闇精霊に好かれた精霊術師(旧題:ダンジョン最下層でパーティに見捨てられた精霊術師の少年、闇精霊に気に入られ最強の精霊使いになる。)

お茶っ葉

文字の大きさ
47 / 56
三章

52話 過去を乗り越えて

しおりを挟む
 ――越えられない壁があった。
 熱された砂塵に吹かれて目の前が霞んでいる。
 対峙した相手は無傷のまま埃を払い、こちらを見下ろしていた。

「この程度で終わりかよ。こちとら世界で唯一の大地の精霊術師と聞いて期待していたのによぉ。動きはてんで素人だし亀みてぇにおせぇ。お得意の守りってのも大した事ねぇしよ。……くだらねぇ」

 フレアは唾を吐き捨て地面を蹴り砂を被せてくる。
 目と口に入って咽る僕を見て初めて腹を抱えて愉快そうに笑う。

「……つまらない男だ。今回の収穫はフィリスだけか、時間を無駄にした」

 試合の結果をドリンが冷めた瞳で見ていた。
 期待外れ。精霊術師失格。土属性はやはりこの程度なのか。
 周囲の反応も散々だった。悔しさのあまり身が引き裂かれそうになる。

「あぁん? 何だその目つきは。もう一発喰らうか?」

 フレアが拳を振り上げて挑発する。
 それでも負けを認めず睨み続ける。今できる精一杯の抵抗だった。

「チッ……生意気な野郎だ!」
「ぐっ……」

 火属性の一撃を両腕で受ける。
 その反動を利用して転がるように立ち上がる。
 息を吐きながら脳内で模索する、相打ちでもいい。
 悪い流れを変えないと、僕に力を貸してくれているノート様まで馬鹿にされてしまう。

「フレア君もう止めてよ! これ以上はニノ君が死んじゃう!」
「フィリスは邪魔すんじゃねぇ。コイツが負けを認めねぇからこうなってるんだろうが!!」
「……止めないで。僕にだって意地があるんだ!!」

 口元の血を拭い隙を見て殴りかかる。
 フレアはこちらを見向きもせず軽くいなし、横っ腹を蹴りつけてきた。
 世界が傾き無様に地面を転がる。空気と共に胃の中のものまで吐き出しそうになる。
 
「……見苦しいぞ。お前のその行動が大地の精霊の威信を失墜させていると何故気付けない」
「一発でも……届かせないと……僕は……強くなるんだ……!」
「ああああああ、鬱陶しい。なら、お望み通り殺してやるよおおおおお!!」
 
 フレアの全身から燃え盛るオーラが発現される。
 先程の試合でも見せていなかった全力。まともに喰らえば灰すら残らないかもしれない。
 火の精霊術師はいとも容易く山を吹き飛ばすとされている。
 
「身の程を弁えなかった事を、地獄で後悔するんだなあああああ!!」
「いけない! 水よ――彼の怒りを抑え込んで」
 
 間を挟み込むように水盾アクアシールドが灼熱の炎を遮る。
 更に水の属性力が働き、雨が炎の余波による惨事を防いでくれる。
 僕の目の前に現れた大人の女性は、眼鏡を押さえながらフレアを叱りつける。 

「今のはいけません。本気で彼の命を奪おうとしましたね? 精霊術師はただ闇雲に力を振るえば魔族と変わらない。力を持つ者はそれだけの責任が伴う。私は何度も教えてきたつもりですが、どうやら……わかってもらえていなかったようですね」
「……ルーミア先生見ていたんですね。でも、元はと言えばコイツが……!!」

 フレアはばつが悪そうに言い繕う。庇おうとする人はいなかった。
 みんな知らない振りをしている。先生に怒られるのが嫌だから。

「ニノ君は新入生でそれに貴方より三つも年下なんですよ? 年長者として恥ずかしくない振る舞いをしてください」
「……すみません」
「うわ、怒られてる。ダサッ!」
「んなっ、新入生の力を試すって最初に言い出したのはドリン、てめぇだろうが!!」
「私は弱者の口車に乗せられて本気を出したりはしない。――あっ」
「……フレア、ドリン。あとでじっくりとお話しましょう」
「……了解です」「わかりました」

 ルーミア先生に叱られて大人しく身を引く二人。
 野次馬たちも散りぢりになって、それから観戦していたフィリスが駆け寄ってくる。

「ニノ君大丈夫? 手を貸すよ!」
「……平気だよ。丈夫なのが取り柄だから」
「駄目だよ、怪我しているんだから!」
「イタイイタイイタイ、フィリスに押さえつけられるのが一番痛いって! 放してよ!!」
「やーーーだーーー!」
「二人とも本当に仲良しさんなんですね」

 先生は苦笑しながら傷口に薬を塗ってくれる。 
 その間、フィリスが逃げないように僕の腕をずっと掴んでいた。


 ――――――――――――――――

 ――――――――――――

 ―――――――――



 中央大陸にある小さな町に精霊会という集まりがあった。
 その存在の希少性と、類稀な能力から悪意や不幸に見舞われる事が多かった精霊術師を保護、育成を主として四人の有志たちによって設立された会だ。国からの正式な依頼でもあったらしい。
 僕たちが参加した時には既にルーミア先生一人になっていて、生徒の数も十にも満たなかったけど。

 ルーミア先生は水の精霊術師だった。
 同じ属性を扱う縁からフィリスの両親に連絡が入り、紹介される事になった。
 
 パスタル村から遠く離れた土地。多少の援助が出るとはいえ滞在費も馬鹿にならない。
 一ヵ月という限られた期間の中で僕たちは精霊術師としての基礎を先生から学ぶ。

 その過程で出会ったのがフレアとドリンだった。
 元々僕にとって精霊術師とは父さんだった。父さんが全ての基準になっていた。
 現役を退いてもそれなりに戦っていたし、傍で見ていた僕も動けるつもりでいた。
 
 でも……知らなかったんだ。
 実戦訓練を積んだ精霊術師の、本物の実力というものを。

「手も足も出なかった……。僕の力がまるで通用しなかった……」
「ニノ君も頑張ったよ! 相手は小さい頃から訓練を積んだ年上の男の子なんだから仕方ないよ!」
「でもフィリスはフレアには勝ってたよね? それも一方的に。力負けしていなかった」 
「あはは……属性の相性じゃないかな? ドリンちゃんには負けちゃったし」

 フィリスは困ったような顔をしていた。
 当時は彼女が鬼人だって記憶を失っていたから。
 僕よりあとに精霊術師になったのに、実力者たちから一目置かれている。
 そんなフィリスが羨ましくて仕方がなかった。

 フレアは、物心ついた時から冒険者を志していたらしい。
 火属性は瞬間的な威力では雷属性に劣るけど、継戦能力に優れ時間と共にその火力を増していく。
 ただ守っているだけではいずれ打ち砕かれてしまう。土属性の堅牢さも無意味と化す。

 ドリンは精霊会最強の実力の持ち主で、ルーミア先生も手を焼かされていた。
 土属性の派生から生まれた樹属性は、妨害に優れこちらの動きを制限してくる。
 正面からは満足に戦えず、鬼人の強さを誇るフィリスですら負けてしまった。 

 同じ精霊術師でも天と地の差がある。
 実力を付ける為に参加したはずなのに、絶望だけが重く圧し掛かっていた。
 初日から手痛い洗礼を受けた僕はそれ以降、彼らの訓練についていけなくなった。

 自信を失くしてしまったんだ。初めて経験する挫折だった。
 先生はそれでも見捨てずに最低限の訓練はつけてくれたけど。

 結局、村に戻るまでの一ヵ月。僕はフィリスの背中に隠れる事しかできなかった。
 他の精霊術師たちにも馬鹿にされていたと思う。当時の悔しさは身体の芯まで染みついていて。
 思い出さないようにしていても、いつしか声を聞いただけで反応するようになっていた。

 そして今――この場に成長した二人が立っている。


「よぉ、久しぶりだな?」
「……そうだね」
「俺の姿を見てビビったんじゃねぇのか? また殴られるって震えてんじゃねぇのか?」
「……そうかもね」
「チッ」

 軽い脅しにも屈する事なく平常心を保ったつもりだった。けど内心は動揺していた。
 油断していた。冒険者を続けていればいずれどこかで再会するとわかっていたはずなのに。 
 ギリギリのところで耐えられたのはみんながいるから。情けない姿を見せたくない一心で取り繕っていた。

「お前たちも出場するのか。これで多少は面白くなる、精霊会の頃からフィリスはそれなりに戦えたからな。元気そうでなによりだ」
「ありがとう。ドリンちゃんにそう言われると自信がつくなぁ~!」
「今のところお前意外に見所のある人物がいないというのが残念だが。中央ならば互角に渡り合える強者に出会えると期待していたのだが」
「相変わらずの自信だね。言っておくけどニノ君だってあれから凄く強くなったんだよ!」
「そうか。だが、今のところ興味はないな」
「酷いっ!」

 ドリンは昔から強者以外にはまったく興味を示さない。
 フレアも彼女には手も足も出ないはずなんだけど、二人はよくつるんでいた。
 火属性と樹属性は相性がいいので、お互い利用し合う関係なんだろうか。

「もしかして二人で参加するの? 一応、上限は十人までなんだけど。不利じゃない?」
「一通り視察していたんだが、上級冒険者のユニオンも見かけたが、それでも二人で十分だからな」
「精霊術師以外が混ざっても邪魔なだけだ。まぁ精霊術師でも愚図はいらねぇけどな?」
「ならお前もいらないぞフレア。足手まといだ」
「うっせ、お前一人じゃまともに申請もできねぇだろうが。誰がユニオンを作ったと思ってやがる」

「言うじゃねぇか……奴ら俺たちに喧嘩を売ってやがる」
「調子に乗った餓鬼共め、教育してやろうか」
「待て、様子を見よう。奴らが本当に精霊術師であれば手を出すのは危険だ」

 ギルド内の冒険者たちから注目を集めていた。
 一部は馬鹿にされたのだと怒りを露わにして喧嘩を買いに来ている。

 このまま長居しても良い事は一つもない。
 というより限界だった。隣を見るとフィアーが拳を握り締め堪えていた。

「落ち着け……私。ここで暴れたら……謹慎どころじゃ済まされない……落ち着くのよ」
「……嫌い」

 フィアーだけじゃない。トルも同じように敵意を向けていた。
 目的も済んでいるんだ、さっさとこの場を離れよう。フィリスも察したのか頷いてくれた。

「……色々と準備もあるから、僕たちはもう宿に戻るとするよ」
「そうだね、どうせ予選でも顔を合わせるだろうし。その時にまたお話ししようよ」
 
 軽く別れの挨拶をしてから背を向けた。
 何事もなく終わって欲しい。そう願いながら歩き出す。
 だけど、そんなささやかな願いすら叶わず。煽るような口ぶりでフレアは”それ”に触れた。

「ところでさっきから気になっていたんだがよぉ。その銀の腕と足はどうしたんだ? ん? もしかして魔物にでも喰われたか? ご自慢の守りとやらも、どうやらまやかしだったみたいだな。自分の身すら満足に守れないで何が強くなるだ。何が大地の精霊術師だ。フンッ、笑えるぜ」
「――――――ッ!!」
 
 不味いと思った。
 今更この義肢に触れられたところで僕はどうとも思わない。
 自分がやりたいようにやった結果だ。その代償は受け止める気概でいた。
 
 ……でも彼女たちは違う。

 突風が起こり床を踏み抜く音がした。
 誰かが叫ぶ声がする。机が壊され、酒が零れ散る。
 大の男たちが焦りながら一斉に後ろに下がる。中心には二人の少女の姿。

「それ以上――――喋るな。そこから先は……血の海に沈む事になるよ?」
「……お前……許さない!!」

 鬼の形相でフィリスがフレアの首元を掴んでいた。床に押し付け強引に捻じ伏せる。
 後ろではトルが精霊魔法の詠唱をしている。限界まで魔力を高め首輪が悲鳴を上げていた。
 どちらの殺気も偽りない本物で、生の感情を剥き出しにしている。

「ま、待て……冗談に決まっているだろ……!」
「冗談でも言って良い事と悪い事があるよ? 戦士の古傷を愚弄して……タダで済むと思うな」
「…………訂正しろ。ニノに……謝れ!!」
「あぁ、悪かった、悪かったから。本気になるなよ……!」

 解放されたフレアは何度も咽ながら僕たちを睨む。
 ドリンが驚きの表情を見せながらフィリスに詰め寄っていた。

「フィリスがマジになるなんて。本当にコイツに惚れていたのか、物好きな女だな」
「それだけじゃない。あの義肢は私たちの命の代償のようなものだから……」
「あはははは、それは仕方がない。フレアが馬鹿野郎なだけか、もっと考えてから物を喋れ」
「チッ、てめぇに言われたかねぇよ。……それにフィリスもフィリスだ。俺は精霊会でもドリンとお前だけは認めていたんだがな、結局はつまらない男に擦り寄るつまらない女に成り下がりやがって……!」
「別に誰と付き合おうと私の勝手だもん。フレア君に言われる筋合いはないから」
「そうだぞ。つまらない男代表が何を言う」
「だからさっきからテメェはうぜぇんだよ!! どっちの味方なんだ!?」

 いきなりの実力行使を受けて興奮したんだろう。フレアはついにフィリスまで馬鹿にし始めた。
 流石にそこまでされて僕も黙ってはいられなかった。
  
「フレア、言っておくけど僕だってそれなりに戦えるようになったんだ。いつまでも昔の栄光に縋るなよ」
「……ほぉ、女の陰に隠れていた癖に言うじゃねか。なら、そのなけなしの自信すら奪い取ってやるよ。おい、そこのギルド職員」
「やれやれ、騒ぐなら外でやって欲しいんだが。一体何の用だ?」

 我関せず隅に潜んでいたザイルさんは面倒臭そうに戻ってきた。

「俺はコイツに決闘を申し込む。今から二日後、大会前の前哨戦だ、さぞかし盛り上がる事だろうよ」
「別に構わないが……。ニノはどうなんだ?」
「お互い観衆の前で手の内を明かす事になるけど、いいの?」
「己惚れんな。お前を潰すのに本気を出す訳ねぇだろ。それとも何だ? 怖いのか?」

「いいぞ、やってやれ!!」
「男だったら逃げるなよ!!」

 精霊術師の実力を間近で見ようと周囲が囃し立ててくる。僕たちが潰し合う事を期待している。
 ここまでの騒ぎになれば、大勢の人たちに顔を覚えられてしまっただろう。
 背中を見せれば、一生後ろ指を差されながら冒険者を続ける羽目になる。
 
「……わかった。二日後だね」
「後悔するなよ?」

 言質を取れて満足したのか。フレアは指を鳴らして奥へと進んでいく。
 ドリンは僕の顔を一瞥して何かを言いたげにしていた、けど最後まで口に出さず後をついていく。
 どちらも根っからの冒険者で戦闘狂だ。弱さは悪であり強さこそが正義。

「逃げるんじゃねーぞ」 
 
 言いたい事だけ言って嵐のように去っていった。
 ギルド側もこういった騒動には慣れているのか、数分もすれば元の状態を取り戻していく。

「ご、ごめんね。やり過ぎたかも。止まらなくなっちゃって」
「……ニノ……ごめんなさい」

 二人は謝っていた。
 気にしてないよとだけ伝えて、ただずっと、影を追うように立ち尽くしていた。
 成り行きでフレアと戦う事になったけど。果たして僕は…………勝てるのだろうか。



 ◇



「何よ! あの精霊術師。大した実力もない癖に偉そうに!! ああぁぁぁムカつく!!」

 宿に戻るなり、フィアーが何度も腕を振りながら怒りをぶちまけている。
 下手に暴れると部屋の備品に傷が付くので、半端な動きになっていたのがちょっと愉快だった。
 
「よく我慢しましたね。あの場で貴方が暴走していれば取り返しの付かなくなるところでした」

 ともかくノート様はそんなフィアーを褒めている。
 
「先に二人が動いていなかったら手を出していたかもしれないわ。というかフィリスがあそこまで怒りを剥き出しにするなんて意外過ぎて、一瞬だけど我を忘れてしまったもの」
「ふぃりすこわかった」
「私だって怒る時は怒るんだよ?」
「……アイツ……嫌い! きらいきらいきらい!!」

 義手に強くしがみつきながら、トルが涙声で感情を高ぶらせていた。
 それだけ心に大きな傷を残してしまっている。やっぱり長居すべきじゃなかった。
 帰りの道中にみんなには大まかな説明はしてある。もちろんあの二人との関係性も多少は。

「それにしてもニノにも苦手な人がいたなんてね。隠していたつもりみたいだけど、少し震えていたでしょ?」
「……気付いていたんだ」
「当たり前でしょ。毎日毎日、どれだけ貴方の事を見ていると思っているのよ」

 発言してから少し恥ずかしそうに咳払いをするフィアー。 

 僕にだって苦手なものはある。極力関わらないようにしていただけで。
 今回はどうしても避けられない状況でぶつかってしまったけど。

「今でも苦手意識はあるよ……最後まで歯が立たずに終わったままだから」
「グランゴーレムも元々はあの二人に勝つ為に編み出した秘策だったもんね」
「あれに頼ろうとするだなんてよっぽど切羽詰まっていたのね……」

 精霊会で一度ペアを組んで、トーナメント形式で試合をした事があった。
 そこで決勝戦であの二人と当たったんだ。僕とフィリスにとっても一度は負けた相手。

 試合当日まで先生から色んな魔術書を借りて、グランゴーレムの術式を研究した。
 土属性と水属性で作り出せる最強の召喚魔法。当時も未完成ながら実戦に投入してみた。
 結果は散々で、発動の隙を与えてもらえるはずもなく一方的に攻められて終わったんだ。

 それに決勝まで勝ち進められたのもフィリスのおかげであって。
 僕は何もできなかった。何もしていなかった。

「あの二人にとって僕は、いつまでも女の子の陰に隠れた弱虫のままなんだよ」
「……ニノは弱くない! トルは知ってるもん!」
「だよねぇ。ニノさんであれだけ罵倒されるなら、私なんて恥ずかしくてこの先冒険者って名乗れないよ」

 騒動の後、宿までついてきたリディアさんも励ましてくれる。

「実際、私から見てもニノ様があの精霊術師に劣っているとは思えませんが」
「まぁそうだな。奴の実力は知らんがお前の強さは本物だと思うぞ。というかそう思わないと、負けた私が納得いかない……!」

 レックさんと珍しくセレーネもそれに賛同していた。

「……違うよ、僕はみんなが思っているほど強くはなかった。弱い人”だった”んだよ」
「……ニノ」

 ノート様は知っていたはずだ。
 僕の事をずっと見守っていたと聞くし。

「フィリスは疑問に思わなかった? 僕が村を出てから三年後に君と再会したけど、当時はまだ認定試験を受けている最中だった。三年もの長い期間があったのにだよ? 順調に進めば中級冒険者になっていてもおかしくなかったのに」
「言われてみれば……もしかしてニノ君も迷子になってたの?」
「そこまで酷い方向音痴じゃないよ……」

 パスタル村からポートセルトまで馬車を使えば三日もあれば辿り着く。
 仮に迷子になったとしても別の街のギルドに申請すれば済む話だ。場所なんて関係ない。

「僕はね。一度、適正検査に落ちているんだよ」
「えっ……嘘……冗談だよね!? ニノさんが!?」
「……? 何それ、そんなのあったかしら?」

 リディアさんは本気で驚いていた。それも無理はない。あってないような検査だし。
 精霊様であるフィアーも、必要ないと免除されたから身に覚えがないんだろう。
 その人物が本当に冒険者としての適性があるか。簡単な身体能力を試すだけ。
 新人の多くが存在すら忘れていそうな、試験ですらないただの検査だ。それに僕は引っ掛かった。
 
 千人が受けて四、五人が振り落とされる程度の内容。冷やかしに来た人を追い返す口実に使われる。
 ハッキリ言ってこんなのに落ちたと公言する人はそういないと思う。

「……甘かったんだよ。そもそも冒険者ってなろうと思ってすぐになれるものじゃない。危険だし、割に合わない仕事だって多い。雇う側だってそれなりのリスクを抱えている。慎重になるものだよ」
「誤解されないように伝えておきますが。今でこそ安定していますがニノは身体が弱く、レムの力があってこその健康体なのです。それこそ昔は波があって、体調を崩す事も多々ありましたから。……運が悪かっただけなのです」

 ノート様が即座に補足してくれる。
 検査当日に体調を崩したのは確かだけど、正常だったとしても受かったかどうかは怪しい。
 元々そこまで本気で冒険者を目指していた訳じゃなかったから。両親の死と精霊術師になったのが決め手で、そこからギルドの門を叩くまでに精霊会があったけど、それでも間の期間が短かった。
 その場の思い付きで行動しているツケが回ったんだ。本当、あの頃は焦ってばかりで。

「どうしてすぐに村に帰ってこなかったの? 三年間もどこに……」
「反対を押し切って村を飛び出したのに戻れる訳ないよ。あちこちの村を渡り歩きながら仕事を手伝う代わりに小屋を借りて、通りかかった冒険者たちに頭を下げて稽古をつけてもらったんだ」
「そ、そうだったんだ……それはそれで凄まじい執念だと思うけど」

 身体と精神を鍛えながら、もう一度検査を受ける為に努力した。
 僕の熱意に応えてくれる人は多かった。冷たくあしらわれる時もあった。
 昔から目だけは良かったから、色んな人の動きや癖を覚えた。知識を蓄えたんだ。
 今の守り中心の戦い方もそういった経験に基づいて生み出されている。
 
 そうして三年後に無事に冒険者として活動できるようになったんだ。

「ノートがもう少ししっかりしていたら、何とかなったように思えるんだけど?」
「……そうかもしれません。私はニノが冒険者になる事を望んでいませんでしたから。ただそのせいで必要のない苦労を掛けさせてしまったのは確かです」

 精霊様に拒絶されれば、精霊術師は実力を発揮できない。
 それでも多少は魔力を引き出せるし、それ以前に自分の力で勝ち取ればいいだけの話。
 単純に力不足だったのをノート様の責任にするつもりはない。

「精霊術師なら無条件で受け入れられるなんて考えは甘えだよ。多分、そんな曖昧な気持ちでやっていたら今頃どこかで野垂れ死んでいた思う。ギルド側の判断は間違っていなかったよ。三年間の修行は無駄じゃなかったって断言できるから」

 今の僕を形作っているのは名も知らぬ多くの冒険者たちだ。
 あとはその三年間と、今日まで積み重ねた歴史がアイツに勝るかどうか。

「三年か……ニノさんでもそれだけの時間をかけて今があるんだね……」
「リディアさん?」
「ううん、何でもないよ。ただ何事も近道なんてないんだなぁって、思っただけだから……」



 ◇



 夜の中庭は人影はなく汗を流すのにはもってこいだった。
 本番まで僅かしかない、少しでも身体を虐めて迷いを振り払う。

 頭の中でフレアの幻影と対峙する。
 相手は訓練を積んだ火の精霊術師。その強さは僕の身体に刻まれている。
 勝てるだろうか、過去の自分が問いかけてくる。お前は本当に強くなれたのかと。

「ここまで不安になるなんて。やっぱり人ってすぐには変われないものだね……」

 今の僕と弱かった僕は地続きだ。そこに大きな隔たりがある訳じゃない。
 一から積み重なってできている、弱いところだって克服できず残されたままだ。
 払拭できない過去と今一度向き合う事がどれほど困難か。フィアーは凄いと思う。

《ニノちゃんは強いよ。あんなのに負けるはずがないよ!》
「どうだろう。勝負の世界に確実なんて言葉はないから」

 レムちゃんが勇気付けてくれる。
 フィリスやウィズリィ様と戦った時も、絶対に敵わないだろうという状況をひっくり返した。
 勝負に確実なんてない。そう考えると今回も当てはまるんだけど僕も随分と弱気になったものだ。
 
《当時は封印されていて声を掛けてあげられなかったけど。ずっと見ていたんだよ》
「……恥ずかしいな。一方的にやられていたし、良いところ一つもなかったでしょ?」
《そんな事ない。ニノちゃんは最後まで逃げなかった、暴力に屈しなかった。君は当時からあの二人に一度も負けていないんだよ!》
「……ははっ、そういう見方もできるんだね」

 僕は全力を出してもあの二人の足元にすら届かなかった。悔しかった。
 何度も倒れた。立ち上がるたびに怪我が増えた。でも途中で投げ出す事だけはしなかった。
 精霊会で過ごした一ヵ月間、村に戻ろうと思えばいつでも戻れたのに。

 庇ってくれたフィリスに申し訳なかったから、気に掛けてくれた先生に悪いと感じたから。 
 それだけじゃない、自分に負けたくないと思ったからだ。歯を喰いしばって耐え続けた。

 ひたすら強さを求めた二人が僕にちょっかいをかけてくる。
 それって彼らも心の奥底では納得ができていなかったのかもしれない。 
 気持ちでは負けていない、か。想いの強さが魔力に直結する術師には大切な心掛けだ。 

「それじゃ次の戦いは初勝利じゃなく。連勝するつもりで挑むべきだね」
《その意気だよ! ……ボクは疲れたから休むね。練習、頑張って》

 言いたい事だけ言ってレムちゃんは眠りについてしまった。
 精神体でも休息は必要らしい。いや、気を遣ってくれたのか。

「どうしました? ノート様」
 
 ずっと背中に感じていた視線の主に呼びかける。
 彼女はその手に汗を拭く布と飲み水を持って僕の隣に立つ。

「見学です。……迷惑でしたか?」
「そんな事ないです。大歓迎ですよ」
「……貴方はまた、戦うのですね」
「成り行きでそうなっちゃいましたね」

 そういえば、謹慎があったから僕が本格的に戦うのは久しぶりだ。
 その最初の相手が精霊術師のフレアなのは……まぁ心配は掛けてしまうのも当然か。

「代われるものなら私が代わりたい。遠くから見守る事しかできないだなんて……」
「精霊術師は精霊様の力を借りているんですから。一緒に戦っているようなものですよ?」
「私が貸せる力なんて……ただでさえ戦いに不向きな属性なのに。それに私は本心から貴方を応援できていない……できないのです」
「それは何となく気付いていました。本当は僕に力を貸したくないんだろうなって……」
「怖かった……貴方は力を与えればそれに順応してどこまでも強くなる。いずれ死地に追いやるかもしれない。いえ、既に追い込んでいます。それが自分の責任だというのも自覚しています」

 現存の精霊術師の殆どが、強くなりたいという己の欲求に精霊様が答える形で繋がっている。
 それは消滅しても自己責任だという事だ。望めば望んだだけ命を対価に力を与えてもらえる。

 僕とノート様の関係は違う。
 元は家族のように近しい存在で、偶然が重なって今がある。
 強くなりたいという意思に彼女が反している。それが他の精霊術師との大きな違い。

 両者がぶつかればこちらが劣るのは歴然で……。
 
 ――果たして本当にそうだろうか?

 古から感情には魔力が込められているとされている。想いとは力だ。
 ノート様が僕に授けてくれている土属性の根源にあるのは深い家族愛。
 それが他の精霊様に劣っているとは思えない。一緒に暮らしているからこそ断言できる。

 生きていて欲しい。そう強く願うのだって力に変わるんだ。

 精霊様本人が戦う訳じゃないのだから。得手不得手は関係ない。
 大きな実力差が生まれるのであれば介している精霊術師の問題になる。
 結局は、僕自身が土属性の可能性を心の底から信じ切れていないだけの話で。

 それに気付いた瞬間、とても申し訳ない気持ちになった。

「前にも言いましたけど、僕は後悔していません」
「わかっています。貴方はいつだってそう言ってくれる人です」
「冒険者は弱者は淘汰される世界です。弱いままでは何も為せません」
「そう……ですね」
「僕は黙って消えたりなんかしませんよ?」
「…………!」

 ひんやりとした感触。
 小さな手が背中に触れていた。

「……ごめんなさい。貴方のその言葉を信じたい。でもレイは……!」
「父さんは手遅れだった。無理が利くほど若くなかったし、護らなきゃいけないものも多かった、しがらみが多かった。でもその中で精一杯生きていた。僕はそれに比べたらまだ自由だし、やりようは幾らでもあります。諦めるのは早いです」
「貴方を失ったら私は……きっとこれも自分本意エゴなんです。私は弱くて醜い精霊だから」
「その弱さだって僕は好きですよ? 神様ってよりも人に近くて。それに僕は能力で貴方を見ていない。精霊だから貴方を尊敬しているんじゃないんです。父さんや母さんをずっと支えてくれた、そして今も僕の身を案じてくれている。そんな優しさに惹かれているんです。僕が精霊様が大好きなのは、ノート様の存在があってこそなんですから」

 いつだって傍で見守ってくれている君がいたから。
 僕は立ち止まる事なく前を向いて歩いてこられたんだ。
 
「みんなが協力してくれるんだ、消滅なんて未来は訪れませんよ」

 具体的な方法は見つかっていない。何を根拠に言っているんだと思う。 
 でも弱い者が掴める物なんてたかが知れている、将来的に力は必要になってくる。
 いざその時になって手が届かず後悔するくらいなら、血を吐いてでも強くなってみせる。
 
「僕は過去を乗り越える。弱い自分から生まれ変わる。変わりたいと願って今も戦っている女の子がいるんだ。僕だって負けていられない、その子の前でも恥ずかしくない存在でいたい」
「……ニノ」
「二日後それを証明してみせます。だから、僕を信じて欲しい――ノートお姉ちゃん」
「ズルいです……貴方に、そう呼ばれたら……私は……もう……!」

 頬を赤らめさせてスッと近付いてくる。自然な歩みだった。
 隙間がないくらい身体が密着する。熱が籠っていた。優しく地面に倒される。
 以前のフィアーと同じだ、無意識に本能のままに素直な欲望をぶつけてきている。
 今回ばかりは拒む理由が思い付かない。一瞬、フィリスの拗ねた表情が脳裏に浮かんだ。
 
 そして――

「トルも……協力する!」
「きゃあっ!」

 第三者の介入によって未遂に終わった。

「……ついにその本性を現したわねノート。抜け駆けなんて許さないわよ!」

 同じタイミングで二人が茂みから飛び出してきた。
 一通り見られていたのか、どこか責めるような視線だった。
 
「わ、私は……なんてことを……フィリスさん、ごめんなさい!」

 正気に戻ったノート様は、両手で顔を隠しながら必死に首を振っていた。
 強く拒絶しなかった僕も悪いから、謝る時は一緒に謝ろうと思った。
 
「で、夜中にこっそり練習に励むニノに聞いておきたいんだけど。自信のほどは?」
「ん? 勝つよ。絶対に、確実に。二度と舐めた口を利けなくしてやるから……ね!」

 彼女が好きそうな強い言葉を使って豪語する。
 勝負の世界に確実なんてない。でもそういう気持ちでいなければ勝てるものも勝てなくなる。
 今までだって絶対的な実力の差を気持ち一つで乗り越えてきたのだから。今回もやる事は変わらない。

 それを聞いてフィアーは満足気に頷いた。

「それでこそ私の契約者よ! あの狭い世界に生きている馬鹿野郎に思い知らせてやりなさい!」
「フィアーは仮契約止まりですけどね」
「それでも気持ちだけは誰にも負けてないし!」
「トルも、ノートとフィアに負けてないもん!」
「この先誰が現れようと、私がニノの一番の理解者である事に変わりはありません。赤ん坊の頃からずっと見守ってきたのですから。彼の背中はずっと――私だけの場所です。譲るつもりはありません」
「ズルいわよ!!」「ずるい……!!」

 目の前で誰が一番かで争う三人を眺めていたら、ずっと悩んでいたのが馬鹿らしく思えてきた。
 こんなにも信頼と愛情を注いでもらっているのに、一体何が不満なんだ。何を焦っていたんだ。
 贅沢にもほどがある。身体に力が漲ってきた、最初から難しく考える必要なんてなかった。

「当日は大地の精霊術師として戦うよ。フィアーとトルは僕の勇姿を見守っていて欲しい。勝利をこの手に掴むまで、待っていてくれないかな?」
「……ニノがそう言うなら……いっぱい応援する!」
「はぁ……わかっていたけど。いつも私は見ているだけなのよね、闇属性は肩身が狭いわね」
「その気持ちだけで十分力になってくれているよ。いつも感謝している」
 
 今一度大地の精霊術師としてフレアを越える。
 それができて初めて僕は本当の意味で成長できる気がするんだ。

「せっかくだから本番まで手伝ってあげる。どうせ怪我しても治る便利な身体なんだし」
「うわぁ……フィアーの訓練ってかなりスパルタだよね」
「私も協力します。戦いに使えそうな土属性魔法が幾つかありますし」
「ノートにしては珍しいわね。争い事が苦手な癖に」
「私だって負けていられませんから。受け取った信頼に応えたいと思うのは当然です」
「ふーん。苦手を克服しようとするのは良い心掛けよ」
「……フィア、偉そう」
「うるさいわね! 偶には良いでしょう!?」

 それから場所を移して僕たちは明け方まで訓練に励んだ。 
 そして気が付いたら四人同じベッドの上だった。疲れ果てて眠ってしまったらしい。
 回収したのはフィリスとレックさんで、きっと二人もどこかで見守っていたんだろう。

 つまりノート様が、僕を押し倒した瞬間を大勢に目撃されていた訳で。
 事実を知った彼女はそれから一日中錯乱状態になり。周囲に弄られていた。



 ◇



「逃げずに向かってきた事だけは褒めてやる。その足りない脳に今一度恐怖を刻んでやるからよぉ」
 
 目を開けているのも辛くなるほどの熱風。熱気。
 周囲には何重にも張られた魔法防壁。奥には数え切れないほどの観衆。
 精霊術師同士の戦いだ。万が一に備えて対策は万全に行われている、会場も都市から離されている。
 どうも大会前の催し物の一部として公式に組み込まれたらしく、盛り上がり具合が異常だった。  
 
 耳を塞ぎたくなる雑音の中でも、確かに僕を応援する声が聞こえている。
 最前列で勝利を信じて見守るみんなの姿が。ケイシアさんたち《風炎》のメンバーも見える。
 ノート様は両手を組んでいた。無事に帰ってきて欲しい。ただそれだけを祈っている。
 
「せっかく集まってきてもらったのに残念だが、勝負は一瞬でケリが付く。お前はこの大観衆の前で恥をかいて後悔するんだ。それは冒険者にとって死よりも屈辱だろうな。田舎村に逃げ帰る覚悟はできたか?」
「話は――それだけ?」
「あん?」

 予想していた反応と違ったのか、苛立ちを隠せずにフレアは地面を踏み抜く。
 何故僕はコイツを恐れていたりしたんだろうか。その理由をついには忘れてしまった。
 足の震えはいつしか消え失せてしまい、気持ちは真っ新に落ち着いていた。
 
 心のどこかで弱い自分が言っていたんだ。
 土属性は戦闘向けじゃないから。ノート様が本調子じゃないから。争いが苦手だから。
 だから本領を発揮できないのだと。負けた時の言い訳のように自分に言い聞かせていたんだ。

 そんなの関係がなかった。弱いのはノート様じゃない。
 信じ切れなかった僕自身だ。精神力はそのまま魔力に直結する。  
 彼女の強い想いは、初めから嘘偽りなく僕の方に向いていたのだから。
 
 与えられた力を生かすも殺すも精霊術師次第。
  
 両目で倒すべき敵を見据える。
 自然と笑っていた。今まで以上に土属性の力を彼女の力を自然に、間近に感じる。
 指を動かしそして挑発する。今の僕は誰が相手であろうと負ける気がしない。

「来いよフレア。あの時の僕と同じだと思ったら大火傷するからな?」
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。