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ニ章
28話 中級試験
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点々と雨粒の弾ける音が玄関口に鳴り響く。肌に触れる涼しい風が心地いい。
今日は待ちに待った中級試験当日、あいにく天気は曇り空だけど僕の気持ちはとても晴れやかだった。
義手と義足の調子も良く、試験内容も事前にフィリスから予習済みだ。特に気負う事もない。
すべてが終わった後は、みんなで遊びに出掛ける約束をしているくらいだ。
意気揚々とギルドの前に辿り着き、扉を開く。そして……一気に現実に引き戻された。
普段は雑多に込み合っているはずのギルドが、異様な雰囲気に包まれていたからだ。
これが僕の己惚れじゃなければ、全員の視線を一点に集めている気がする。
「あの……皆さん。これはどういった集まりなんですか?」
恐る恐る近くにいた人物に話しかけてみる。大柄な男性だった。
厳つい表情ながら口が大きく横に開き、機嫌の良さそうな声が発せられた。
「そりゃあ当然、ニノの応援に来たんだよ! なんたってギルド期待の新星の昇級試験だぞ? みんなお前目当てに集まってんだ!!」
「……えっ? ここにいる全員が? 嘘ですよね!?」
「ガハハハ、聞いたぞ。早速あの《八剣神》の一人に目を付けられたんだって? 後で俺にも詳しい話を聞かせてくれ、酒の一杯でも奢ってやるからな」
「あら、可愛い坊やね。昇級したらお姉さんが良い事を教えてあげようかしら?」
「ええい年増の女は失せろ! ここは男同士の語り場だ、ギルドに卑しい感情を持ち込むな!!」
「何よ!! アンタだって自分の名を売る為に必死な癖に!!」
「うるせぇ! それの何が悪いってんだ!!」
屈強な男たちに背中を叩かれ、息が詰まりそうになった。身体が跳ね上がる。
それを合図に先輩たちに囲まれて激しい洗礼を受けた。触っても御利益なんてないのに。
みんな人当たりがいいけど接し方が不器用過ぎる。死ぬ、このままじゃ埋もれて窒息死してしまう。
「た、たかが中級試験ですよね!? ちょっと大袈裟過ぎませんか!?」
「新人がここまで注目される事なんてそうないんだぞ? これも有名税って奴だ。どっしり構えていけ!」
「中央の連中に負けんじゃねーぞ! 田舎者の意地ってやつを見せてやれ!!」
興奮した冒険者たちは止まらない。
助けを求めて周囲を見回す。常識人たちは誰も彼も遠巻きに眺めるだけで近寄ろうともしない。
きっとありがちな日常の光景なんだろう。そう諦めかけたその時、思わぬところから援護が来た。
ドドドドドドドドドドドドドーーーーーーーーン
「――卑しい人族どもめ、私のニノをこれ以上穢すな!! ぶっ殺すわよ!!」
「「「「「ひぃっ!!」」」」」
「た、助けてくれ! 悪気はなかったんだ!!」
「俺は何もしてねぇ!! ただ騒ぎたかっただけで、命だけは勘弁してくれぇ……!」
扉を突き破る勢いでギルドに飛び込んできたフィアー。一目散に逃げ惑う冒険者たち。
少女は黒い瘴気を放ちながら、僕の前で歯を剥き出しにして威嚇していた。
手には布で丁重に包まれた箱。漂う匂いからして食べ物だろうか。
もしかしたら僕の為に届けに来てくれたのかもしれない。
「あぁ……お終いよ……私たち殺されるんだわ……! 思い返せば短い人生だった……!」
「まだ普通に死ねる方がマシよ! 闇に取り込まれたら死霊にされてしまうって聞いたわ……!」
「こ、こっちを見るな!! 俺は喰っても美味くねぇぞ!!」
各所からも悲鳴が漏れ出ている。
ここに集まった人の多くが、フィアーが闇精霊である事実を知っている。
同時に街を救ってくれた救世主である事も。とはいえ簡単に受け入れられるものじゃない。
そこには複雑な感情が混ざり合っていた。――殆どが諦観だったけど。
騒動の一部始終を上階から見守っていたザイルさんと杖をついた初老の男性、ギルド長は苦笑していた。
「ニノ、本当にその子は大丈夫なのか? いきなり襲ってくるとかないよな?」
「フィアーの機嫌が悪いのはいつもの事ですよ。下手に手を出さきゃ噛まれないです……多分」
「ちょっとニノ!! 私を獣なんかと一緒にしないでよ。もうっ!」
「今日はソレをつけているんだね、可愛いよ」
「そんなので誤魔化そうだなんて…………で、でも、あ、ありがと」
そう言ってフィアーが背中を軽く叩いてくる。
僕とフィリスが贈った蝶の髪飾りを身に着けて、視線を気にしながら顔を赤くする。
「……へぇ、意外と可愛いじゃないか。闇精霊も案外話しやすいのかもな」
「昔は敵だったと言われても、どうせ数百年前の出来事なんて俺たちには関係ないしな」
「下手に敵対されるぐらいなら、仲良くした方がいい。ギルド長の御言葉通りだ」
頬を膨らませ僕に抗議するフィアーの姿に、一瞬にして場の空気が緩む。
見た目相応の振る舞いをしていれば、フィアーはただの可愛い女の子。
こうやって少しずつ馴染んでいってくれたら嬉しい。
「ほれ皆の衆、そろそろ自分の役目に戻らんか。もうすぐ中央の子たちがやって来る、みっともない姿を見せるつもりか?」
「はいはい解散解散! 邪魔だ、どけどけ!」
「ちぇっザイルの奴担当だからってやけに張り切りやがって。仕方ねぇ――ニノ、頑張れよ!」
「今度うちの店に来い、旨い飯を食わせてやる」
「あ、ありがとうございます」
ギルド長に諭されこの場に集っていた冒険者たちが帰っていく。
その一人一人に激励の言葉を貰いながら、ギルド長に挨拶をする。
フィアーも珍しくほんの少しだけ頭を下げてすぐに僕の隣にくっついた。
「精霊様は相変わらずニノ少年と仲がよろしいようで、このダブラス、微笑ましく見守っておりましたぞ」
「私は見世物じゃないんだけど……? まぁ貴方には色々と感謝してるから今回は見逃してあげる」
「それはそれは光栄でございます。老骨に鞭を打って事後処理に励んだ甲斐があるというものです」
芝居がかった対応だけど馬鹿にしているものでもなく、孫娘を眺めるような優しい瞳だった。
フィアーが安全に街を出歩けるのも、ギルド長であるダブラスさんが手を回してくれたお陰だ。
三百年前に勃発した人族と魔族の戦争、そこで魔王と共に暴れた闇精霊。
本来なら討伐対象にされてもおかしくなかった彼女の立場を救ってくれたんだ。
その件で感謝するといつも決まって『今の我々に闇精霊様に敵う勇者がおらんのでな』と茶化される。
確かに、下手に精霊様と争うくらいならご機嫌を取る方が楽なんだろうけど。
とはいってもダブラスさんは実際フィアーの事を相当気に入ってるらしい。
今ではフィアーは知る人ぞ知る珍獣みたいな扱いだった。
意外と街中でもその可憐な容姿から人気があるらしく、特にお年寄りに可愛がられている。
いつも誰かに食べ物や玩具を貰っている姿を目撃されていた。本人は不服らしいけど。
「むっ、どうやらたった今、到着したみたいだな。……おおよそ時間通りだ」
「……? ザイルさん、誰か来るんですか?」
返事を聞く前に、四人の男女が堂々とした面構えでギルドの玄関口を潜ってきた。
場違いなほどに煌びやかな装飾で彩られた装備を身に付け、周囲の好奇な視線をものともしていない。
全員、僕より少し年上くらいの若い冒険者たちだった。
「アウバストより参りました、ユニオン《風炎》のリーダーを務めていますケイシア・フレースです。本日はこちらで中級試験を行うとの事で、何卒よろしくお願いいたします!」
「これはこれはご丁寧に、我々も若くして優秀な君たちを心から歓迎しておるよ」
先頭に立った女性が会釈を返してダブラスさんと会話している。
話を聞く限り彼女たちも下級冒険者なんだろう、装備だけ見れば下級とは思えないけど。
「ところでザイルさん質問なんですけど、ユニオンって何ですか?」
「ん? あぁニノは知らなかったのか。アウバストを有する中央大陸はうちとは都市の規模も冒険者の数も違うからな、個人単位では管理しきれないんでユニオンというグループ単位で登録を行っているんだ」
「えっと、つまりあの人たちは四人で一人って事なんですね。一人ぼっちには辛そうだ……」
「一応、個人でも受け入れてはいるらしいが、届けられる依頼がユニオン前提で組まれてあるんで推奨はされていないみたいだな。んで、中央であぶれてしまった連中を受け入れるのがうちのような田舎って訳よ」
「な、なるほど……」
意外な事実を知って納得してしまった。
今日まで僕が依頼で組んできた冒険者たちは、個々の主張が激しく連携が取り辛い人が多かった。
その中には中央のユニオン制度に馴染めなかった人もいたんだろう。
つまりポートセルトは個人主義のギルドみたいなものだ。
案外、僕は中央のギルドの方が向いているのかもしれない。
「もしかして貴方が精霊術師のニノ・アーティスさんでしょうか?」
「あ、はい。そうです!」
ギルド長との話も終わり、ケイシアさんが優雅な足取りで僕の前に立つ。
少し見上げるくらいの背丈で、宝石みたいに輝く翠髪を一つに結んでいる。
軽く自己紹介したところ、どうやら彼女は僕より歳が二つ上との事で。
物腰の柔らかい落ち着いた雰囲気で、年下の僕に対しても敬語で接してくれている。
自称で僕の姉を語るフィリスと違って、何もかも本物のオーラを放つ年上のお姉さんだった。
「お噂はかねがねギルド長から伺っております。貴方のような才能溢れる方と共に試験に挑める事を、大変嬉しく、そして心強く感じています。冒険者という立場上、歳も身分もありません。気軽にケイシアと呼んでくださいね」
「こちらこそ、僕の事もニノで結構です。お互いに頑張りましょうね、ケイシアさん!」
「ええ、よろしくお願いします。ニノさん!」
差し出された手を握り返す。
女性のものにしては少し固い、厳しい修行を積んできた剣士の手のひらだった。
気品のある見た目とは裏腹に努力家なんだと察した。今までにないタイプの人だ。
リーダーであるケイシアさんと簡単に挨拶を交わすと、残りの三人もそれに続く。
「君があのグランゴーレムを召喚したんだって!? 俺たちより年下だっていうのに凄いよなぁ」
「今後ともよろしく! ニノさんとケイシアがいれば試験も楽勝で終わりそうだね!」
「はわぁ、噂通りの優しそうな人で良かったぁ……!」
「みなさん、落ち着いて。ニノさんに失礼ですよ! 本当、騒がしくてごめんなさい……!」
「全然、気にしてませんよ!」
過去、ここまで手放しで褒められた事があっただろうか?
今までパーティを組んできた面々を思い返すと対応に天と地の差がある。
このメンバーならきっと今度こそ、一人置いて行かれるような事はないと思う。うん。
「互いに紹介も済んだようだし、そろそろ本題に移ろうか」
ザイルさんが手にしていた資料を全員に配っていく。
そこには今回の試験内容がびっしりと書き込まれていた。
「既に周知の者もいるだろうが、中級試験の内容はこの辺りで悪事を働いている盗賊団の鎮圧になる。これまで君たち下級冒険者に回されていた魔物退治と違い、これからは本格的な対人戦闘も要求される。相手は我々と同じ人であり、その危険度は計り知れない。だがこれは中級冒険者となる為には必ず乗り越えなければならない壁だ。もちろん無理だと感じたら棄権してもらっても構わない。自分の力量を弁えるのも冒険者として必要な素質だからな」
ザイルさんの話を聞き《風炎》のメンバーに緊張が走る。
唾を飲み込む音、手足が震えだす人もいた。まだ説明段階なのに気が早い。
多分、訓練以外で初めて経験する対人戦なんだろう。
下級冒険者はフィリスみたいな規格外の実力者を除いて、人が相手の依頼は基本的に回されない。
求められる能力があまりに複雑で高すぎるからだ。同じ実力帯の魔物を相手取るのとでは訳が違う。
相手は知恵を働かせ多種多様な戦略を取ってくる。戦闘の最中何が起きてもおかしくない。
これまで培ってきた経験と総合力が求められる難しい依頼だ。
何より同族に剣を向ける、向けられる覚悟が必要になってくる。
「ザイルさん、盗賊団の規模は?」
「事前の報告によれば六人程度の小さな集団だ。どうやら隣の大陸からこちらに移り住んできたらしい、そこには冒険者崩れも何人か報告されている」
「冒険者崩れ……ですか。相手は実力者、厳しい戦いになりそうですね……」
「面は割れていて全員が下級クラスだ。君たちが普段通りの力を発揮すれば余裕を持って戦えるはずだぞ?」
「「「「…………」」」」
「何だ何だ。ニノ以外ガッチガチじゃないか、今からそんなんでどうする。あんまり心配させるなよ」
僕は既に何度か乗り越えてきた道なので、こうして平常心でいられる。
中央の人たちはこういった経験が皆無らしい。そもそも盗賊退治は本来、国を守る騎士の仕事だ。
ポートセルトのような、冒険者たちが率先して土地の治安を維持している場所はそうそうない。
そういった意味で中級試験の会場にこの場所が選ばれたのも納得がいく。
本格的な対人戦闘を経験するには、治安が良すぎる中央では不向きなんだろう。
それが悪い事だとは思わないけど。僕たちは庇護される側ではなく庇護する側なんだ。
真剣に依頼概要を読み込んでいると隣から声を掛けられた。
「ニノさんは緊張なされないのでしょうか? 私たちと同じ下級とは思えないほど落ち着いていられますが……」
こっそりと自分は震えが止まらないのだと教えてくれるケイシアさん。
こういう時に仲間として気の利いた言葉をかけてあげたいけど、なかなか難しい。
昔の自分はどうしていたのか思い出せない。多分、彼女と同じだったはずなんだけど。
「多少は緊張していますよ。でも、うーん。こういうのはやっぱり慣れなのかな? 最近は強敵とばかり戦ってきたから。それを考えたら、ちょっと拍子抜けかもしれないですかね」
「……その歳でもう多くの経験を積まれていらっしゃるのですね」
僕の周りにはフィリスやアーダンといった才能溢れる同期の存在がある。
レイドやミスティといった中級冒険者との実戦経験も、つい最近は光の精霊とも戦った。
カーレンさんやアーシェさんの戦いぶりも間近で見てきた。フィアーにトルの頑張りだってそうだ。
今更下級クラスの盗賊を相手に出されても、どうしても見劣りしてしまう部分があった。
聞くところでは僕の中級試験は免除すべきではないかという声もギルド内では多少あったらしい。
仮にも街を救った英雄なのだからそれに見合った身分は必要だと、下級では箔が付かないと。
だけどその話はギルド長によって白紙になったと伺っている。
もしかしたら今回の試験、僕の本当の役割は彼女たちのサポートなのかもしれない。
ケイシアさんたちは同じ冒険者とはいえ、他所から託された大切な客人だ。
万が一があればギルドの信用に傷が付く、その安全策として組み込まれたような気がする。
「とにかく、今回のパーティのリーダーはニノだ。よろしく頼むぞ」
ザイルさんから転移石が入った袋を受け取る。
中を確認すると、それは仄かに温かい、中心が深藍色に輝く魔力が込められた透明な鉱石だった。
貴重品なので袋に閉じてしっかりと管理しておく。これもリーダーの大事な役目だ。
「やぁニノ君。今から出るのかい? リーダーに抜擢されるだなんてやるじゃないか」
「やっほー、やけにギルドが騒がしいと思ったら今から中級試験なのね。はぁー懐かしいわね」
突然現れた二人の姿に周囲が騒然となる。
超級冒険者とそれに近しい立場の上級冒険者だ、ギルドでも彼らを目標としている人も多いはず。
《風炎》のメンバーも目を見開かせていた。
「カーレン・ロスター……どうして貴方が……!」
その中でケイシアさんだけは反応が違った。
会いたくもない人物に出会ってしまったかのような、苦々しい顔つき。
カーレンさんもその存在に気付いて表情を変える。僕が見たことがない厳しい顔だ。
「そこにいるのはケイシアか? ……そうか、中央から何人か派遣されると聞いていたが――まだ君は諦めていなかったのか」
「……何度でも言います。私は諦めません。必ず貴方を……そして兄上を越えてみせます……!」
「……無理だと思うがな。君には才能がない。大人しく剣を置いた方が身の為だ」
剣呑な雰囲気に包まれ、辺りが一転して静まり返る。
バッサリと言葉で切り捨てられたケイシアさんは、声を震わせながら反論する。
「どうして……! 私の事を深く知りもしないで、勝手な事を……!」
「……知っているさ。親族が《八剣神》の一人だからといって君まで強くなったと勘違いしているんじゃないか?」
「違います! 私は自分の力でここまで登り詰めました。今回の試験にだって必ず合格してみせます!」
「中級試験程度ならニノ君一人の力だけでも簡単に超えられるだろうさ。だけどそれが必ずしも君の実力に繋がるとは限らない。己惚れて取り返しのつかない事態を招く前にさっさとこの場を去るべきだ」
「カーレン、ちょっと言い過ぎじゃない? ケイシアちゃんだって昔から頑張って――」
「こういうのはハッキリと伝えるべきなんだよ。ギルドは冒険者に対して良くも悪くも無関心で利己的だ。犠牲者が出ようとも依頼さえこなせばそれでよしと考えている、不幸な事故だったと。……誰かが言ってやらないと無駄に墓標を増やすだけだ」
「ま、まぁ仕事である以上そういう面も確かにあるがな……だがあまり後輩を虐めてやらんでやってくれよ?」
激しく言い争う両者にザイルさんも圧倒されていた。
光の精霊との戦いでもカーレンさんはここまで厳しい表情を見せていなかった。
余程彼女の事が気に入らないのか、それとも……その逆か。
「わ、私は……今日まで必死に剣を握ってきました。貴方の中の古いイメージで語らないでください!」
「ほう、それじゃ今ここで俺に見せてみろ。証明できるのか?」
「望むところです!!」
ケイシアさんは手が赤く滲むほど強く拳を握り、そして言い切った。
「何よ! 超級冒険者か何だか知らないけど、私たちを馬鹿にしないでよ!!」
「そうだ! 俺たちだってギルドに推薦されてここに来たんだ!!」
「……ですです」
「はぁ……仕方がないな」
後ろの三人も彼女を庇い声を荒げる。
カーレンさんは深い溜め息を付いて僕に顔を向けた。
「ニノ君、悪いけどこの子たち四人をまとめて相手してもらえるかな?」
「か、構いませんけど……」
「なっ……挑むのは私だけで――」
「君一人で彼に敵う訳がないだろ!! 相手の実力を推し量る事もできないのか!?」
「っ……! わ、わかりました……」
悔しそうに唇を噛みしめながら、ケイシアさんは僕の前で頭を下げた。
「ニノさん、私と――私たちと真剣に勝負してください」
◇
「どうした? 数の上では有利を取っているんだぞ。突っ立ているだけか?」
「……集中しているんです、貴方は黙っていてください!」
超級冒険者であるカーレンさんの手前、緊張しているのか四人の動作がぎこちない。
ギルド前にある開けた広場の中央、僕は囲いの中心に立ち、大きく隙を晒している。
出方を伺って誘ってみるも、慎重なのか中々攻めて来てくれない。
そのまま膠着した状態が十分は続いている。野次馬の人たちも退屈そうに眺めていた。
「いつでもどうぞ。遠慮なく打ち込んで来てください」
悔しがっていた彼女には悪いけど、これはいい機会をもらえたと思う。
現状の戦力を確認する上でも、こうやって手合わせをするのが一番手っ取り早い。
わざわざギルド長に私闘の許可を求める手間も省けたし。
「……はぁ、私が出る幕もなさそうね。どいつもこいつも雑魚ばかり――そこの偉そうな人族は加わるつもりはないの? お前なら多少は持つでしょうし」
「君の相手はいくら俺でもお断りだよ。俺は勝てない勝負はしない主義なんだ」
「男らしくない。ヘタレね……」
フィアーが暇潰しにカーレンさんを挑発していた。相変わらず仲が悪い。
と、見知らぬ少女に雑魚扱いされたのが気に障ったのか《風炎》の一人が斬りかかってきた。
「うおおおおおおおお!」
「……?」
一歩後ろに下がる。
それだけで気合が入りすぎた斬撃が宙を斬る。
続けざまにもう一人が、それも一歩横にズレて躱す。
「当たらない!? どうして!?」
「個々に動いては駄目です。相手は格上、足元と手元の動きで剣筋が読まれている。攻める時は連携を取って目を動かす暇も与えずかく乱するの!」
ケイシアさんは的確に指示を出しながら距離を詰めてくる。
ユニオンのリーダーだけあって、実力は四人の中で一番高いらしい。
彼女の周りには魔力の渦、風属性の力が放たれる。
四人が息を合わせてテンポをずらしながら剣を振るっていく。
「よっ!」
「なっ!? 防がれた!?」
最初の一撃を義手で抑えて軌道をずらす。
「甘い!」
「んなっ、その姿勢で防ぐのか!?」
二人目の斬撃に一人目の剣を合わせて妨害、身体を横に動かし完全に射程から切り抜ける。
「えっ!? きゃっ!!」
三人目の手元目がけて石を投げる。
手放された剣が回転しながら壁に突き刺さる。
「そんな! これでも駄目なの!?」
ケイシアさんの渾身の疾風の刺突。
それも――見てから躱せる。いや、実際はそこそこの剣速はある。
彼女の扱う武器は突きを得意とした細身の剣であり、初速もあって隙も少ない。
ただ惜しいのは、彼女の性格と似た素直で真っ直ぐな剣筋であり。
それは貴族が学ぶ王宮剣術みたいなもので、実戦での実用性はなく見世物に近い。
どれだけ素早い動きであろうと、単調で予備動作が見えていては効果は薄く。
普段から獣のように本能的に立ち回る人たちを相手にしている身としては与しやすい。
フェイントも混ぜてくるけど、その部分だけ剣にブレがあってわかりやすい。
人を騙すのが苦手で無意識に抑えているのか、試しにこちらから引っかかるフリをしてみる。
「今っ!」
「残念だけど……今のが本当のフェイントだよ」
「えっ!? きゃっ!!」
足を前に出す。
飛び込んで来たケイシアさんが、可愛らしい悲鳴と共に躓いて地面を転がった。
「よそ見したら駄目だよ! すぐにカバーに入らないと、仲間を見殺しにしちゃうよ?」
「うわぁ!? い、いつの間に!!」
「ひゃああああああ!?」
唖然として倒れるリーダーを見ていた二人を鋼糸で拘束する。
トルに教えてもらった捕縛術だ。怪我をしない程度に緩く縛りあげる。
「あ、あぁ……わ、私一人じゃ無理です……! 降参です!」
残りの一人は追い詰められると手を上げて諦めてしまった。武器は壁に刺さったままだった。
呆気ない幕引きに観戦者たちの溜め息がこちらにまで届いてきた。
「そ、そんな……四人がかりでも手も足も出なかった。同じランクでもここまで差があるというのですか……!」
「これで理解しただろう? 君たちがやっているのはただのお遊びだ。……荷物をまとめた方がいい」
カーレンさんが言葉によってトドメを刺そうとしている。
全員倒れ込み落ち込んで顔を上げようともしない。流石に可哀想になってきた。
「あの、カーレンさん」
「……どうしたんだいニノ君?」
「彼らに才能がないと決めつけるのは、少し早計ではないでしょうか?」
「…………ニノ……さん?」
「今回はただ相性が悪かっただけだと思います。僕は守り主体で戦っていますしその分多くの型を見てきました、対策が取れて当然です。これがただの盗賊相手なら決して劣る事はなかったはずです」
これは試合を通しての率直な感想だ。
単純に僕と彼女たちとでは踏んできた場数が違うだけで、実力は下級クラスを超えていると思う。
きっと真面目に訓練に取り組んできたんだろう、その分癖がわかりやすいけどそれは必ずしも悪い事じゃない。
欠点をカバーし合う為にユニオンの仲間がいる訳だし、戦い方なんて幾らでも変えようはある。
冒険者よりは騎士に向いている気がするけど、カーレンさんが言うほど才能がないとは思えない。
「僕だって元々は何の取り柄もなかった。ただ運よくノート様――大地の精霊様と繋がる事ができたからこの場所にいるんです。きっとケイシアさんたちだってこれからもっと強くなれます!」
「君は心優しいからな、そうやって彼女を庇うだろうと思っていたよ。……だからこそつまらない事に手を煩わせたくなかったんだが」
「ロスターさん、悪いですがここは手を引いてもらえますか? いくら超級冒険者だろうと、一度定まったギルドの方針に外野から口を出されるのも困るんですよ」
「そうかい、まぁこれ以上は俺も無理は言わないさ。ニノ君、試験頑張ってな」
手を上げてギルドを後にするカーレンさん。
どうやら本当に僕を応援する為だけに来てくれたらしい。
「ご、ごめんなさいね。カーレンも悪気があった訳じゃないの。私たちも長い間この仕事をやっているから色々あってね……。特にケイシアちゃんは旧友の大切な妹さんだから」
アーシェさんは手を合わせて申し訳なさそうに謝ると最後に僕の耳元で囁く。
「だからニノ君、悪いけど試験の間この子たちの事を頼むわね。何だかんだ言ってアイツもただ心配なだけなのよ……本当素直じゃないわよね?」
「わかりました。それにしてもアーシェさんも大変ですね……」
「わかる? ……本当困った幼馴染なんだから」
アーシェさんも手を振りながら去っていく。それに合わせて散り散りになっていく野次馬たち。
僕は座り込んでいたケイシアさんたちに手を差し伸べる。元々頼まれなくてもサポートはするつもりだった。
だけど今回の件でより一層、個人的に応援したくなった。
「試験に合格してカーレンさんを見返してやりましょう! 僕にできる事があれば何だって協力しますよ!」
「ニノさん……。あ、ありがとうございます……!」
今日は待ちに待った中級試験当日、あいにく天気は曇り空だけど僕の気持ちはとても晴れやかだった。
義手と義足の調子も良く、試験内容も事前にフィリスから予習済みだ。特に気負う事もない。
すべてが終わった後は、みんなで遊びに出掛ける約束をしているくらいだ。
意気揚々とギルドの前に辿り着き、扉を開く。そして……一気に現実に引き戻された。
普段は雑多に込み合っているはずのギルドが、異様な雰囲気に包まれていたからだ。
これが僕の己惚れじゃなければ、全員の視線を一点に集めている気がする。
「あの……皆さん。これはどういった集まりなんですか?」
恐る恐る近くにいた人物に話しかけてみる。大柄な男性だった。
厳つい表情ながら口が大きく横に開き、機嫌の良さそうな声が発せられた。
「そりゃあ当然、ニノの応援に来たんだよ! なんたってギルド期待の新星の昇級試験だぞ? みんなお前目当てに集まってんだ!!」
「……えっ? ここにいる全員が? 嘘ですよね!?」
「ガハハハ、聞いたぞ。早速あの《八剣神》の一人に目を付けられたんだって? 後で俺にも詳しい話を聞かせてくれ、酒の一杯でも奢ってやるからな」
「あら、可愛い坊やね。昇級したらお姉さんが良い事を教えてあげようかしら?」
「ええい年増の女は失せろ! ここは男同士の語り場だ、ギルドに卑しい感情を持ち込むな!!」
「何よ!! アンタだって自分の名を売る為に必死な癖に!!」
「うるせぇ! それの何が悪いってんだ!!」
屈強な男たちに背中を叩かれ、息が詰まりそうになった。身体が跳ね上がる。
それを合図に先輩たちに囲まれて激しい洗礼を受けた。触っても御利益なんてないのに。
みんな人当たりがいいけど接し方が不器用過ぎる。死ぬ、このままじゃ埋もれて窒息死してしまう。
「た、たかが中級試験ですよね!? ちょっと大袈裟過ぎませんか!?」
「新人がここまで注目される事なんてそうないんだぞ? これも有名税って奴だ。どっしり構えていけ!」
「中央の連中に負けんじゃねーぞ! 田舎者の意地ってやつを見せてやれ!!」
興奮した冒険者たちは止まらない。
助けを求めて周囲を見回す。常識人たちは誰も彼も遠巻きに眺めるだけで近寄ろうともしない。
きっとありがちな日常の光景なんだろう。そう諦めかけたその時、思わぬところから援護が来た。
ドドドドドドドドドドドドドーーーーーーーーン
「――卑しい人族どもめ、私のニノをこれ以上穢すな!! ぶっ殺すわよ!!」
「「「「「ひぃっ!!」」」」」
「た、助けてくれ! 悪気はなかったんだ!!」
「俺は何もしてねぇ!! ただ騒ぎたかっただけで、命だけは勘弁してくれぇ……!」
扉を突き破る勢いでギルドに飛び込んできたフィアー。一目散に逃げ惑う冒険者たち。
少女は黒い瘴気を放ちながら、僕の前で歯を剥き出しにして威嚇していた。
手には布で丁重に包まれた箱。漂う匂いからして食べ物だろうか。
もしかしたら僕の為に届けに来てくれたのかもしれない。
「あぁ……お終いよ……私たち殺されるんだわ……! 思い返せば短い人生だった……!」
「まだ普通に死ねる方がマシよ! 闇に取り込まれたら死霊にされてしまうって聞いたわ……!」
「こ、こっちを見るな!! 俺は喰っても美味くねぇぞ!!」
各所からも悲鳴が漏れ出ている。
ここに集まった人の多くが、フィアーが闇精霊である事実を知っている。
同時に街を救ってくれた救世主である事も。とはいえ簡単に受け入れられるものじゃない。
そこには複雑な感情が混ざり合っていた。――殆どが諦観だったけど。
騒動の一部始終を上階から見守っていたザイルさんと杖をついた初老の男性、ギルド長は苦笑していた。
「ニノ、本当にその子は大丈夫なのか? いきなり襲ってくるとかないよな?」
「フィアーの機嫌が悪いのはいつもの事ですよ。下手に手を出さきゃ噛まれないです……多分」
「ちょっとニノ!! 私を獣なんかと一緒にしないでよ。もうっ!」
「今日はソレをつけているんだね、可愛いよ」
「そんなので誤魔化そうだなんて…………で、でも、あ、ありがと」
そう言ってフィアーが背中を軽く叩いてくる。
僕とフィリスが贈った蝶の髪飾りを身に着けて、視線を気にしながら顔を赤くする。
「……へぇ、意外と可愛いじゃないか。闇精霊も案外話しやすいのかもな」
「昔は敵だったと言われても、どうせ数百年前の出来事なんて俺たちには関係ないしな」
「下手に敵対されるぐらいなら、仲良くした方がいい。ギルド長の御言葉通りだ」
頬を膨らませ僕に抗議するフィアーの姿に、一瞬にして場の空気が緩む。
見た目相応の振る舞いをしていれば、フィアーはただの可愛い女の子。
こうやって少しずつ馴染んでいってくれたら嬉しい。
「ほれ皆の衆、そろそろ自分の役目に戻らんか。もうすぐ中央の子たちがやって来る、みっともない姿を見せるつもりか?」
「はいはい解散解散! 邪魔だ、どけどけ!」
「ちぇっザイルの奴担当だからってやけに張り切りやがって。仕方ねぇ――ニノ、頑張れよ!」
「今度うちの店に来い、旨い飯を食わせてやる」
「あ、ありがとうございます」
ギルド長に諭されこの場に集っていた冒険者たちが帰っていく。
その一人一人に激励の言葉を貰いながら、ギルド長に挨拶をする。
フィアーも珍しくほんの少しだけ頭を下げてすぐに僕の隣にくっついた。
「精霊様は相変わらずニノ少年と仲がよろしいようで、このダブラス、微笑ましく見守っておりましたぞ」
「私は見世物じゃないんだけど……? まぁ貴方には色々と感謝してるから今回は見逃してあげる」
「それはそれは光栄でございます。老骨に鞭を打って事後処理に励んだ甲斐があるというものです」
芝居がかった対応だけど馬鹿にしているものでもなく、孫娘を眺めるような優しい瞳だった。
フィアーが安全に街を出歩けるのも、ギルド長であるダブラスさんが手を回してくれたお陰だ。
三百年前に勃発した人族と魔族の戦争、そこで魔王と共に暴れた闇精霊。
本来なら討伐対象にされてもおかしくなかった彼女の立場を救ってくれたんだ。
その件で感謝するといつも決まって『今の我々に闇精霊様に敵う勇者がおらんのでな』と茶化される。
確かに、下手に精霊様と争うくらいならご機嫌を取る方が楽なんだろうけど。
とはいってもダブラスさんは実際フィアーの事を相当気に入ってるらしい。
今ではフィアーは知る人ぞ知る珍獣みたいな扱いだった。
意外と街中でもその可憐な容姿から人気があるらしく、特にお年寄りに可愛がられている。
いつも誰かに食べ物や玩具を貰っている姿を目撃されていた。本人は不服らしいけど。
「むっ、どうやらたった今、到着したみたいだな。……おおよそ時間通りだ」
「……? ザイルさん、誰か来るんですか?」
返事を聞く前に、四人の男女が堂々とした面構えでギルドの玄関口を潜ってきた。
場違いなほどに煌びやかな装飾で彩られた装備を身に付け、周囲の好奇な視線をものともしていない。
全員、僕より少し年上くらいの若い冒険者たちだった。
「アウバストより参りました、ユニオン《風炎》のリーダーを務めていますケイシア・フレースです。本日はこちらで中級試験を行うとの事で、何卒よろしくお願いいたします!」
「これはこれはご丁寧に、我々も若くして優秀な君たちを心から歓迎しておるよ」
先頭に立った女性が会釈を返してダブラスさんと会話している。
話を聞く限り彼女たちも下級冒険者なんだろう、装備だけ見れば下級とは思えないけど。
「ところでザイルさん質問なんですけど、ユニオンって何ですか?」
「ん? あぁニノは知らなかったのか。アウバストを有する中央大陸はうちとは都市の規模も冒険者の数も違うからな、個人単位では管理しきれないんでユニオンというグループ単位で登録を行っているんだ」
「えっと、つまりあの人たちは四人で一人って事なんですね。一人ぼっちには辛そうだ……」
「一応、個人でも受け入れてはいるらしいが、届けられる依頼がユニオン前提で組まれてあるんで推奨はされていないみたいだな。んで、中央であぶれてしまった連中を受け入れるのがうちのような田舎って訳よ」
「な、なるほど……」
意外な事実を知って納得してしまった。
今日まで僕が依頼で組んできた冒険者たちは、個々の主張が激しく連携が取り辛い人が多かった。
その中には中央のユニオン制度に馴染めなかった人もいたんだろう。
つまりポートセルトは個人主義のギルドみたいなものだ。
案外、僕は中央のギルドの方が向いているのかもしれない。
「もしかして貴方が精霊術師のニノ・アーティスさんでしょうか?」
「あ、はい。そうです!」
ギルド長との話も終わり、ケイシアさんが優雅な足取りで僕の前に立つ。
少し見上げるくらいの背丈で、宝石みたいに輝く翠髪を一つに結んでいる。
軽く自己紹介したところ、どうやら彼女は僕より歳が二つ上との事で。
物腰の柔らかい落ち着いた雰囲気で、年下の僕に対しても敬語で接してくれている。
自称で僕の姉を語るフィリスと違って、何もかも本物のオーラを放つ年上のお姉さんだった。
「お噂はかねがねギルド長から伺っております。貴方のような才能溢れる方と共に試験に挑める事を、大変嬉しく、そして心強く感じています。冒険者という立場上、歳も身分もありません。気軽にケイシアと呼んでくださいね」
「こちらこそ、僕の事もニノで結構です。お互いに頑張りましょうね、ケイシアさん!」
「ええ、よろしくお願いします。ニノさん!」
差し出された手を握り返す。
女性のものにしては少し固い、厳しい修行を積んできた剣士の手のひらだった。
気品のある見た目とは裏腹に努力家なんだと察した。今までにないタイプの人だ。
リーダーであるケイシアさんと簡単に挨拶を交わすと、残りの三人もそれに続く。
「君があのグランゴーレムを召喚したんだって!? 俺たちより年下だっていうのに凄いよなぁ」
「今後ともよろしく! ニノさんとケイシアがいれば試験も楽勝で終わりそうだね!」
「はわぁ、噂通りの優しそうな人で良かったぁ……!」
「みなさん、落ち着いて。ニノさんに失礼ですよ! 本当、騒がしくてごめんなさい……!」
「全然、気にしてませんよ!」
過去、ここまで手放しで褒められた事があっただろうか?
今までパーティを組んできた面々を思い返すと対応に天と地の差がある。
このメンバーならきっと今度こそ、一人置いて行かれるような事はないと思う。うん。
「互いに紹介も済んだようだし、そろそろ本題に移ろうか」
ザイルさんが手にしていた資料を全員に配っていく。
そこには今回の試験内容がびっしりと書き込まれていた。
「既に周知の者もいるだろうが、中級試験の内容はこの辺りで悪事を働いている盗賊団の鎮圧になる。これまで君たち下級冒険者に回されていた魔物退治と違い、これからは本格的な対人戦闘も要求される。相手は我々と同じ人であり、その危険度は計り知れない。だがこれは中級冒険者となる為には必ず乗り越えなければならない壁だ。もちろん無理だと感じたら棄権してもらっても構わない。自分の力量を弁えるのも冒険者として必要な素質だからな」
ザイルさんの話を聞き《風炎》のメンバーに緊張が走る。
唾を飲み込む音、手足が震えだす人もいた。まだ説明段階なのに気が早い。
多分、訓練以外で初めて経験する対人戦なんだろう。
下級冒険者はフィリスみたいな規格外の実力者を除いて、人が相手の依頼は基本的に回されない。
求められる能力があまりに複雑で高すぎるからだ。同じ実力帯の魔物を相手取るのとでは訳が違う。
相手は知恵を働かせ多種多様な戦略を取ってくる。戦闘の最中何が起きてもおかしくない。
これまで培ってきた経験と総合力が求められる難しい依頼だ。
何より同族に剣を向ける、向けられる覚悟が必要になってくる。
「ザイルさん、盗賊団の規模は?」
「事前の報告によれば六人程度の小さな集団だ。どうやら隣の大陸からこちらに移り住んできたらしい、そこには冒険者崩れも何人か報告されている」
「冒険者崩れ……ですか。相手は実力者、厳しい戦いになりそうですね……」
「面は割れていて全員が下級クラスだ。君たちが普段通りの力を発揮すれば余裕を持って戦えるはずだぞ?」
「「「「…………」」」」
「何だ何だ。ニノ以外ガッチガチじゃないか、今からそんなんでどうする。あんまり心配させるなよ」
僕は既に何度か乗り越えてきた道なので、こうして平常心でいられる。
中央の人たちはこういった経験が皆無らしい。そもそも盗賊退治は本来、国を守る騎士の仕事だ。
ポートセルトのような、冒険者たちが率先して土地の治安を維持している場所はそうそうない。
そういった意味で中級試験の会場にこの場所が選ばれたのも納得がいく。
本格的な対人戦闘を経験するには、治安が良すぎる中央では不向きなんだろう。
それが悪い事だとは思わないけど。僕たちは庇護される側ではなく庇護する側なんだ。
真剣に依頼概要を読み込んでいると隣から声を掛けられた。
「ニノさんは緊張なされないのでしょうか? 私たちと同じ下級とは思えないほど落ち着いていられますが……」
こっそりと自分は震えが止まらないのだと教えてくれるケイシアさん。
こういう時に仲間として気の利いた言葉をかけてあげたいけど、なかなか難しい。
昔の自分はどうしていたのか思い出せない。多分、彼女と同じだったはずなんだけど。
「多少は緊張していますよ。でも、うーん。こういうのはやっぱり慣れなのかな? 最近は強敵とばかり戦ってきたから。それを考えたら、ちょっと拍子抜けかもしれないですかね」
「……その歳でもう多くの経験を積まれていらっしゃるのですね」
僕の周りにはフィリスやアーダンといった才能溢れる同期の存在がある。
レイドやミスティといった中級冒険者との実戦経験も、つい最近は光の精霊とも戦った。
カーレンさんやアーシェさんの戦いぶりも間近で見てきた。フィアーにトルの頑張りだってそうだ。
今更下級クラスの盗賊を相手に出されても、どうしても見劣りしてしまう部分があった。
聞くところでは僕の中級試験は免除すべきではないかという声もギルド内では多少あったらしい。
仮にも街を救った英雄なのだからそれに見合った身分は必要だと、下級では箔が付かないと。
だけどその話はギルド長によって白紙になったと伺っている。
もしかしたら今回の試験、僕の本当の役割は彼女たちのサポートなのかもしれない。
ケイシアさんたちは同じ冒険者とはいえ、他所から託された大切な客人だ。
万が一があればギルドの信用に傷が付く、その安全策として組み込まれたような気がする。
「とにかく、今回のパーティのリーダーはニノだ。よろしく頼むぞ」
ザイルさんから転移石が入った袋を受け取る。
中を確認すると、それは仄かに温かい、中心が深藍色に輝く魔力が込められた透明な鉱石だった。
貴重品なので袋に閉じてしっかりと管理しておく。これもリーダーの大事な役目だ。
「やぁニノ君。今から出るのかい? リーダーに抜擢されるだなんてやるじゃないか」
「やっほー、やけにギルドが騒がしいと思ったら今から中級試験なのね。はぁー懐かしいわね」
突然現れた二人の姿に周囲が騒然となる。
超級冒険者とそれに近しい立場の上級冒険者だ、ギルドでも彼らを目標としている人も多いはず。
《風炎》のメンバーも目を見開かせていた。
「カーレン・ロスター……どうして貴方が……!」
その中でケイシアさんだけは反応が違った。
会いたくもない人物に出会ってしまったかのような、苦々しい顔つき。
カーレンさんもその存在に気付いて表情を変える。僕が見たことがない厳しい顔だ。
「そこにいるのはケイシアか? ……そうか、中央から何人か派遣されると聞いていたが――まだ君は諦めていなかったのか」
「……何度でも言います。私は諦めません。必ず貴方を……そして兄上を越えてみせます……!」
「……無理だと思うがな。君には才能がない。大人しく剣を置いた方が身の為だ」
剣呑な雰囲気に包まれ、辺りが一転して静まり返る。
バッサリと言葉で切り捨てられたケイシアさんは、声を震わせながら反論する。
「どうして……! 私の事を深く知りもしないで、勝手な事を……!」
「……知っているさ。親族が《八剣神》の一人だからといって君まで強くなったと勘違いしているんじゃないか?」
「違います! 私は自分の力でここまで登り詰めました。今回の試験にだって必ず合格してみせます!」
「中級試験程度ならニノ君一人の力だけでも簡単に超えられるだろうさ。だけどそれが必ずしも君の実力に繋がるとは限らない。己惚れて取り返しのつかない事態を招く前にさっさとこの場を去るべきだ」
「カーレン、ちょっと言い過ぎじゃない? ケイシアちゃんだって昔から頑張って――」
「こういうのはハッキリと伝えるべきなんだよ。ギルドは冒険者に対して良くも悪くも無関心で利己的だ。犠牲者が出ようとも依頼さえこなせばそれでよしと考えている、不幸な事故だったと。……誰かが言ってやらないと無駄に墓標を増やすだけだ」
「ま、まぁ仕事である以上そういう面も確かにあるがな……だがあまり後輩を虐めてやらんでやってくれよ?」
激しく言い争う両者にザイルさんも圧倒されていた。
光の精霊との戦いでもカーレンさんはここまで厳しい表情を見せていなかった。
余程彼女の事が気に入らないのか、それとも……その逆か。
「わ、私は……今日まで必死に剣を握ってきました。貴方の中の古いイメージで語らないでください!」
「ほう、それじゃ今ここで俺に見せてみろ。証明できるのか?」
「望むところです!!」
ケイシアさんは手が赤く滲むほど強く拳を握り、そして言い切った。
「何よ! 超級冒険者か何だか知らないけど、私たちを馬鹿にしないでよ!!」
「そうだ! 俺たちだってギルドに推薦されてここに来たんだ!!」
「……ですです」
「はぁ……仕方がないな」
後ろの三人も彼女を庇い声を荒げる。
カーレンさんは深い溜め息を付いて僕に顔を向けた。
「ニノ君、悪いけどこの子たち四人をまとめて相手してもらえるかな?」
「か、構いませんけど……」
「なっ……挑むのは私だけで――」
「君一人で彼に敵う訳がないだろ!! 相手の実力を推し量る事もできないのか!?」
「っ……! わ、わかりました……」
悔しそうに唇を噛みしめながら、ケイシアさんは僕の前で頭を下げた。
「ニノさん、私と――私たちと真剣に勝負してください」
◇
「どうした? 数の上では有利を取っているんだぞ。突っ立ているだけか?」
「……集中しているんです、貴方は黙っていてください!」
超級冒険者であるカーレンさんの手前、緊張しているのか四人の動作がぎこちない。
ギルド前にある開けた広場の中央、僕は囲いの中心に立ち、大きく隙を晒している。
出方を伺って誘ってみるも、慎重なのか中々攻めて来てくれない。
そのまま膠着した状態が十分は続いている。野次馬の人たちも退屈そうに眺めていた。
「いつでもどうぞ。遠慮なく打ち込んで来てください」
悔しがっていた彼女には悪いけど、これはいい機会をもらえたと思う。
現状の戦力を確認する上でも、こうやって手合わせをするのが一番手っ取り早い。
わざわざギルド長に私闘の許可を求める手間も省けたし。
「……はぁ、私が出る幕もなさそうね。どいつもこいつも雑魚ばかり――そこの偉そうな人族は加わるつもりはないの? お前なら多少は持つでしょうし」
「君の相手はいくら俺でもお断りだよ。俺は勝てない勝負はしない主義なんだ」
「男らしくない。ヘタレね……」
フィアーが暇潰しにカーレンさんを挑発していた。相変わらず仲が悪い。
と、見知らぬ少女に雑魚扱いされたのが気に障ったのか《風炎》の一人が斬りかかってきた。
「うおおおおおおおお!」
「……?」
一歩後ろに下がる。
それだけで気合が入りすぎた斬撃が宙を斬る。
続けざまにもう一人が、それも一歩横にズレて躱す。
「当たらない!? どうして!?」
「個々に動いては駄目です。相手は格上、足元と手元の動きで剣筋が読まれている。攻める時は連携を取って目を動かす暇も与えずかく乱するの!」
ケイシアさんは的確に指示を出しながら距離を詰めてくる。
ユニオンのリーダーだけあって、実力は四人の中で一番高いらしい。
彼女の周りには魔力の渦、風属性の力が放たれる。
四人が息を合わせてテンポをずらしながら剣を振るっていく。
「よっ!」
「なっ!? 防がれた!?」
最初の一撃を義手で抑えて軌道をずらす。
「甘い!」
「んなっ、その姿勢で防ぐのか!?」
二人目の斬撃に一人目の剣を合わせて妨害、身体を横に動かし完全に射程から切り抜ける。
「えっ!? きゃっ!!」
三人目の手元目がけて石を投げる。
手放された剣が回転しながら壁に突き刺さる。
「そんな! これでも駄目なの!?」
ケイシアさんの渾身の疾風の刺突。
それも――見てから躱せる。いや、実際はそこそこの剣速はある。
彼女の扱う武器は突きを得意とした細身の剣であり、初速もあって隙も少ない。
ただ惜しいのは、彼女の性格と似た素直で真っ直ぐな剣筋であり。
それは貴族が学ぶ王宮剣術みたいなもので、実戦での実用性はなく見世物に近い。
どれだけ素早い動きであろうと、単調で予備動作が見えていては効果は薄く。
普段から獣のように本能的に立ち回る人たちを相手にしている身としては与しやすい。
フェイントも混ぜてくるけど、その部分だけ剣にブレがあってわかりやすい。
人を騙すのが苦手で無意識に抑えているのか、試しにこちらから引っかかるフリをしてみる。
「今っ!」
「残念だけど……今のが本当のフェイントだよ」
「えっ!? きゃっ!!」
足を前に出す。
飛び込んで来たケイシアさんが、可愛らしい悲鳴と共に躓いて地面を転がった。
「よそ見したら駄目だよ! すぐにカバーに入らないと、仲間を見殺しにしちゃうよ?」
「うわぁ!? い、いつの間に!!」
「ひゃああああああ!?」
唖然として倒れるリーダーを見ていた二人を鋼糸で拘束する。
トルに教えてもらった捕縛術だ。怪我をしない程度に緩く縛りあげる。
「あ、あぁ……わ、私一人じゃ無理です……! 降参です!」
残りの一人は追い詰められると手を上げて諦めてしまった。武器は壁に刺さったままだった。
呆気ない幕引きに観戦者たちの溜め息がこちらにまで届いてきた。
「そ、そんな……四人がかりでも手も足も出なかった。同じランクでもここまで差があるというのですか……!」
「これで理解しただろう? 君たちがやっているのはただのお遊びだ。……荷物をまとめた方がいい」
カーレンさんが言葉によってトドメを刺そうとしている。
全員倒れ込み落ち込んで顔を上げようともしない。流石に可哀想になってきた。
「あの、カーレンさん」
「……どうしたんだいニノ君?」
「彼らに才能がないと決めつけるのは、少し早計ではないでしょうか?」
「…………ニノ……さん?」
「今回はただ相性が悪かっただけだと思います。僕は守り主体で戦っていますしその分多くの型を見てきました、対策が取れて当然です。これがただの盗賊相手なら決して劣る事はなかったはずです」
これは試合を通しての率直な感想だ。
単純に僕と彼女たちとでは踏んできた場数が違うだけで、実力は下級クラスを超えていると思う。
きっと真面目に訓練に取り組んできたんだろう、その分癖がわかりやすいけどそれは必ずしも悪い事じゃない。
欠点をカバーし合う為にユニオンの仲間がいる訳だし、戦い方なんて幾らでも変えようはある。
冒険者よりは騎士に向いている気がするけど、カーレンさんが言うほど才能がないとは思えない。
「僕だって元々は何の取り柄もなかった。ただ運よくノート様――大地の精霊様と繋がる事ができたからこの場所にいるんです。きっとケイシアさんたちだってこれからもっと強くなれます!」
「君は心優しいからな、そうやって彼女を庇うだろうと思っていたよ。……だからこそつまらない事に手を煩わせたくなかったんだが」
「ロスターさん、悪いですがここは手を引いてもらえますか? いくら超級冒険者だろうと、一度定まったギルドの方針に外野から口を出されるのも困るんですよ」
「そうかい、まぁこれ以上は俺も無理は言わないさ。ニノ君、試験頑張ってな」
手を上げてギルドを後にするカーレンさん。
どうやら本当に僕を応援する為だけに来てくれたらしい。
「ご、ごめんなさいね。カーレンも悪気があった訳じゃないの。私たちも長い間この仕事をやっているから色々あってね……。特にケイシアちゃんは旧友の大切な妹さんだから」
アーシェさんは手を合わせて申し訳なさそうに謝ると最後に僕の耳元で囁く。
「だからニノ君、悪いけど試験の間この子たちの事を頼むわね。何だかんだ言ってアイツもただ心配なだけなのよ……本当素直じゃないわよね?」
「わかりました。それにしてもアーシェさんも大変ですね……」
「わかる? ……本当困った幼馴染なんだから」
アーシェさんも手を振りながら去っていく。それに合わせて散り散りになっていく野次馬たち。
僕は座り込んでいたケイシアさんたちに手を差し伸べる。元々頼まれなくてもサポートはするつもりだった。
だけど今回の件でより一層、個人的に応援したくなった。
「試験に合格してカーレンさんを見返してやりましょう! 僕にできる事があれば何だって協力しますよ!」
「ニノさん……。あ、ありがとうございます……!」
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