうですね……。王の代わりはいない。血筋のダラクも碌でもないものです。継がせるわけにも行きませんし。当分は私と私の仲間達が統治することになるでしょう。マモルさんは……」
ギリルさんが暗い表情で話しだす。マモルさんの名前を呼ぶと更に暗くなっていく。
「死の大陸には冒険者ギルドはおろか、村や町も存在していません。人が存在していない大陸なのですから当たり前ですね」
「そ、そんな!?」
ギリルさんの話を聞いて私は血の気が引いていく。人のいない大陸で人が一人で暮らすなんて出来るわけがない。死を求めるほどの罰ってこのことなのね……。
「木も存在しないと聞いたこともあります。その為、建物も立てることが出来ない。それなのに魔物が……。ベヘモスと言われるSランクの魔物が闊歩しています」
「Sランク! そ、それは伝説の魔物?」
「はい、大地を黒くさせるほどの熱を操る魔物です。死の大陸はその魔物が支配しているため真っ黒な大陸になっているらしいです。木がないのはそのためです」
ギリルさんの話はマモルさんの生存率を下げている話ばかり。もう聞いていられない。
「も、もういいです。助けに行くことはできないのですか?」
「転移陣以外で死の大陸に行くには海を渡って大きな壁を越える必要があります」
「大きな壁?」
この世界は地球と違うの? 大きな壁が海にあるなんて信じられない。
「神がSランクの魔物が我々の大陸に来ないように作ったそうです。魔物も越えられないような大きな壁。我々人類が越えることは出来ないでしょう」
「じゃ、じゃあ」
「はい。転移陣で行くしかありません。ですが行ったとしても」
ギリルさんは私の追及に大きく首を横に振った。
「今私達の居る大陸を大きく囲うように海と壁があり、更に海が続き死の大陸があります。それがどれだけ大きな大陸か、言わなくても分かりますよね?」
「……」
ギリルさんの言葉に声を無くす。日本で衛星からの映像を見ている私達には安易にその大きさがわかる。そんな大陸に言っても乗り物のない状況で、Sランクと言われる魔物に追われながら一人を探す……出来るわけがない。
「お母さん! 大丈夫だよ! マモルさんはすっごく強いもん。すぐに帰ってくるよ!」
「サクラ……。そうね」
サクラの声に希望が少しだけ見えた。サクラと一緒に戦っていたマモルさんを思え返す。余裕をもって素人のような手つきでグーダラの兵士達を倒してた。あの動きは普通の人とは大きく違うのは私でもわかるものだった。
「大丈夫です。私も保証します。マモル様は生きていますよ」
「ミントさん……ありがとうございます」
サクラと一緒にミントさんも慰めの言葉をかけてくれる。
「……あなた達だけに見せてあげる。これ」
「え?」
ミントさんはそう言って一つのカードを見せてくれる。これはステータスとかが見れるカード?
「地図ですか?」
「そう。私のスキルで加護を与えた相手を印づけることが出来る。この点滅している点がそれ。遠すぎて方角しかわからないけど」
ミントさんの声に唖然とする。加護を与えた人?
「そ、それって」
「そうだよ。マモル様。この方角にいる。死んでしまうと印は消えてしまうから生きている証拠」
ミントさんの言葉で体が温かくなるのを感じる。希望が生まれた、そう感じた私は自然とミントさんを抱きしめていた。
「痛い」
「ありがとうございます。ありがとう」
痛がるミントさんを離すことは出来なかった。涙が溢れてくるのも止められない。こんなに泣いたのはあの人が死んでしまった時以来。サクラのお父さんが死んでしまったあの日以来。
◇
「お帰りなさい!」
村に戻るとヴィスさんが迎えてくれる。ソマツさんも顔を革づくりの家から覗かせて微笑んでいますね。
「ダンジョンはどうでしたか? 強い魔物が出るってきいていましたけど」
「ははは、何とかなりました。ジェネラルオークと言う魔物が出てきてお肉が沢山です」
「ジェネラルオーク? どのくらいの魔物なのかな?」
「さあ? ですがベヘモスが難なく仕留めてきていたので弱いんじゃないですか?」
ジェネラルと言ったら将軍ですよね。とは言ってもベヘモスが傷一つなく倒してきていますし、弱い方の魔物なんでしょう。
「フォッフォッフォ。ジェネラルオークはAランクと言われる魔物ですよ」
ヴィスさんは話しているとソマツさんが家から出てきて教えてくれる。
「Aランクですか?」
「はい、因みにベヘモスはSランク。マモル様のベヘモスは子供なのでS-といったところでしょうか。それでもAランクとの間にはかなりの開きがありますので簡単に仕留めて見せたのでしょう」
魔物にもランクがあるのですか。ということは冒険者さん達もランクがあったのですかね。オットーさんは間違いなくAランク以上だったと思いますけど。
「そうですか……。この子は子供だったんですね。では大人はもっと大きいと?」
「はい。あの山と同じくらい大きなベヘモスです」
「ええ!? あの山と!?」
ソマツさんは色々と物知りですね~。
「では食事にしましょうか」
色々と聞きたいのも山々ですが、質問してばかりも悪いので食べながら聞きましょう。
◇
「マモルさん!」
私達を助けてくれたマモルさんがギリルさんをかばって魔法陣で消えていった。みんなが唖然とする中、ギリルさんがグーダラの胸倉をつかんで声をあげる。
「この転移陣はどこに飛ぶものだ!」
「ぐへへ、死の大陸じゃよ。死を求めるほどの罰をおぬしにしてやろうと思ったがまさかあの男が。ふふふ」
「し、死の大陸だと!?」
グーダラの声にギリルさんが震えながら声をもらす。死の大陸……その名前だけで恐ろしいところだってわかる。
「な、なぜそんな転移陣を扱える! 死の大陸への転移陣は連合へと送られる犯罪者にしか使われないはずだ。知っているものも少ない。私ですら数えるくらいしか見たことがないというのに」
「ははは、儂に逆らった者は連合に送る以上の犯罪者だ。儂自ら死の大陸へと送るのが正しい。儂こそが一番正しいのだ」
ギリルさんの声に答えになっていない声をあげるグーダラ。
「もういい! この者を連合へと送る準備を。顔も見たくない。王へと忠誠を誓っていたものは牢獄へ」
ギリルさんが声をあげると彼の仲間達が兵士達を連れて行く。それを見送ったギリルさんが大きなため息をついて私達に顔を向けた。
「サクラ様、モミジ様、ミント様。本当にお騒がせしました」
「……これからどうなっちゃうの? 王様いなくなって、おじさんもいなくなっちゃって」
ギリルさんが謝るとサクラが声をもらす。
「そうですね……。王の代わりはいない。血筋のダラクも碌でもないものです。継がせるわけにも行きませんし。当分は私と私の仲間達が統治することになるでしょう。マモルさんは……」
ギリルさんが暗い表情で話しだす。マモルさんの名前を呼ぶと更に暗くなっていく。
「死の大陸には冒険者ギルドはおろか、村や町も存在していません。人が存在していない大陸なのですから当たり前ですね」
「そ、そんな!?」
ギリルさんの話を聞いて私は血の気が引いていく。人のいない大陸で人が一人で暮らすなんて出来るわけがない。死を求めるほどの罰ってこのことなのね……。
「木も存在しないと聞いたこともあります。その為、建物も立てることが出来ない。それなのに魔物が……。ベヘモスと言われるSランクの魔物が闊歩しています」
「Sランク! そ、それは伝説の魔物?」
「はい、大地を黒くさせるほどの熱を操る魔物です。死の大陸はその魔物が支配しているため真っ黒な大陸になっているらしいです。木がないのはそのためです」
ギリルさんの話はマモルさんの生存率を下げている話ばかり。もう聞いていられない。
「も、もういいです。助けに行くことはできないのですか?」
「転移陣以外で死の大陸に行くには海を渡って大きな壁を越える必要があります」
「大きな壁?」
この世界は地球と違うの? 大きな壁が海にあるなんて信じられない。
「神がSランクの魔物が我々の大陸に来ないように作ったそうです。魔物も越えられないような大きな壁。我々人類が越えることは出来ないでしょう」
「じゃ、じゃあ」
「はい。転移陣で行くしかありません。ですが行ったとしても」
ギリルさんは私の追及に大きく首を横に振った。
「今私達の居る大陸を大きく囲うように海と壁があり、更に海が続き死の大陸があります。それがどれだけ大きな大陸か、言わなくても分かりますよね?」
「……」
ギリルさんの言葉に声を無くす。日本で衛星からの映像を見ている私達には安易にその大きさがわかる。そんな大陸に言っても乗り物のない状況で、Sランクと言われる魔物に追われながら一人を探す……出来るわけがない。
「お母さん! 大丈夫だよ! マモルさんはすっごく強いもん。すぐに帰ってくるよ!」
「サクラ……。そうね」
サクラの声に希望が少しだけ見えた。サクラと一緒に戦っていたマモルさんを思え返す。余裕をもって素人のような手つきでグーダラの兵士達を倒してた。あの動きは普通の人とは大きく違うのは私でもわかるものだった。
「大丈夫です。私も保証します。マモル様は生きていますよ」
「ミントさん……ありがとうございます」
サクラと一緒にミントさんも慰めの言葉をかけてくれる。
「……あなた達だけに見せてあげる。これ」
「え?」
ミントさんはそう言って一つのカードを見せてくれる。これはステータスとかが見れるカード?
「地図ですか?」
「そう。私のスキルで加護を与えた相手を印づけることが出来る。この点滅している点がそれ。遠すぎて方角しかわからないけど」
ミントさんの声に唖然とする。加護を与えた人?
「そ、それって」
「そうだよ。マモル様。この方角にいる。死んでしまうと印は消えてしまうから生きている証拠」
ミントさんの言葉で体が温かくなるのを感じる。希望が生まれた、そう感じた私は自然とミントさんを抱きしめていた。
「痛い」
「ありがとうございます。ありがとう」
痛がるミントさんを離すことは出来なかった。涙が溢れてくるのも止められない。こんなに泣いたのはあの人が死んでしまった時以来。サクラのお父さんが死んでしまったあの日以来。
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