食うために軍人になりました【一人称版】

KBT

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第一章

情報収集

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 さて、マルト少尉だったかな?
 やっと大人しくなったし、早いとこ情報を聞き出させてもらうとしよう。

「貴方の任務は? 都に向かっていた理由は? これ以上、余計な事を話すならもう貴官には用はないですよ?」

 脅せば少しは真剣に話すかな? 
 あまり過激な事をすると軍規違反とかってロースター軍曹あたりに怒られそうだけど、舐められたらさっきみたいに喋りまくられそうだからな。

「わ、私はダウスター領軍の偵察のための斥候分隊の一員だ。侯爵軍、帝都中央軍の援軍の情報を掴んだので、分隊から離れて報告に戻ってきたんだ! ほ、本当だ! 信じてくれ!」

 別に嘘だとは思ってないけど。
 しかし、報告ねぇ。

「いきなり貴官1人が戻っても兵士達は斥候の兵だとは信じないのでは?」

「よ、鎧自体が身分証なんだ。胸部に斥候兵用の刻印がされているので、それで身元がわかるんだ!」

「報告は誰に?」

「マックロン男爵様に報告するつもりだった……侯爵軍や中央軍が動いた時は、まっ先に報告せよと命じられていたから……」

 なるほどね。
 それにしても自分が最初って……どうせ1番に逃げるためなんだろうな。
 貴族って弱者には強いけど、強者にはとことん弱いからな。
 さて、もう少し叩いてみたら何か出るかな?

「わかりました。もう用はないです。さよなら」

「ま、ま、ま、ま、ま、ま、待て! 待て待て!」

「他に役立ちそうもないので」

「あ、ある! そ、その荷物の中に指令書と分隊長印の付いた報告書が入ってるんだ! それがあれば男爵邸まで無条件で行ける!」

 あっ、それは有難いな。
 この鎖鎧を俺が着れば潜入できるぞ。

「……いいでしょう。マルト少尉。貴方はこのまま縛ったまま放置します。私が戻って来なければ貴方はここで生を終えることになりますが、なるべく戻れるように努力します」

 そう言って俺は少尉から脱がした鎖鎧を着込んでいく。
 サイズは少し小さいけど、入らない程でもない。

「待ってくれ! せ、潜入する気か? そんなの殺されるに決まっている! せめて俺を解放してからにしてくれ!」

「このままでは死ぬでしょうね。だから貴方にできるのは俺が少しでも生きて戻れる可能性を上げるために全ての情報を話す事だけです」

 結局、少尉は他に有益な情報を持っておらず、泣き言ばかり言うので猿轡を噛ませて眠り薬で眠らせておいた。
 俺が戻らなくても街道沿いなら誰かが見つけてくれるだろう。
 俺は少尉の装備を着て、荷物の中を確認し、私物らしき物は別の袋に入れて少尉の傍らに置いておいた。
 眠っている少尉に敬礼をしたあと、俺は正門に向かった。
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