①影武者令嬢はわがまま王女に婚約破棄された公爵令息に求婚される②美しき薔薇姫☆異世界恋愛短編集1

櫻井金貨

文字の大きさ
2 / 17
その1 影武者令嬢はわがまま王女に婚約破棄された公爵令息に求婚される

第2話 公爵令息と男装の騎士

しおりを挟む
「きゃあ! ウィリアム様っ!」
「ジリアン様~っ! 素敵ですわっ……」

 王宮の磨き抜かれた回廊を、2人の若者が颯爽と歩いてくる。

 背が高い方は、艶やかな黒髪。印象的な黒い瞳に、純白の礼装が眩しい。
 手入れの行き届いた髪と肌。落ち着いた表情に、品のあるしぐさで、すぐに高位貴族の令息と知れた。

 小柄な方は、明るい金色の長い巻毛を首の後ろで束ね、大きな青の瞳をしている。
 愛らしい顔だちだが、姿勢よく、膝丈のチュニックにマントを重ね、腰に剣を差した騎士姿だ。

 黒髪の貴族令息が小柄な騎士にかがみ込むようにして、体を寄せながら歩いてくるのだが、それがまるで、騎士を守ろうとしているかのようにも見えて。

 2人の姿がキラキラして見えるのは、鏡のように磨き抜かれた白と金の回廊だけのせいではないはずだ。

 きゃー! と抑えながらも抑えきれない、女性達の悲鳴が辺りに響いた。

「まあ! ウィリアム・ディーン様とジリアン様よ」
「いつ見ても素敵なお2人……キラキラと輝いているわ……」

 黒のドレスに、白のエプロン。
 揃いのお仕着せを着た、王宮勤めの若いメイド達が熱い視線を注いでいるのは、もちろん、目の前を通り過ぎる、黒髪と金髪の2人だった。 

 黒髪で背が高いウィリアム・ディーン。
 金髪巻毛で小柄なジリアン。
 2人とも、年頃は同じくらい。
 共に育った幼なじみの気安さがどこか滲み出ている。

「アネット王女殿下のお部屋へ行かれるのかしら」
「そうね、ウィリアム様は、王女殿下の婚約者ですもの」

 そそそ……と集団で廊下の端に寄って、2人に道を譲りつつも、視線は外さず、賑やかに話す声は止まらない。

「王女殿下が羨ましいわ。両手に花、ならぬ2人の美しい殿方を抱えてーーうふふふふふ、ぐふ」
「ちょっと、貴女、その笑いはさすがに少々不気味でしてよ。ジリアン様が女性なのはもちろんーー」

「もちろん、知っていますわ。有名ですもの。将軍閣下の1人娘。男装騎士として、王女殿下の護衛を務める……」

 自分の名前が聞こえたのか、メイド達を追い越しながら、ジリアンが眉をひそめて、ちらりと視線を投げたらしい。
 ここで再び、きゃー! という女性達の悲鳴が入った。

「あぁん、ジリアン様は、本物の殿方以上に麗しいわ……!」
「本当に素敵。あぁ、わたくしも守っていただきたいわ……」

「うふふ。まさに男装の麗人ですわね。王女殿下は、ジリアン様を離しませんのよ? ジリアン様がおそばを離れると、まあ、ご機嫌斜めになられるとか」
「王女殿下は、ご気性がはっきりした方ですもの」

「物言いもはっきりされているわ。だから『わがまま王女』なんて言われるのね。でもっ! それくらいでいいのよ! 将来は、女王になられるかもしれないのだから……」

 大盛り上がりの女性達。
 彼女らの前を、ウィリアム・ディーンとジリアンが並んで足早に通り過ぎていく。

「また、お前の噂をしているぞ、ジル」
「私ではない。ウィル、お前のことだろう」

 ジリアンはそっけない。
 メイド達のことは、一瞬にして、彼女の中で、なかったことになったようだ。

 可愛らしい顔をにこりともさせず、生真面目に前を向いて、ウィリアムに遅れまいと歩調を合わせている。

 ……そんな2人の様子を、回廊の端にそっと立ってさりげなく観察している、1人の貴婦人がいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

遊び人の侯爵嫡男がお茶会で婚約者に言われた意外なひと言

夢見楽土
恋愛
侯爵嫡男のエドワードは、何かと悪ぶる遊び人。勢いで、今後も女遊びをする旨を婚約者に言ってしまいます。それに対する婚約者の反応は意外なもので…… 短く拙いお話ですが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。 このお話は小説家になろう様にも掲載しています。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

冷遇された没落姫は、風に乗せて真実を詠う ─残り香の檻─

あとりえむ
恋愛
「お前の練る香など、埃と同じだ」 没落した名家の姫・瑠璃は、冷酷な夫・道隆に蔑まれ、極寒の離れに追いやられていた。夫の隣には、贅を尽くした香料を纏う愛人の明子。 しかし道隆は知らなかった。瑠璃が魂を削って練り上げた香は、焚く者の心根を映し出す「真実の鏡」であることを。 瑠璃が最後に残した香の種を、明子が盗み出し、手柄を偽って帝の前で焚き上げた瞬間。美しき夢は、獣の死臭が漂う地獄へと変貌する。 「この香りの主を探せ。これほど澄み切った魂が、この都に在るはずだ」 絶望の淵で放たれた一筋の香りに導かれ、孤独な東宮が泥の中に咲く白蓮を見つけ出す。 嘘と虚飾にまみれた貴族社会を、ひとりの調香師が浄化する、雅やかな逆転劇。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、すれ違いの末に離れ離れになった夫婦の物語。 再会したとき、二人が選ぶのは「離婚」か、それとも「再構築」か。 妻を一途に想い続ける夫と、 その想いを一ミリも知らない妻。 ――攻防戦の幕が、いま上がる。

虐げられた私、ずっと一緒にいた精霊たちの王に愛される〜私が愛し子だなんて知りませんでした〜

ボタニカルseven
恋愛
「今までお世話になりました」 あぁ、これでやっとこの人たちから解放されるんだ。 「セレス様、行きましょう」 「ありがとう、リリ」 私はセレス・バートレイ。四歳の頃に母親がなくなり父がしばらく家を留守にしたかと思えば愛人とその子供を連れてきた。私はそれから今までその愛人と子供に虐げられてきた。心が折れそうになった時だってあったが、いつも隣で見守ってきてくれた精霊たちが支えてくれた。 ある日精霊たちはいった。 「あの方が迎えに来る」 カクヨム/なろう様でも連載させていただいております

前世の記憶しかない元侯爵令嬢は、訳あり大公殿下のお気に入り。(注:期間限定)

miy
恋愛
(※長編なため、少しネタバレを含みます) ある日目覚めたら、そこは見たことも聞いたこともない…異国でした。 ここは、どうやら転生後の人生。 私は大貴族の令嬢レティシア17歳…らしいのですが…全く記憶にございません。 有り難いことに言葉は理解できるし、読み書きも問題なし。 でも、見知らぬ世界で貴族生活?いやいや…私は平凡な日本人のようですよ?…無理です。 “前世の記憶”として目覚めた私は、現世の“レティシアの身体”で…静かな庶民生活を始める。 そんな私の前に、一人の貴族男性が現れた。 ちょっと?訳ありな彼が、私を…自分の『唯一の女性』であると誤解してしまったことから、庶民生活が一変してしまう。 高い身分の彼に関わってしまった私は、元いた国を飛び出して魔法の国で暮らすことになるのです。 大公殿下、大魔術師、聖女や神獣…等など…いろんな人との出会いを経て『レティシア』が自分らしく生きていく。 という、少々…長いお話です。 鈍感なレティシアが、大公殿下からの熱い眼差しに気付くのはいつなのでしょうか…? ※安定のご都合主義、独自の世界観です。お許し下さい。 ※ストーリーの進度は遅めかと思われます。 ※現在、不定期にて公開中です。よろしくお願い致します。 公開予定日を最新話に記載しておりますが、長期休載の場合はこちらでもお知らせをさせて頂きます。 ※ド素人の書いた3作目です。まだまだ優しい目で見て頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。 ※初公開から2年が過ぎました。少しでも良い作品に、読みやすく…と、時間があれば順次手直し(改稿)をしていく予定でおります。(現在、146話辺りまで手直し作業中) ※章の区切りを変更致しました。(9/22更新)

勝手にしろと言われたので、勝手にさせていただきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
子爵家の私は自分よりも身分の高い婚約者に、いつもいいように顎でこき使われていた。ある日、突然婚約者に呼び出されて一方的に婚約破棄を告げられてしまう。二人の婚約は家同士が決めたこと。当然受け入れられるはずもないので拒絶すると「婚約破棄は絶対する。後のことなどしるものか。お前の方で勝手にしろ」と言い切られてしまう。 いいでしょう……そこまで言うのなら、勝手にさせていただきます。 ただし、後のことはどうなっても知りませんよ? * 他サイトでも投稿 * ショートショートです。あっさり終わります

冷酷騎士様の「愛さない」は一分も持たなかった件

水月
恋愛
「君を愛するつもりはない」 結婚初夜、帝国最強の冷酷騎士ヴォルフラム・ツヴァルト公爵はそう言い放った。 出来損ないと蔑まれ、姉の代わりの生贄として政略結婚に差し出されたリーリア・ミラベルにとって、それはむしろ救いだった。 愛を期待されないのなら、失望させることもない。 契約妻として静かに役目を果たそうとしたリーリアは、緩んだ軍服のボタンを自らの銀髪と微弱な強化魔法で直す。 ただ「役に立ちたい」という一心だった。 ――その瞬間。 冷酷騎士の情緒が崩壊した。 「君は、自分の価値を分かっていない」 開始一分で愛さない宣言は撤回。 無自覚に自己評価が低い妻に、激重独占欲を発症した最強騎士が爆誕する。 以後、 寝室は強制統合 常時抱っこ移動 一秒ごとに更新される溺愛 妻を傷つける者には容赦なし宣言 甘さ過多、独占欲過剰、愛情暴走中。 さらにはリーリアを取り戻そうとする実家の横槍まで入り――? 自己評価ゼロの健気令嬢と愛が一分も我慢できなかった最強騎士。 溺愛が止まらない、契約結婚から始まる甘すぎる逆転ラブコメ

処理中です...