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第一章
絢爛豪剣
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絢爛豪剣。
それが大尉の剣に対する率直な感想だった。
仕切り直して刃を交えてからまだ少ししか経っていないが、この剣筋は素直に凄いと思える。
「はぁあああああああああ!」
大尉が舞うように身体を踊らせて、剣を振るう。
普通こんな風に動いていると剣の威力も軽くなるもんなんだけど、大尉は違った。
ガキィイイイイイイン!
体重の乗った重い衝撃が受け止めた刀から伝わってくる。
そこから更にすごいのが速さだ。
一撃来たと思ったらすぐに二撃、三撃と連続で剣が飛んでくる。
動きは美しく、威力は重く。
絢爛豪剣と言うに相応しいと思うね。
さっきは雷が効かなかった事に動揺していたこともあって圧倒できたけど、剣技に集中した大尉には生半可な攻撃は通用しない。
今のところ防戦一方だ。
「どうしたっ! 軍曹! 手を出してこい! それとも臆したかっ!」
荒い息を整えながら大尉が叫ぶ。
挑発は苦手のようだ。
多分、元々素直でまっすぐな人なんだろうな。
うーん、帝国軍人としては理想的な気もするんだけど、何でこんな人が他の兵達を巻き込むような真似をしたんだ?
「隙ありっ!」
おっと、危ない!
大尉の身体を駒のように回しながらの薙ぎ払いが俺の頬に一筋の傷をつけた。
本当に一瞬の隙だったのに、そこを突いてくる辺りが大尉の実力を物語っているね。
さて、どうしたもんかな。
ここは攻勢に出るべきなんだろうか?
正直なところ、大尉を剣で負かす事は出来る。
剣を弾き飛ばすか、腕を斬り落とすか、それは時間をかければ出来ると思う。
だけど、この大尉の事だ。
剣を飛ばされたら無手でもかかってくるだろうし、腕を斬り落とされたら脚で、四肢を落とせば這ってでも襲ってきそうだ。
いくら中将が止めても大尉は最後まで戦うだろう。
剣を交えているとそういった事がわかるんだよなぁ。
そうなると、命をとる事になる。
はっきり言って嫌だ。
同じ帝国軍人で、別に敵対しているわけでもない。
そんな人の命をとる気なんかさらさら無い。
せめて仕切り直す前に中将と勝敗方法でも決めておけばよかったんだが、大尉が対峙して剣を抜いた瞬間に向かってきたからな。
そこからは絶え間ない連撃で話をする間もありゃしない。
距離を取ろうとすれば間髪入れずに距離を詰めてくるし、長剣の間合いから出さないようにしているな。
どうあっても俺を仕留める覚悟だろう。
うーん、困った。
「アリシアちゃん! 頑張ってぇええええ! ……軍曹も頑張れぇ……」
少尉の声援が飛んでくる。
微かに俺への声援も混じってたような気がするが、気のせいだろうな。
「アリシア! そこだっ! もっと踏み込まんかぁ! もっと気合を入れろ! 勝ったら秘蔵のブランデーを飲ませてやるぞ!」
クールビューティーだと思っていた中将が意外にも熱くなっている。
それにしても酒で釣るとは意外だな。
大尉はお酒が好きなのか?
「軍曹っ! 貴官も気合を入れろ! 大尉を傷つけるのが嫌なら圧倒的な実力の差でも見せつけてやらんかぁ!」
っ! なるほど。
さすがは男爵、良いことを言う。
身体ではなく、心を負かせてしまえばいいんだ。
って、それってどうすればいいんだ?
「面白い! 圧倒的な実力の差とやらを見せてみろ! 見せる実力があるならなっ!」
大尉の攻撃は一層激しさを増していく。
凄い体力だな。
疲れないのか?
それにしても、これだけの剣戟を捌いていると流石に考える時間もない。
一旦、大尉の攻撃を止めよう。
キィィィィィィィィィン!
今までよりも一際高い金属音が響いた。
「なっ! ば、馬鹿な……こ、こんな事が……」
「うぇえええええ! う、うそぉおおおお……あんなのあり得ないよぉ……」
「くっ! ……」
「な、なんと……これ程の実力とは、まさか切先で切先を止めるとは……」
周りから驚いた声が上がったけど、どうしたんだ?
俺は大尉の剣と俺の刀の切先を合わせて突きを止めただけだ。
点と点を合わせるようにって親父から教わった単純な剣技だけど、何に驚いてるんだ?
「く、くそ……」
大尉が攻めあぐねているようだ。
この隙にどうしたらいいか考えるとしよう。
「ア、アリシアちゃん! そのまま力ずくで押し切っちゃえ!」
「駄目だ、少尉。今は切先同士で絶妙なバランスを取っているのだ。もし、大尉が強引に突けば、その瞬間に軍曹は刀を逸らせて逆に撃ち込んでくるぞ!」
「更に言うなら退くことも出来ん。大尉が引けば軍曹がそのまま刀を突き出してくるだけだからな。だが、それはお互い様のはずだ。つまり膠着状態というわけだ」
やれやれ、少尉も中将も男爵も横からごちゃごちゃ言わないで欲しいなぁ。
考えがまとまらないじゃないか。
それに男爵には悪いけど膠着状態じゃないよ。
俺はいつでも斬り込める。
ただ、大尉にどうやって圧倒的な実力の差を見せればいいのかわからないから手を出さないだけだ。
「ぐ、軍曹……」
「はい? なんですか、大尉」
急に大尉が話しかけてきた。
おや? 随分と汗をかいているな。
それに息づかいも荒いし、一体どうしたんだ?
「この勝負……くっ! わ、私の負けだ……」
「は? えっ? なんで?」
急に敗北宣言?
どういうつもりだ?
それが大尉の剣に対する率直な感想だった。
仕切り直して刃を交えてからまだ少ししか経っていないが、この剣筋は素直に凄いと思える。
「はぁあああああああああ!」
大尉が舞うように身体を踊らせて、剣を振るう。
普通こんな風に動いていると剣の威力も軽くなるもんなんだけど、大尉は違った。
ガキィイイイイイイン!
体重の乗った重い衝撃が受け止めた刀から伝わってくる。
そこから更にすごいのが速さだ。
一撃来たと思ったらすぐに二撃、三撃と連続で剣が飛んでくる。
動きは美しく、威力は重く。
絢爛豪剣と言うに相応しいと思うね。
さっきは雷が効かなかった事に動揺していたこともあって圧倒できたけど、剣技に集中した大尉には生半可な攻撃は通用しない。
今のところ防戦一方だ。
「どうしたっ! 軍曹! 手を出してこい! それとも臆したかっ!」
荒い息を整えながら大尉が叫ぶ。
挑発は苦手のようだ。
多分、元々素直でまっすぐな人なんだろうな。
うーん、帝国軍人としては理想的な気もするんだけど、何でこんな人が他の兵達を巻き込むような真似をしたんだ?
「隙ありっ!」
おっと、危ない!
大尉の身体を駒のように回しながらの薙ぎ払いが俺の頬に一筋の傷をつけた。
本当に一瞬の隙だったのに、そこを突いてくる辺りが大尉の実力を物語っているね。
さて、どうしたもんかな。
ここは攻勢に出るべきなんだろうか?
正直なところ、大尉を剣で負かす事は出来る。
剣を弾き飛ばすか、腕を斬り落とすか、それは時間をかければ出来ると思う。
だけど、この大尉の事だ。
剣を飛ばされたら無手でもかかってくるだろうし、腕を斬り落とされたら脚で、四肢を落とせば這ってでも襲ってきそうだ。
いくら中将が止めても大尉は最後まで戦うだろう。
剣を交えているとそういった事がわかるんだよなぁ。
そうなると、命をとる事になる。
はっきり言って嫌だ。
同じ帝国軍人で、別に敵対しているわけでもない。
そんな人の命をとる気なんかさらさら無い。
せめて仕切り直す前に中将と勝敗方法でも決めておけばよかったんだが、大尉が対峙して剣を抜いた瞬間に向かってきたからな。
そこからは絶え間ない連撃で話をする間もありゃしない。
距離を取ろうとすれば間髪入れずに距離を詰めてくるし、長剣の間合いから出さないようにしているな。
どうあっても俺を仕留める覚悟だろう。
うーん、困った。
「アリシアちゃん! 頑張ってぇええええ! ……軍曹も頑張れぇ……」
少尉の声援が飛んでくる。
微かに俺への声援も混じってたような気がするが、気のせいだろうな。
「アリシア! そこだっ! もっと踏み込まんかぁ! もっと気合を入れろ! 勝ったら秘蔵のブランデーを飲ませてやるぞ!」
クールビューティーだと思っていた中将が意外にも熱くなっている。
それにしても酒で釣るとは意外だな。
大尉はお酒が好きなのか?
「軍曹っ! 貴官も気合を入れろ! 大尉を傷つけるのが嫌なら圧倒的な実力の差でも見せつけてやらんかぁ!」
っ! なるほど。
さすがは男爵、良いことを言う。
身体ではなく、心を負かせてしまえばいいんだ。
って、それってどうすればいいんだ?
「面白い! 圧倒的な実力の差とやらを見せてみろ! 見せる実力があるならなっ!」
大尉の攻撃は一層激しさを増していく。
凄い体力だな。
疲れないのか?
それにしても、これだけの剣戟を捌いていると流石に考える時間もない。
一旦、大尉の攻撃を止めよう。
キィィィィィィィィィン!
今までよりも一際高い金属音が響いた。
「なっ! ば、馬鹿な……こ、こんな事が……」
「うぇえええええ! う、うそぉおおおお……あんなのあり得ないよぉ……」
「くっ! ……」
「な、なんと……これ程の実力とは、まさか切先で切先を止めるとは……」
周りから驚いた声が上がったけど、どうしたんだ?
俺は大尉の剣と俺の刀の切先を合わせて突きを止めただけだ。
点と点を合わせるようにって親父から教わった単純な剣技だけど、何に驚いてるんだ?
「く、くそ……」
大尉が攻めあぐねているようだ。
この隙にどうしたらいいか考えるとしよう。
「ア、アリシアちゃん! そのまま力ずくで押し切っちゃえ!」
「駄目だ、少尉。今は切先同士で絶妙なバランスを取っているのだ。もし、大尉が強引に突けば、その瞬間に軍曹は刀を逸らせて逆に撃ち込んでくるぞ!」
「更に言うなら退くことも出来ん。大尉が引けば軍曹がそのまま刀を突き出してくるだけだからな。だが、それはお互い様のはずだ。つまり膠着状態というわけだ」
やれやれ、少尉も中将も男爵も横からごちゃごちゃ言わないで欲しいなぁ。
考えがまとまらないじゃないか。
それに男爵には悪いけど膠着状態じゃないよ。
俺はいつでも斬り込める。
ただ、大尉にどうやって圧倒的な実力の差を見せればいいのかわからないから手を出さないだけだ。
「ぐ、軍曹……」
「はい? なんですか、大尉」
急に大尉が話しかけてきた。
おや? 随分と汗をかいているな。
それに息づかいも荒いし、一体どうしたんだ?
「この勝負……くっ! わ、私の負けだ……」
「は? えっ? なんで?」
急に敗北宣言?
どういうつもりだ?
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