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第十一話「唯花と研二」6

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 撮影が再開され、演技をしている側、製作監督や編集をしているスタッフ側にとっても望み通りの充実した時間が続いた。
 SF映画の人気は、その時代ごとに好まれる設定があるにせよ、堅調であり、今回も例に及ばず、近年好まれる傾向を踏襲しているものであった。

 後半になればなるほど、アクションシーンが増えていき、盛り上がりが目に見えるようになると、スタッフのモチベーションも飛躍的に上がっていく。

「君は先に行くんだ、ここは俺が押さえる!」

「どうして?! 私一人が未来に行ったって何にもならないって分かってるでしょう?! 私もここに残る、だから、どうかあなたも一緒に行きましょう?」

「いや、ダメだ、君の命を守りながら戦える状況じゃない。
 先に行くんだ、生きていれば、いつかまた会える」

 市街地に銃弾が飛び交う中、地下にあるカプセルの中に彼女だけが入る。
 カプセルを閉じ、スイッチを入れれば彼女の姿は消え、未来へと転送される。

「待ってるから!! 未来で、あなたの指定した座標で!!」

「あぁ、幸せにな。こんな醜い世界から、争いのない平和な世界にしてみせる」

 ゆっくりと丈夫そうなカプセルが閉じられる。
 カプセルを閉じ、別れを選んだ男の目に覚悟のほどが伺え、その目で心配するなと訴えかけてくる。

(……これが、黒沢研二という役者。迷いなく、時の止まるその時まで演者として演じ切る。これが、この演技力こそが羽月さんが彼を主演に選んだ理由)

 唯花は自分たちがこれからクラスで演じることになる作品のことが頭に浮かんだ。
 彼なら平然と、文句も言わずやり遂げることだろう。そんな未来が想像できた。
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