食うために軍人になりました【一人称版】

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第二章

帝都の物価

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「遠路ご苦労だったな。とは言っても、飛空挺ならそうでもないか」

「出迎え痛み入りますな。ジェニングス中将」

 そう言って挨拶を交わす中将と男爵だけど、わざわざ中将が迎えに来る必要があるんだろうか?
 今から侯爵家に行かないと行けないんだけどなぁ。

「では男爵。シュナイデン軍曹を預かるぞ?」

 おいおい、何が『では男爵』だよ。
 また無茶苦茶言ってるよ。
 俺は今から男爵と侯爵邸で……。

「わかった。よろしく頼む」

 あれっ! な、何で?

「そんな捨てられた仔犬のような目をするな。侯爵邸でのパーティーにはジェニングス中将が連れてってくれる。その前に貴官には衣装が必要だろう? それの見立てを頼んだのだ。私も屋敷で準備次第向かう故に、現地で会おう」

 ああっ、そういう事か。

「大尉と少尉もご苦労だったな。ついでに貴官等にも衣装をくれてやる。好きなのを選ぶがいい」

「「ありがとうございます、閣下」」

 2人は揃って礼を述べている。
 まぁ、パーティーに出られるような服は軍服しかないし、服はあって困るもんじゃないか。
 それに謁見の際にも必要かもしれないしね。
 そう自分を納得させて俺は中将の用意してくれていた馬車に向かったんだけど……何か変な感じがするなぁ。
 何か飛空挺の中にいた時と同じ、いや、それ以上だ!
 ま、待て待て、状況を整理しよう。
 俺の前に歩いているのはジェニングス中将、俺の右隣にヴォルガング大尉、左隣にリンテール少尉……はっ! し、しまった!

「俺達の女神様の後ろにいふ黒虫野郎は誰だ……」

「た、大尉と並んで歩くなんて不遜過ぎるだろ!」

「……し、少尉に手をだ、出したらゆ、許さないんだな」

「憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い」

 いやぁああああああ!
 もう怨嗟の目どころか口に出てるよ!
 憎悪、嫉妬、妬み、怨みあらゆる負の感情が渦巻いているよ!

「やれやれ、相変わらずだな。気をつけろよ、軍曹。アンダーソン大佐も以前はふくよかな体型だったが、我らと歩くとこういう目に晒されるのでな。すっかり痩せてしまったのだよ」

 大佐ぁああああああ!
 思ったより大変な目にあってたんですね!

「まぁ、その内慣れるだろう。大佐も今ではそれほど気にしなくなったしな。それより、さっさと向かわねば店が閉まるぞ」

 中将に促され、嫉妬の炎が渦巻く中を歩いて俺は馬車に乗り込んだ。
 ううう、早くこの場から立ち去りたい。
 
「これから帝都の中心街にある貴族御用達の店に向かうぞ」

 そう言って馬車を走らせる中将だったけど、心配だな。
 俺そんなに金持っていないし、帝都は物価高いって言うからなぁ。
 金足りるかな?

「軍曹は少なくとも2着は買わねばならんからな。さっさとしないとパーティーに間に合わなくなるぞ」

「2着? 1着ではないのですか?」

「さすがに今日着たものを明日の謁見で着るわけにはいかんだろう? 出来れば3着は欲しいところだな」

 さ、最悪だ。
 今まで服にそんなに金かけた事もないのに、高価な服を3着も買わないといけないなんて……。
 せっかく貯めてたのに……。

「金の心配はいらないから好きに買えばいい。ダウスター男爵のツケにしておくからな。男爵からも許可をもらっている」

「ほ、本当ですか? よ、良かったぁ」

「なんだ? 金の心配をしていたのか? 気にするな。今から行く店はそこまで高い店じゃない」

 なんだ、そうなのか。
 心配して損した。
 それもそうだよな、高い店ばかりだったから平民なんか生活できないだろうし……。

「だいたいの物は白金貨1枚程度だ。ちょっと良いものにして3着で白金貨5枚ってところだろう。大した物じゃないだろ?」

「そうですね、閣下。少々安めですが、あそこはデザインがいいので問題ないでしょう」

「気軽に買うなら丁度いいですよねぇ」

 ……前言撤回、都会はやっぱり怖いです。
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