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第一章
化け物達の侵攻
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ダウスター領軍の最も大きな天幕内では作戦会議が行われていた。
領軍司令官アーベル・フォン・ダウスター男爵。
副司令シャーロット・フォン・ジェニングス中将。
作戦参謀ノイマン・アンダーソン大佐。
後方支援隊長リモン・サイモン上級曹長。
部隊長アリシア・フォン・ヴォルガング大尉。
部隊副長ファンティーヌ・フォン・リンテール少尉。
斥候分隊長ホウキン・ロースター軍曹。
そして、レヴァンス侯爵軍と帝都中央軍より大尉と少佐が参加していた。
「それでは侯爵軍と帝都中央軍の到着は予定通り明日の午前中になるのだな?」
「はい。戦力的には問題はないかと。しかし、奴らはおそらく籠城戦に持ち込むつもりです。補給については些か不安が残ります」
「それについてはダウスター領より民兵を中心とした補給部隊の編成をさせている。しかし、我が領にはそれほど備蓄はない。侯爵軍や帝都中央軍の分までは賄えんぞ?」
「では、現地で調達するのはどうでしょう?」
「少佐。現在調達は不可だ。このライエル領はそのような余裕のある土地では……」
「しかし、閣下……」
侃侃諤諤と議論を交わしていると、にわかに天幕の外が慌ただしくなる。
何事かと訝しんでいると、一人の兵士が足をもつれさせながら転がるように入ってきた。
「何事だっ!」
ヴォルガング大尉の一喝に兵士は慌てて居住まいを正した。
「し、失礼致しました! 報告です! 不死の魔物と思しき化物が此方に向かっているとの事であります!」
「不死の魔物だと? この昼日中にか?」
不死の魔物は太陽を嫌い、日中に活動できる個体はそれほど多くない。
いるとすれば、それは上級魔物であり、かなりの力を持つ存在だという事になる。
「このタイミングで現れるとは……まさか、オーマン伯爵軍の背後には魔物が関与しているのか?」
「そう言った話は聞いていないが……どんな魔物だったのだ?」
「み、み、見た事もない化物です! ぜ、全身が真っ黒で血を滴ららせ、血の臭いを周囲に撒き散らす人型の化物です! その横には鎧を着た別の個体もいたと報告がありました!」
男爵に聞かれた兵士はガクガク震えながら答えた。
その場にいた全員が顔を見合わせるが誰もその存在を知らないのか、首を横に振るだけだった。
「むぅ……これはどうする? 上級魔物だとすれば厄介だ。ここでの戦力の消耗はマズい」
「閣下。シュナイデン軍曹も潜入の準備中ですし、ここは私が参りましょう」
そう言ったのはヴォルガング大尉だった。
大尉は愛剣である魔剣《雷の涙》を腰に携え、席を立とうとする。
「待ってぇ。相手は二体でしょ? 私も行くよぉ」
緊張感のない声で同行を申し出たのはリンテール少尉だ。
確かにこの2人であれば上級魔物にも引けを取らないだろう。
しかし、その化物の正体も気になる。
「化物の正体も気になる。私も同行しよう」
「お待ちください! 司令官が前に出るなどなりません! ここは大尉と少尉に任せるべきです」
「アンダーソン大佐、安心せよ。何も私が戦うと言っているのではない。正体がわからんのでは今後の作戦に支障もあろう。敵を知らねば足元を掬われるぞ」
「し、しかし……」
尚も止めようとしていた大佐を中将が手で制した。
「男爵の言は正しい。私も正体を確認した方が良いと思う。それに我々がやられるようであれば兵達では束になっても敵うまい。結果としては同じ事だ」
司令官と参謀に押し切られ、正体不明の化物は全員で確認しに行くことになった。
戦闘になった場合は大尉と少尉が前に立ち、大佐が支援するという作戦になり、全員で天幕を出た。
領軍司令官アーベル・フォン・ダウスター男爵。
副司令シャーロット・フォン・ジェニングス中将。
作戦参謀ノイマン・アンダーソン大佐。
後方支援隊長リモン・サイモン上級曹長。
部隊長アリシア・フォン・ヴォルガング大尉。
部隊副長ファンティーヌ・フォン・リンテール少尉。
斥候分隊長ホウキン・ロースター軍曹。
そして、レヴァンス侯爵軍と帝都中央軍より大尉と少佐が参加していた。
「それでは侯爵軍と帝都中央軍の到着は予定通り明日の午前中になるのだな?」
「はい。戦力的には問題はないかと。しかし、奴らはおそらく籠城戦に持ち込むつもりです。補給については些か不安が残ります」
「それについてはダウスター領より民兵を中心とした補給部隊の編成をさせている。しかし、我が領にはそれほど備蓄はない。侯爵軍や帝都中央軍の分までは賄えんぞ?」
「では、現地で調達するのはどうでしょう?」
「少佐。現在調達は不可だ。このライエル領はそのような余裕のある土地では……」
「しかし、閣下……」
侃侃諤諤と議論を交わしていると、にわかに天幕の外が慌ただしくなる。
何事かと訝しんでいると、一人の兵士が足をもつれさせながら転がるように入ってきた。
「何事だっ!」
ヴォルガング大尉の一喝に兵士は慌てて居住まいを正した。
「し、失礼致しました! 報告です! 不死の魔物と思しき化物が此方に向かっているとの事であります!」
「不死の魔物だと? この昼日中にか?」
不死の魔物は太陽を嫌い、日中に活動できる個体はそれほど多くない。
いるとすれば、それは上級魔物であり、かなりの力を持つ存在だという事になる。
「このタイミングで現れるとは……まさか、オーマン伯爵軍の背後には魔物が関与しているのか?」
「そう言った話は聞いていないが……どんな魔物だったのだ?」
「み、み、見た事もない化物です! ぜ、全身が真っ黒で血を滴ららせ、血の臭いを周囲に撒き散らす人型の化物です! その横には鎧を着た別の個体もいたと報告がありました!」
男爵に聞かれた兵士はガクガク震えながら答えた。
その場にいた全員が顔を見合わせるが誰もその存在を知らないのか、首を横に振るだけだった。
「むぅ……これはどうする? 上級魔物だとすれば厄介だ。ここでの戦力の消耗はマズい」
「閣下。シュナイデン軍曹も潜入の準備中ですし、ここは私が参りましょう」
そう言ったのはヴォルガング大尉だった。
大尉は愛剣である魔剣《雷の涙》を腰に携え、席を立とうとする。
「待ってぇ。相手は二体でしょ? 私も行くよぉ」
緊張感のない声で同行を申し出たのはリンテール少尉だ。
確かにこの2人であれば上級魔物にも引けを取らないだろう。
しかし、その化物の正体も気になる。
「化物の正体も気になる。私も同行しよう」
「お待ちください! 司令官が前に出るなどなりません! ここは大尉と少尉に任せるべきです」
「アンダーソン大佐、安心せよ。何も私が戦うと言っているのではない。正体がわからんのでは今後の作戦に支障もあろう。敵を知らねば足元を掬われるぞ」
「し、しかし……」
尚も止めようとしていた大佐を中将が手で制した。
「男爵の言は正しい。私も正体を確認した方が良いと思う。それに我々がやられるようであれば兵達では束になっても敵うまい。結果としては同じ事だ」
司令官と参謀に押し切られ、正体不明の化物は全員で確認しに行くことになった。
戦闘になった場合は大尉と少尉が前に立ち、大佐が支援するという作戦になり、全員で天幕を出た。
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