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第三章 王都リナージュ

第三十八話 アリス

「さて、みんなも見送ったし。二人はどこにいるのかな?やっぱり玉座?」

 アリス様とユアンはどこにいるのだろう?僕を攻撃してきたんだからやっぱり操られているのかな?とか考えながら玉座の間の前に着いた。来た時と違って扉には無数の植物のツタが巻き付いていて開けられないようになってる。

「これは間違いなくここにいそうだね」

 僕は扉ごと月下の剣で切り裂く。その剣圧は玉座まで届いた、そして、その剣圧をユアンが上にそらせた。

「・・・」
「いきなりのあいさつですねルークさん」
「アリス様」

 玉座に座るアリス様、それを横で守るように立つ青白い鎧を着たユアン。あの鎧はダイヤさんも着ていたやつだね。ユアンにはもっと軽装の方が合っていると思うけど似合っているのがまたユアンらしい。

「ユアンはどうなっているんですかアリス様、答え次第ではお尻ぺんぺんですよ」
「あらあら、王族にそんなことをしたら不敬罪で死刑ですわ」

 僕の冗談交じりの言葉にアリス様は扇子で口を隠してにやけている。ユアンはダイヤさんみたいに生気のない目をしている。あの鎧のせいなのだろうか?植物の反応がないのを考えると怪しいのはあの鎧だけど。
 それよりも気になるのがアリス様だ。アリス様も操られているのかな?

「ふふふ、考えているわね。でも、それはどれも違うわ。私は操られていないし彼はノーブルローズによって乗っ取られていないのよ。彼は私に惚れているの、お分かり?」

 アリス様はユアンの頬に触れてほほ笑んだ。愛しい人を見る目は普通の少女の恋した目でウルウルと瞳を震わせていた。

「ユアンそれは本当なの?本当なら僕は兄として祝福するけど?」
「・・・」

 ユアンは生気のない目で僕を見据えた。だけど、ずっと無言で操られていないなんて思えないものだった。

「やっぱり、嘘だよね。アリス様」
「また、いつの間にこんな近くに」

 玉座の間に入ってすぐの扉の前にいた僕が一瞬でアリス様とユアンの間に移動するとアリス様は怪訝な顔をした。
 僕はユアンの頬に手を当てると頬は高揚していき意識は少しある感じはした。

「わかったでしょ、彼は私の物なの。だから」
「じゃあ冥樹は消して、結婚式をしよう。ユアンが結婚なんてお祝いしないとね」
「えっ」

 僕は時を止めてマナを寄せ集めた。冥樹が集めていたマナを玉座の間いっぱいに集めてその全てで冥樹に種になる命令をした。アダマンタイトと融合しつつあった冥樹だったけど土属性のスキルも得た僕ならそんなもの容易く分離できる。あとは植物が種になるのを待つだけだ。時を戻さないと。

「何を言うかと思ったら冥樹を消すですって・・冗談も休み休み・・・なんで植物のツタがなくなっているの?それにお城が下に下がっていっている?」
 
 時を動かすとみるみると高度が下がっていく、少しずつ冥樹が小さくなっているので緩やかな降下。

「はいこれでおしまい。さ~結婚式をして僕はワインプールに帰るよ~」
「ちょっと待ちなさい!冥樹をどうやって!」
「それは秘密ですよ姫様」
「逃がすと思っているの!」

 僕はさっさと帰る支度をして去ろうと思っていたんだけど、どうやら帰してくれないようです。確かに僕もユアンが生気のない目なのはいただけない。理由なんかも聞きたいな。

「そうでしたね。ユアンはなんでこんな状態なんですか?」

 降下する城をしりめに僕とアリス様は話あうこととなった。その間、ユアンは生気のない目で僕を見据えている。

「そうですわね。その理由を言ってもいいのだけど・・・どうかしら、お兄様。私の下につくきはないかしら?」
「下ですか?」

 アリス様の言葉に聞き返すと彼女は頷いた。下というのはどういうことだろう?すでに僕は国民という立場だから、したといわれてもわからない。

「下っていうのはどういう意味ですか?僕は国民だから実質、下にいると思いますけど」
「・・そう、とぼけるのね。いいわ、じゃあここで死になさい!」

 アリス様が手を僕に向けてかざすとユアンが漆黒の剣を抜いて僕へと切り付けてきた。僕は漆黒の剣を奪いユアンを放り投げる。ユアンは壁を蹴って元々持っていた剣をアイテムバッグから取り出して切り付けてきた。鍔迫り合いの形に収まると僕は感心してユアンを見た。
 流石ユアンだね。今までのどんな人よりも強くて鋭い攻撃だ。

「素晴らしいわ。兄弟が私を奪い合って殺しあう。なんて美しいのかしら」

 アリス様は悦に浸ってうっとりとしている。

「ユアン、正気に戻りなさい。ここにきて何回君は操られるつもり?お兄ちゃん怒るぞ」
「・・・」
「無駄よ。彼は私の物なのよ。何を言っても無駄」

 僕の言葉を聞いてもユアンは無言を貫く、アリス様の言葉を聞くと[王族の血印]というスキルが関係していそうだけど、治す方法はあるのかな?

「ふふ、あら。その目は勘づいたのかしら?そうよ。私達の王族の絶対的な力[王族の血印]で彼を私の物にしたのよ。人である限り私の力は絶対なの。さあ、あなたも私の物におなりなさい。兄弟仲良く私が愛してあげますわ」
「遠慮します。お姫様、僕は家族と仲良く平穏で平凡な毎日を過ごしたいので」
「また、一瞬で移動した。それはどういう仕組みなの・・」

 ユアンと鍔迫り合いしていたところにアリス様が血の付いた指を僕に向けてきた。たぶん、これが血印の使い方なんだろうね。僕は時間を止めて大きく離れるとアリス様は憤りをあらわにした。

「色々聞いて思ったんだけど、今回の騒動はアリス様のせいなのかな?」
「今更ですの?そうよ。旅芸人を雇ってお母さまに種を仕込んで世界樹を育てさせたわ。それに並行してお父様にも冥樹を作らせていたのマゲンも私の仕込みね」
「なんで世界樹と一緒に冥樹を」
「冥樹の方が成長が早いのよ。人の生命を与えれば早く育つしね。それで世界樹を取り込ませて、世界に一つの冥樹にしようと考えたのよ」
「ノーブルローズの考えはあなたとは違うってこと?」
「恵みを分け合うとかいうノルディック様の考えでしたっけ?とても素晴らしいと思うわ。そんなこと叶わない事も知っている。だから、私は世界を一度リセットする必要があると考えたのよ」
「そこはノーブルローズとほぼ同じ考えなんだね」
「あの子は数を少なくして分け合いましょうって考えでしょ。私は違うわ。分け合うのを嫌い独占しようとする者の排除が目的よ。私とユアン様はアダムとイブになるの。私たちの子供なら独占なんてしない、奪い合うなんてことはしないもの」

 なんでこういった人達っていうのはこう極端なことを考えるんだろう。全員いなくなってから作り直すって神話レベルの神様の話じゃないか。

「でも、それも叶わない。冥樹が死んでしまうのだから。ならば、お父様に代わって王となりこの国から作り直すのよ。ユアン様の力を使って世界を統一して支配層の力をそぎ取って困っている人たちを救うのどうかしら?」
「とてもいい話かもね。だけど、ユアンは首を縦には振らないよ」

 冥樹がなくなった後のことを考えてアリス様は話し出した。世界を統一ってことは戦争とかをしようとしているみたいだね。結果を追い求めるあまり、それに行きつくまでの事が見えていないよ。戦争があると人々は殺しあわなくちゃいけない、山賊や盗賊だって増える。壁のない村なんて真っ先に狙われる。そう言ったことがわからないんじゃ幼稚としかいいようがない。

「ふん、彼はもう私の物だもの、私のいいなりよ。今だってあなたに切りかかりたくてしょうがないようだし」
「ユアンを愛してくれているのに心の叫びが聞こえないみたいだね」
「何を言っているの。ユアン様は私を愛しているって囁いているわ」

 ユアンに足や手を絡めてそんな言葉を投げかけるアリス様、独りよがりも大概にしてほしい。流石の僕もキレそうだよ。ユアンは今も泣いている。僕に切りかかってきたときも涙が零れていたんだ、兄として救ってあげないと。

「怖いわね睨まないで」
「ユアンを解放してください。流石の僕も怒りますよ」
「そうね。じゃあ、あなたが代わりに私の物になるのなら、解放してもいいわよ」

 アリス様はユアンを解放する条件を提示してきた。

 アリス様を亡き者にするのは容易い、だけど、それでユアンが解放されなかったらと思うとそれができない。僕はその条件をのむしかないのかと考えこんだ。
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