35 / 39
第三十四話 こどもってどうやったらできるの?
しおりを挟む
「お弁当を食べましょうか。皆さま、こちらへどうぞ」
ルーラはそう言ってバスケットからたくさんのお弁当箱を取り出した。
中にはサンドイッチやおにぎりに始まり、美味しそうなおかずも多数揃っていた。
「おお、流石ルーラ。美味しそう」
「腕によりをかけてご用意いたしました。味には自信があります」
ルーラは得意気な顔である。なんかかわいかった。
「「「「「いただきます!」」」」」
みんなで声を揃えてから、お弁当に手を伸ばす。
まずは一口サイズに切りそろえられたサンドイッチから食べることにした。
「うん、やっぱり美味しい」
いつも口にしている言葉を、ここでも同じように彼女へ伝える。
そうするといつも通り、ルーラは嬉しそうに微笑むのだ。
「それは何よりでございます。どうぞ遠慮なさらず、たくさん食べていただけると嬉しいです」
言われなくても、たくさん食べるつもりだった。
さて、次は何を食べよう。迷っていたところで、サキちゃんが元気いっぱいの声を上げた。
「パパ! これたべてっ。サキもおにぎりつくったの!」
差し出されたのは、小さくて少しボコボコしているおにぎりである。
サキちゃんが作ったようだ。
「うん、いただきます」
もちろん受け取って食べてみた。
具はなく、塩味のみだったが、それでもサキちゃんが作ってくれたという事実だけで何倍も美味しく感じるから不思議なものだった。
「美味しい。サキちゃんもお料理上手だね」
「えへへ~。サキ、いいおよめさんになれますかっ?」
「なれると思うよ。サキちゃんをお嫁さんにした人は幸せかも」
「じゃあ、パパがしあわせになれるね! やったー!!」
……この子は本当にかわいいな。
子供がいないのに、なんとなく構いたくなるような父性が湧き出てきた。
「もぐもぐっ。村娘ちゃんのもいいけど、サキュバスちゃんも悪くないかなっ?」
「本当に、美味しいわよ。サキ、やるわね」
マニュもエレオノーラも、上品に食べながらサキちゃんを褒めていた。
「料理上手ね……私も、下僕に作ってあげられたら良かったのだけれど」
エレオノーラはため息をついて、唇を尖らせる。
何か料理できない理由があるのだろうか。
「いつでも、作ってくれたら食べるよ?」
「いえ、ダメなのよ……私、料理してたらいつも爆発させちゃうの。壊滅的にセンスがないから、台所に立つことは諦めたわ」
器用そうに見えるが、実はそうでもないようだ。
そのあたりは魔族らしく、大雑把なのかもしれない。
「まぁ、料理はルーラかサキが作ればいいわ。私は下僕とお風呂に入ることが仕事だから」
「……そっか。得手不得手ってあるよね」
他人とお風呂に入ることが得手なのかどうかはさておき。
「マニュは料理とか得意なの?」
ふと、気になったことを彼女に問いかけてみた。
果たして邪神は料理できるのだろうか。
「無理! わたし、生み出すことはできても創り出すことができないんだよね~。料理とか作ろうとしたら、変な生物が出現するんじゃないかなー?」
なるほど。邪神はやっぱり規格外だった。
「でも、生むことはできるから……おにーちゃんの子供はつくれるよっ」
「ぶふっ」
むせた。
なんてことを言うんだ、この邪神は……この手の説明は苦手なので、あまり掘り下げてほしくない話題である。
だが、よりによって最も幼い彼女が食いついた。
「こども? パパ、こどもっておりょうりしたらできるのっ!?」
ああ、ダメだ。
性行為を子供に説明するなんて、無理。
「わたくしも気になります……お料理したらできるのなら、わたくしはたくさん生まれているはずなのですが。それとも、男性とお料理しないとダメなのでしょうか」
「それは奇妙ね。私が読んでいた本では夜一緒に眠ったら、子供ができるそうだけれど」
「それだったら、おにーちゃんと毎日一緒に寝てるから、わたしたち子供できてもおかしくないけどねっ」
おい、邪神。
お前は絶対分かってるだろ。マニュは明らかに知らないふりして話を変な方向に膨らませていた。
この会話はどう収集をつければ良いのだろうか。
「ご主人様。子供のこと、教えてくださりませんか?」
「パパ、こどものつくりかたおしえてください!」
「下僕、言いなさい。知っているのでしょう?」
「おにーちゃんっ。わたしもわかんな~い」
みんなが俺をキラキラした目で見てくる。
だけど、流石にどう答えていいか分からないので、俺はこうはぐらかすことしかできなかった。
「……お、大人になったら分かるよ」
――こんな感じで、とりとめのない会話を交わしながら俺たちはお弁当を食べた。
食べているメニューはいつもとほとんど同じだ。
でも、場所が違うおかげか、いつもとは違った美味しさを感じることができた。
会話もかなり弾んだ。
俺が困るような話題も幾つかあったが、それでも楽しかった。
まだピクニックは途中だが、この時点でもう大成功だと思えることが出来るくらい、とても充実していたのである――
ルーラはそう言ってバスケットからたくさんのお弁当箱を取り出した。
中にはサンドイッチやおにぎりに始まり、美味しそうなおかずも多数揃っていた。
「おお、流石ルーラ。美味しそう」
「腕によりをかけてご用意いたしました。味には自信があります」
ルーラは得意気な顔である。なんかかわいかった。
「「「「「いただきます!」」」」」
みんなで声を揃えてから、お弁当に手を伸ばす。
まずは一口サイズに切りそろえられたサンドイッチから食べることにした。
「うん、やっぱり美味しい」
いつも口にしている言葉を、ここでも同じように彼女へ伝える。
そうするといつも通り、ルーラは嬉しそうに微笑むのだ。
「それは何よりでございます。どうぞ遠慮なさらず、たくさん食べていただけると嬉しいです」
言われなくても、たくさん食べるつもりだった。
さて、次は何を食べよう。迷っていたところで、サキちゃんが元気いっぱいの声を上げた。
「パパ! これたべてっ。サキもおにぎりつくったの!」
差し出されたのは、小さくて少しボコボコしているおにぎりである。
サキちゃんが作ったようだ。
「うん、いただきます」
もちろん受け取って食べてみた。
具はなく、塩味のみだったが、それでもサキちゃんが作ってくれたという事実だけで何倍も美味しく感じるから不思議なものだった。
「美味しい。サキちゃんもお料理上手だね」
「えへへ~。サキ、いいおよめさんになれますかっ?」
「なれると思うよ。サキちゃんをお嫁さんにした人は幸せかも」
「じゃあ、パパがしあわせになれるね! やったー!!」
……この子は本当にかわいいな。
子供がいないのに、なんとなく構いたくなるような父性が湧き出てきた。
「もぐもぐっ。村娘ちゃんのもいいけど、サキュバスちゃんも悪くないかなっ?」
「本当に、美味しいわよ。サキ、やるわね」
マニュもエレオノーラも、上品に食べながらサキちゃんを褒めていた。
「料理上手ね……私も、下僕に作ってあげられたら良かったのだけれど」
エレオノーラはため息をついて、唇を尖らせる。
何か料理できない理由があるのだろうか。
「いつでも、作ってくれたら食べるよ?」
「いえ、ダメなのよ……私、料理してたらいつも爆発させちゃうの。壊滅的にセンスがないから、台所に立つことは諦めたわ」
器用そうに見えるが、実はそうでもないようだ。
そのあたりは魔族らしく、大雑把なのかもしれない。
「まぁ、料理はルーラかサキが作ればいいわ。私は下僕とお風呂に入ることが仕事だから」
「……そっか。得手不得手ってあるよね」
他人とお風呂に入ることが得手なのかどうかはさておき。
「マニュは料理とか得意なの?」
ふと、気になったことを彼女に問いかけてみた。
果たして邪神は料理できるのだろうか。
「無理! わたし、生み出すことはできても創り出すことができないんだよね~。料理とか作ろうとしたら、変な生物が出現するんじゃないかなー?」
なるほど。邪神はやっぱり規格外だった。
「でも、生むことはできるから……おにーちゃんの子供はつくれるよっ」
「ぶふっ」
むせた。
なんてことを言うんだ、この邪神は……この手の説明は苦手なので、あまり掘り下げてほしくない話題である。
だが、よりによって最も幼い彼女が食いついた。
「こども? パパ、こどもっておりょうりしたらできるのっ!?」
ああ、ダメだ。
性行為を子供に説明するなんて、無理。
「わたくしも気になります……お料理したらできるのなら、わたくしはたくさん生まれているはずなのですが。それとも、男性とお料理しないとダメなのでしょうか」
「それは奇妙ね。私が読んでいた本では夜一緒に眠ったら、子供ができるそうだけれど」
「それだったら、おにーちゃんと毎日一緒に寝てるから、わたしたち子供できてもおかしくないけどねっ」
おい、邪神。
お前は絶対分かってるだろ。マニュは明らかに知らないふりして話を変な方向に膨らませていた。
この会話はどう収集をつければ良いのだろうか。
「ご主人様。子供のこと、教えてくださりませんか?」
「パパ、こどものつくりかたおしえてください!」
「下僕、言いなさい。知っているのでしょう?」
「おにーちゃんっ。わたしもわかんな~い」
みんなが俺をキラキラした目で見てくる。
だけど、流石にどう答えていいか分からないので、俺はこうはぐらかすことしかできなかった。
「……お、大人になったら分かるよ」
――こんな感じで、とりとめのない会話を交わしながら俺たちはお弁当を食べた。
食べているメニューはいつもとほとんど同じだ。
でも、場所が違うおかげか、いつもとは違った美味しさを感じることができた。
会話もかなり弾んだ。
俺が困るような話題も幾つかあったが、それでも楽しかった。
まだピクニックは途中だが、この時点でもう大成功だと思えることが出来るくらい、とても充実していたのである――
0
あなたにおすすめの小説
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
竹桜
ファンタジー
ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。
エンドのルートしては六種類ある。
バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。
残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる