28 / 157
第七話「思い出の中の二人」4
しおりを挟む
次の日の放課後も、いつものように私は生徒会室で一人仕事をしていた。
そもそも生徒会室に集まってワイワイやることが重要なことでもないから、私は気にしないようにしている。会長のように冗談や愚痴交じりに和気あいあいと話しながら生徒会運営するのは、私にはできない。
協力的な後輩には生徒会室にわざわざ来なくても、作業ができるようデータを渡して、作業項目は伝えてある。
とはいえ、指示した通りにちゃんとやってくれる人は限られて、気づいたら締め切り前になって結局私がやることになるなんてこともザラにある。
それはそうだろう、これは仕事じゃない。学生の身分である以上、そこまで真面目に几帳面にやってくれるのを期待していてはストレスになる。程よい距離間で過度な期待をせずに付き合っていくしかない。
そういうわけで、私の仕事はこうして毎日続いている。
私は家に帰ってするより生徒会室でする方が集中できる。
私の暮らす家は学園近くのアパートで、狭くて空気も悪いから、どちらかといえば生徒会室の方がエアコンも自由に使えて部屋も広いから快適で、結局仕事も終わらないから、毎日長居することになっている。
その時、誰かが生徒会室にやってきた。
足音が生徒会室の前に止まって、シルエットがはっきりと浮かび上がる。
見慣れないシルエット、あまり私と絡んでいる人ではないことがすぐに分かった。
(誰だろう……)
170センチはあるだろうか、私よりも大きいから、おそらく男の人だろう。
私は扉の方を向いたまま、厄介な相手でなければいいなと思いながら身構えた。
ガラガラと音を立てて横開きの生徒会室の扉が開き、そこにシルエットで見た男性の姿が現れる。
「―――樋坂くん?」
警戒して扉を見つめる中、現れたのは樋坂君だった。
私は昨日の件を思い出して、樋坂君には面倒ごとを押し付けてしまっていたから、わざわざ生徒会室に来ると思いもよらなかったから、驚いて声が漏れてしまった。
「よっ、また一人でやってるのか?」
どういう要件か見当も付かないが、突然にやってきた樋坂君は軽い調子で私に聞いてきた。
「……どうして、何か用かしら?」
樋坂君のことを見ながら、私は自然と心の内が滲み出ていた。
「困ってるんだろ? 俺に出来ることがあるなら、手伝ってやるよ」
思いもよらない事を言って、ズカズカと部屋に入ってくる樋坂君。一体何を考えているのか分からず、私の頭は真っ白になった。
「あなた、クラスはどうしたの? 脚本があるって昨日言ってたでしょ?」
私は揺れる心の内を抑えながら、突然やってきた樋坂君に言葉を掛けた。
「もう、終わらせてきたよ。今回のは渾身の出来だから、誰も意見をはさむ余地はなかったからな、後は上手くやってくれるさ」
私には演劇がどういうものかどういうものか、よくわかっていないけど、彼が大丈夫だと言うのなら大丈夫なのだろうと、私はそう思うことにした。
「それで、わざわざ私を手伝いに来たの?」
「うん、気分転換にはちょうどいいしな」
そう軽く言ってのける樋坂君、生徒会の大変さが分かってないのかな……、軽く見られているようで少し癪だった。
「私のやっている事、あなたが思っているより面倒なことばかりよ。やったって誰に感謝されるわけでもないし、労力に見合わないことばっかり。気分転換になるようなことはないわよ」
「じゃあさ、何で副会長はやってるんだ? 面倒なことだと分かってて、どうして続けてるんだ?」
その言葉はキラーパスだったかもしれない。すらすらと次の言葉が出てくる樋坂君の事が私には不思議に映った。
普段はぼんやりしていて、頭使ってなさそうなのに……。でも、それは私の勝手な偏見で本当は頭の回転が速く考えるのが得意なのだろう、だから脚本も書けてしまうだと考えると納得のいくことだ。
「それは私しかいないから、私がやらないと……」
私は急に返答が苦しくなって声に詰まりながら、返事をした。この時点ですでに樋坂君の方が一枚上手だった。
「そういう正義感とか奉仕精神はさ、結局言い訳だよ。
副会長は立派で仕事が早くて頼られてる、だから自分で全部引き受けようとしてるんじゃないのか? それは立派なことで、やりがいもあるだろう。
でもさ、ずっとそんな気持ちで続けても、心が疲れるだけだぜ?
やるんだったら、ちゃんと自分で受け止めて、気持ちよくやっていくべきなんじゃないか?」
「そんなに私、嫌々やってるように見えたかしら……」
さすがに自分勝手な言葉が過ぎたかもしれないと思い、少し憂鬱さを覚えた。
「うん、そういうのはさ、身体に毒だよ。一人で抱え込んでいいことなんてないさ」
畳み掛けるように言葉を続けて、私の中にどうしようもなく蔓延る不安な心の内を開かれるように、私の中に入り込んでくる彼のことを、私は次第に受け入れようとしている。
それは、簡単に許していいものではないのに。
私はもっと言い返してやりたかったが、疲れもあって樋坂君の言葉に言い返せなくて。気付けば彼をそのまま受け入れて、一緒に仕事を始めるようになった。
これが、樋坂君との関係の始まりだった。
そもそも生徒会室に集まってワイワイやることが重要なことでもないから、私は気にしないようにしている。会長のように冗談や愚痴交じりに和気あいあいと話しながら生徒会運営するのは、私にはできない。
協力的な後輩には生徒会室にわざわざ来なくても、作業ができるようデータを渡して、作業項目は伝えてある。
とはいえ、指示した通りにちゃんとやってくれる人は限られて、気づいたら締め切り前になって結局私がやることになるなんてこともザラにある。
それはそうだろう、これは仕事じゃない。学生の身分である以上、そこまで真面目に几帳面にやってくれるのを期待していてはストレスになる。程よい距離間で過度な期待をせずに付き合っていくしかない。
そういうわけで、私の仕事はこうして毎日続いている。
私は家に帰ってするより生徒会室でする方が集中できる。
私の暮らす家は学園近くのアパートで、狭くて空気も悪いから、どちらかといえば生徒会室の方がエアコンも自由に使えて部屋も広いから快適で、結局仕事も終わらないから、毎日長居することになっている。
その時、誰かが生徒会室にやってきた。
足音が生徒会室の前に止まって、シルエットがはっきりと浮かび上がる。
見慣れないシルエット、あまり私と絡んでいる人ではないことがすぐに分かった。
(誰だろう……)
170センチはあるだろうか、私よりも大きいから、おそらく男の人だろう。
私は扉の方を向いたまま、厄介な相手でなければいいなと思いながら身構えた。
ガラガラと音を立てて横開きの生徒会室の扉が開き、そこにシルエットで見た男性の姿が現れる。
「―――樋坂くん?」
警戒して扉を見つめる中、現れたのは樋坂君だった。
私は昨日の件を思い出して、樋坂君には面倒ごとを押し付けてしまっていたから、わざわざ生徒会室に来ると思いもよらなかったから、驚いて声が漏れてしまった。
「よっ、また一人でやってるのか?」
どういう要件か見当も付かないが、突然にやってきた樋坂君は軽い調子で私に聞いてきた。
「……どうして、何か用かしら?」
樋坂君のことを見ながら、私は自然と心の内が滲み出ていた。
「困ってるんだろ? 俺に出来ることがあるなら、手伝ってやるよ」
思いもよらない事を言って、ズカズカと部屋に入ってくる樋坂君。一体何を考えているのか分からず、私の頭は真っ白になった。
「あなた、クラスはどうしたの? 脚本があるって昨日言ってたでしょ?」
私は揺れる心の内を抑えながら、突然やってきた樋坂君に言葉を掛けた。
「もう、終わらせてきたよ。今回のは渾身の出来だから、誰も意見をはさむ余地はなかったからな、後は上手くやってくれるさ」
私には演劇がどういうものかどういうものか、よくわかっていないけど、彼が大丈夫だと言うのなら大丈夫なのだろうと、私はそう思うことにした。
「それで、わざわざ私を手伝いに来たの?」
「うん、気分転換にはちょうどいいしな」
そう軽く言ってのける樋坂君、生徒会の大変さが分かってないのかな……、軽く見られているようで少し癪だった。
「私のやっている事、あなたが思っているより面倒なことばかりよ。やったって誰に感謝されるわけでもないし、労力に見合わないことばっかり。気分転換になるようなことはないわよ」
「じゃあさ、何で副会長はやってるんだ? 面倒なことだと分かってて、どうして続けてるんだ?」
その言葉はキラーパスだったかもしれない。すらすらと次の言葉が出てくる樋坂君の事が私には不思議に映った。
普段はぼんやりしていて、頭使ってなさそうなのに……。でも、それは私の勝手な偏見で本当は頭の回転が速く考えるのが得意なのだろう、だから脚本も書けてしまうだと考えると納得のいくことだ。
「それは私しかいないから、私がやらないと……」
私は急に返答が苦しくなって声に詰まりながら、返事をした。この時点ですでに樋坂君の方が一枚上手だった。
「そういう正義感とか奉仕精神はさ、結局言い訳だよ。
副会長は立派で仕事が早くて頼られてる、だから自分で全部引き受けようとしてるんじゃないのか? それは立派なことで、やりがいもあるだろう。
でもさ、ずっとそんな気持ちで続けても、心が疲れるだけだぜ?
やるんだったら、ちゃんと自分で受け止めて、気持ちよくやっていくべきなんじゃないか?」
「そんなに私、嫌々やってるように見えたかしら……」
さすがに自分勝手な言葉が過ぎたかもしれないと思い、少し憂鬱さを覚えた。
「うん、そういうのはさ、身体に毒だよ。一人で抱え込んでいいことなんてないさ」
畳み掛けるように言葉を続けて、私の中にどうしようもなく蔓延る不安な心の内を開かれるように、私の中に入り込んでくる彼のことを、私は次第に受け入れようとしている。
それは、簡単に許していいものではないのに。
私はもっと言い返してやりたかったが、疲れもあって樋坂君の言葉に言い返せなくて。気付けば彼をそのまま受け入れて、一緒に仕事を始めるようになった。
これが、樋坂君との関係の始まりだった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
レオナルド先生創世記
ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
潮に閉じ込めたきみの後悔を拭いたい
葉方萌生
ライト文芸
淡路島で暮らす28歳の城島朝香は、友人からの情報で元恋人で俳優の天ヶ瀬翔が島に戻ってきたことを知る。
絶妙にすれ違いながら、再び近づいていく二人だったが、翔はとある秘密を抱えていた。
過去の後悔を拭いたい。
誰しもが抱える悩みにそっと寄り添える恋愛ファンタジーです。
結婚相手は、初恋相手~一途な恋の手ほどき~
馬村 はくあ
ライト文芸
「久しぶりだね、ちとせちゃん」
入社した会社の社長に
息子と結婚するように言われて
「ま、なぶくん……」
指示された家で出迎えてくれたのは
ずっとずっと好きだった初恋相手だった。
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
ちょっぴり照れ屋な新人保険師
鈴野 ちとせ -Chitose Suzuno-
×
俺様なイケメン副社長
遊佐 学 -Manabu Yusa-
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
「これからよろくね、ちとせ」
ずっと人生を諦めてたちとせにとって
これは好きな人と幸せになれる
大大大チャンス到来!
「結婚したい人ができたら、いつでも離婚してあげるから」
この先には幸せな未来しかないと思っていたのに。
「感謝してるよ、ちとせのおかげで俺の将来も安泰だ」
自分の立場しか考えてなくて
いつだってそこに愛はないんだと
覚悟して臨んだ結婚生活
「お前の頭にあいつがいるのが、ムカつく」
「あいつと仲良くするのはやめろ」
「違わねぇんだよ。俺のことだけ見てろよ」
好きじゃないって言うくせに
いつだって、強引で、惑わせてくる。
「かわいい、ちとせ」
溺れる日はすぐそこかもしれない
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
俺様なイケメン副社長と
そんな彼がずっとすきなウブな女の子
愛が本物になる日は……
ヤクザに医官はおりません
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした
会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。
シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。
無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。
反社会組織の集まりか!
ヤ◯ザに見初められたら逃げられない?
勘違いから始まる異文化交流のお話です。
※もちろんフィクションです。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる