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第七話「思い出の中の二人」4
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次の日の放課後も、いつものように私は生徒会室で一人仕事をしていた。
そもそも生徒会室に集まってワイワイやることが重要なことでもないから、私は気にしないようにしている。会長のように冗談や愚痴交じりに和気あいあいと話しながら生徒会運営するのは、私にはできない。
協力的な後輩には生徒会室にわざわざ来なくても、作業ができるようデータを渡して、作業項目は伝えてある。
とはいえ、指示した通りにちゃんとやってくれる人は限られて、気づいたら締め切り前になって結局私がやることになるなんてこともザラにある。
それはそうだろう、これは仕事じゃない。学生の身分である以上、そこまで真面目に几帳面にやってくれるのを期待していてはストレスになる。程よい距離間で過度な期待をせずに付き合っていくしかない。
そういうわけで、私の仕事はこうして毎日続いている。
私は家に帰ってするより生徒会室でする方が集中できる。
私の暮らす家は学園近くのアパートで、狭くて空気も悪いから、どちらかといえば生徒会室の方がエアコンも自由に使えて部屋も広いから快適で、結局仕事も終わらないから、毎日長居することになっている。
その時、誰かが生徒会室にやってきた。
足音が生徒会室の前に止まって、シルエットがはっきりと浮かび上がる。
見慣れないシルエット、あまり私と絡んでいる人ではないことがすぐに分かった。
(誰だろう……)
170センチはあるだろうか、私よりも大きいから、おそらく男の人だろう。
私は扉の方を向いたまま、厄介な相手でなければいいなと思いながら身構えた。
ガラガラと音を立てて横開きの生徒会室の扉が開き、そこにシルエットで見た男性の姿が現れる。
「―――樋坂くん?」
警戒して扉を見つめる中、現れたのは樋坂君だった。
私は昨日の件を思い出して、樋坂君には面倒ごとを押し付けてしまっていたから、わざわざ生徒会室に来ると思いもよらなかったから、驚いて声が漏れてしまった。
「よっ、また一人でやってるのか?」
どういう要件か見当も付かないが、突然にやってきた樋坂君は軽い調子で私に聞いてきた。
「……どうして、何か用かしら?」
樋坂君のことを見ながら、私は自然と心の内が滲み出ていた。
「困ってるんだろ? 俺に出来ることがあるなら、手伝ってやるよ」
思いもよらない事を言って、ズカズカと部屋に入ってくる樋坂君。一体何を考えているのか分からず、私の頭は真っ白になった。
「あなた、クラスはどうしたの? 脚本があるって昨日言ってたでしょ?」
私は揺れる心の内を抑えながら、突然やってきた樋坂君に言葉を掛けた。
「もう、終わらせてきたよ。今回のは渾身の出来だから、誰も意見をはさむ余地はなかったからな、後は上手くやってくれるさ」
私には演劇がどういうものかどういうものか、よくわかっていないけど、彼が大丈夫だと言うのなら大丈夫なのだろうと、私はそう思うことにした。
「それで、わざわざ私を手伝いに来たの?」
「うん、気分転換にはちょうどいいしな」
そう軽く言ってのける樋坂君、生徒会の大変さが分かってないのかな……、軽く見られているようで少し癪だった。
「私のやっている事、あなたが思っているより面倒なことばかりよ。やったって誰に感謝されるわけでもないし、労力に見合わないことばっかり。気分転換になるようなことはないわよ」
「じゃあさ、何で副会長はやってるんだ? 面倒なことだと分かってて、どうして続けてるんだ?」
その言葉はキラーパスだったかもしれない。すらすらと次の言葉が出てくる樋坂君の事が私には不思議に映った。
普段はぼんやりしていて、頭使ってなさそうなのに……。でも、それは私の勝手な偏見で本当は頭の回転が速く考えるのが得意なのだろう、だから脚本も書けてしまうだと考えると納得のいくことだ。
「それは私しかいないから、私がやらないと……」
私は急に返答が苦しくなって声に詰まりながら、返事をした。この時点ですでに樋坂君の方が一枚上手だった。
「そういう正義感とか奉仕精神はさ、結局言い訳だよ。
副会長は立派で仕事が早くて頼られてる、だから自分で全部引き受けようとしてるんじゃないのか? それは立派なことで、やりがいもあるだろう。
でもさ、ずっとそんな気持ちで続けても、心が疲れるだけだぜ?
やるんだったら、ちゃんと自分で受け止めて、気持ちよくやっていくべきなんじゃないか?」
「そんなに私、嫌々やってるように見えたかしら……」
さすがに自分勝手な言葉が過ぎたかもしれないと思い、少し憂鬱さを覚えた。
「うん、そういうのはさ、身体に毒だよ。一人で抱え込んでいいことなんてないさ」
畳み掛けるように言葉を続けて、私の中にどうしようもなく蔓延る不安な心の内を開かれるように、私の中に入り込んでくる彼のことを、私は次第に受け入れようとしている。
それは、簡単に許していいものではないのに。
私はもっと言い返してやりたかったが、疲れもあって樋坂君の言葉に言い返せなくて。気付けば彼をそのまま受け入れて、一緒に仕事を始めるようになった。
これが、樋坂君との関係の始まりだった。
そもそも生徒会室に集まってワイワイやることが重要なことでもないから、私は気にしないようにしている。会長のように冗談や愚痴交じりに和気あいあいと話しながら生徒会運営するのは、私にはできない。
協力的な後輩には生徒会室にわざわざ来なくても、作業ができるようデータを渡して、作業項目は伝えてある。
とはいえ、指示した通りにちゃんとやってくれる人は限られて、気づいたら締め切り前になって結局私がやることになるなんてこともザラにある。
それはそうだろう、これは仕事じゃない。学生の身分である以上、そこまで真面目に几帳面にやってくれるのを期待していてはストレスになる。程よい距離間で過度な期待をせずに付き合っていくしかない。
そういうわけで、私の仕事はこうして毎日続いている。
私は家に帰ってするより生徒会室でする方が集中できる。
私の暮らす家は学園近くのアパートで、狭くて空気も悪いから、どちらかといえば生徒会室の方がエアコンも自由に使えて部屋も広いから快適で、結局仕事も終わらないから、毎日長居することになっている。
その時、誰かが生徒会室にやってきた。
足音が生徒会室の前に止まって、シルエットがはっきりと浮かび上がる。
見慣れないシルエット、あまり私と絡んでいる人ではないことがすぐに分かった。
(誰だろう……)
170センチはあるだろうか、私よりも大きいから、おそらく男の人だろう。
私は扉の方を向いたまま、厄介な相手でなければいいなと思いながら身構えた。
ガラガラと音を立てて横開きの生徒会室の扉が開き、そこにシルエットで見た男性の姿が現れる。
「―――樋坂くん?」
警戒して扉を見つめる中、現れたのは樋坂君だった。
私は昨日の件を思い出して、樋坂君には面倒ごとを押し付けてしまっていたから、わざわざ生徒会室に来ると思いもよらなかったから、驚いて声が漏れてしまった。
「よっ、また一人でやってるのか?」
どういう要件か見当も付かないが、突然にやってきた樋坂君は軽い調子で私に聞いてきた。
「……どうして、何か用かしら?」
樋坂君のことを見ながら、私は自然と心の内が滲み出ていた。
「困ってるんだろ? 俺に出来ることがあるなら、手伝ってやるよ」
思いもよらない事を言って、ズカズカと部屋に入ってくる樋坂君。一体何を考えているのか分からず、私の頭は真っ白になった。
「あなた、クラスはどうしたの? 脚本があるって昨日言ってたでしょ?」
私は揺れる心の内を抑えながら、突然やってきた樋坂君に言葉を掛けた。
「もう、終わらせてきたよ。今回のは渾身の出来だから、誰も意見をはさむ余地はなかったからな、後は上手くやってくれるさ」
私には演劇がどういうものかどういうものか、よくわかっていないけど、彼が大丈夫だと言うのなら大丈夫なのだろうと、私はそう思うことにした。
「それで、わざわざ私を手伝いに来たの?」
「うん、気分転換にはちょうどいいしな」
そう軽く言ってのける樋坂君、生徒会の大変さが分かってないのかな……、軽く見られているようで少し癪だった。
「私のやっている事、あなたが思っているより面倒なことばかりよ。やったって誰に感謝されるわけでもないし、労力に見合わないことばっかり。気分転換になるようなことはないわよ」
「じゃあさ、何で副会長はやってるんだ? 面倒なことだと分かってて、どうして続けてるんだ?」
その言葉はキラーパスだったかもしれない。すらすらと次の言葉が出てくる樋坂君の事が私には不思議に映った。
普段はぼんやりしていて、頭使ってなさそうなのに……。でも、それは私の勝手な偏見で本当は頭の回転が速く考えるのが得意なのだろう、だから脚本も書けてしまうだと考えると納得のいくことだ。
「それは私しかいないから、私がやらないと……」
私は急に返答が苦しくなって声に詰まりながら、返事をした。この時点ですでに樋坂君の方が一枚上手だった。
「そういう正義感とか奉仕精神はさ、結局言い訳だよ。
副会長は立派で仕事が早くて頼られてる、だから自分で全部引き受けようとしてるんじゃないのか? それは立派なことで、やりがいもあるだろう。
でもさ、ずっとそんな気持ちで続けても、心が疲れるだけだぜ?
やるんだったら、ちゃんと自分で受け止めて、気持ちよくやっていくべきなんじゃないか?」
「そんなに私、嫌々やってるように見えたかしら……」
さすがに自分勝手な言葉が過ぎたかもしれないと思い、少し憂鬱さを覚えた。
「うん、そういうのはさ、身体に毒だよ。一人で抱え込んでいいことなんてないさ」
畳み掛けるように言葉を続けて、私の中にどうしようもなく蔓延る不安な心の内を開かれるように、私の中に入り込んでくる彼のことを、私は次第に受け入れようとしている。
それは、簡単に許していいものではないのに。
私はもっと言い返してやりたかったが、疲れもあって樋坂君の言葉に言い返せなくて。気付けば彼をそのまま受け入れて、一緒に仕事を始めるようになった。
これが、樋坂君との関係の始まりだった。
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