食うために軍人になりました。

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第一章

凱旋

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 「あれか……」

 遠見筒で確認すると化物は報告通りの姿をしていた。
 全身は赤黒く、頭部の毛はベタついているように見えるな。
 本来は弱点である太陽の下を歩き、後には点々と黒い痕跡を残している姿はまさに異形のそのものだ。
 確かに見た事もない化物だな。
 隣の全身鎧の魔物は一部が欠けており、動き方がヨタヨタしている。
 もしや、動く鎧リビングアーマーか? いや、首無し騎士デュラハンの可能性も捨てきれん。
 しかし、妙でもある。
 何の警戒もなく此方に向かっているのは、どういうつもりだ?
 太陽を気にしない上級魔物だからこその余裕なのか?
 いや、それにしたって無警戒過ぎる。
 他の者達も判断しかねているようだな。
 もし、化物の目的が敵対行動でないなら此方から手を出すのは得策ではない。
 わざわざ平地に波瀾を起こす事もなかろう。

「皆、どう思う? 異形には違いないが、あまりに無警戒ではないか?」

「確かにな。だが、魔物である以上、放置もできん。今、我等に敵対せずとも、今後の事はわからんからな」

「私も同意見です。太陽の下を歩く不死の魔物アンデッドともなれば上級魔物でしょう。これまで誰も傷つけていないとも思えません。私が先陣をきります。この雷の涙サンダーティアーで、魔物を屠ってご覧に入れましょう!」

「私の得意な火魔法で火葬する方が早いんじゃないかなぁ? 今なら機先を制することもできると思いますけどぉ?」

「いや、待て! 上級魔物であれば交渉できるやもしれん。禍根を断つことは大事だが、疑惑で殺せば我々は殺し屋に成り下がる。先ずは様子を見るのだ」

 魔物を前に熱り立つ若者を鎮めるのは困難だな。
 だが、全員命令には従ってくれるようで、化物の出方を待つ事になった。
 さて、魔物は……相変わらず無警戒に向かってくるな。
 むっ! よく見れば黒い魔物は何かを担いでいるな。
 あれは……人かっ!
 人を肩に担いで歩いているのかっ!
 やはり危険な存在なのか?
 いや、まだ判断には早い。
 もし奴らが食人種なら、とうにあの者は食われているはずだ。
 それが無いということは別の目的かもしれん。
 とにかく、今は待つしか無い。
 近づいて来る……もう少しで声が届く距離だ。
 さぁ、お前の第一声次第で一気に戦闘開始……。

「おや? 皆さまお揃いでどうしたのでありますか? 小官のお出迎えなら恐縮でありますが?」

「「「「「ぐ、軍曹っ!」」」」」

 私と全員の思いと声が一致した瞬間であった。
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