食うために軍人になりました【一人称版】

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第二章

帝都到着

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 陽が傾いて街を夕暮れが包む頃、飛空艇は帝都に到着した。
 長かった。
 こんなに夕暮れを待ち望んだのは人生で初めてだ。
 昨日からほとんど寝ずに代わる代わる指導というか調教されてフラフラだ。
 謁見の作法についてはそれほど難しくなくてよかった。
 ある程度は軍で学んでいたし、礼のタイミングなどを教えて貰うだけでなんとかなった。
 実際の謁見ではダウスター男爵も一緒だし、不安もそこまでない。
 会食の作法についてもロースター軍曹との食事の際に色々注意されていたから、然るべきところでは注意が出来るだろう。
 問題は……ダンスだ。
 社交会での紳士淑女の嗜みとか言われて訳もわからずやらされたのだが、やった事はないし、やりたくもないし、やれる自信もないしと一番苦労した。
 いっそ足でも折ってやろうかと思ったぐらいだ。
 とは言っても、回復魔法で治されて終わりだろうけどね。
 大尉と少尉は貴族出身なだけあって、幼少の頃から英才教育を受けているそうで、ダンスなどの教養もしっかり身についている。
 あの筋肉達磨みたいなダウスター男爵でさえ、ある程度踊れていたのは驚きだったな。
 しかし、平民出身の教養の足りない俺にはステップが硬いとか、優雅さが足りないとかの意味がわからない。
 足が硬いって何ぞや?
 優雅な動きってどういう事よ?
 理解できない事を延々とやらされるとは正に地獄だ。
 おまけにチラチラと船室の窓に映る兵士達の怨嗟の目が更にやる気を削ぐ。
 そんなに羨ましいなら変わってやる! って言いたくなったわ。
 結局、ほとんどの時間をダンスに費やす事になり、フラフラになりながら俺は飛空艇から降りた。

「やっと着いた……もう、今日は寝たい……」

 しかし、そんな俺のささやかな希望すら叶わなかった。

「そうはいかん。明日の謁見の前に帝都の貴族達への顔合わせをせねばならんからな。今日は私の寄親でもあるサンイラズ侯爵の屋敷でパーティーがあるのでそこに出席する。貴官もな」

 最悪だ。
 何で貴族ってパーティーだの園遊会だのと毎回毎回集まりたがるのか。
 暇なんだろうか?

「そんな顔をするな。貴族は派閥や縁戚、領地、職務など様々なしがらみがある。それに合わせて参加できるものと、できないものがある。そのため、どうしてもこういう集まりの機会が多くなるのだ」

「はあ。小官にはよくわかりませんが、御命令とあらば同行致します」

「ならば、先ずは……」

 そう言いかけた男爵の言葉を聴き覚えのある声が遮った。

「待っていたぞ。ダウスター男爵、シュナイデン軍曹」

 桟橋を降りた俺達に声をかけてきたのは、光沢のある銀髪を靡かせ、仁王立ちしている帝国の女神、シャーロット・フォン・ジェニングス中将だった。
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