食うために軍人になりました。

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第二章

ダウスターの惨劇

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 舌舐めずりするミレーヌ。
 これは危機だ。
 命というより貞操の、だけどね。
 ん?

「貴様にこいつはやらん」

「そうだよぉ~これ以上は見過ごせないなぁ~」

 大尉、少尉がミレーヌの前に立ちはだった。
 それにしても、いくら元魔法学院の生徒でもミレーヌさんは今はただの一般人だよ。
 一般人相手に殺気なんか出さないでください。
 俺から見ても怖いですよ。

「なんだ、先約があるんじゃないか。なら仕方ないね。まぁ、気が変わったらいつでもおいで。それにしてもこれだけの美女3人と一緒にいるあんたは何者だい?」

「普通は最初にそれを聞きませんか?」

「新しい刺激を求めた妙齢の女にゃ、名前より優先するもんがあるんだよ」

 不倫する人妻みたいな事を言う人だな。

「はぁ。小官は帝国軍所属ダウスター男爵領軍リクト・シュナイデン軍曹です」

「シュナイデン軍曹? あんたが噂の《ダウスターの惨劇》かい? もっと厳ついおっさんだと思ってたよ」

 ミレーヌは驚いた顔で俺をマジマジと見つめる。
 それにしても《ダウスターの惨劇》って何だ?

「貴官の二つ名だ。出自や戦功で二つ名が付くことも珍しい事ではない。特に貴官は目立つ存在だからな」

「だからって、惨劇はないんじゃないですか? もっとかっこいいのはなかったんでしょうか?」


「それは無理だな。前回のオーマンの件で貴官の名は一気に広まった。そして戦場である現場の検分に行った兵士や騎士がまともに現場を見れなかったと聞く。私も話で聞いたが、流石に耳を塞ぎたかったぞ? 特に執務室前はこの世の地獄だったと聞いているぞ。《地獄の使徒》なんて二つ名まであったんだぞ」

 物騒な名前を付けられたもんだ。
 それにしても二つ名って何か恥ずかしいような……。

「そんなに気にするな。私にも《帝国軍の女神》なんて二つ名がある。最初はうざったいが、後々役に立つこともある」

 どんな役に立つんだ?
 広告塔とかは嫌なんだけどなぁ。

「それより、ミレーヌ。礼なら身体じゃなくて衣装だ。こいつの礼服を3着ほど大至急頼む。今日の夜会と明日陛下との謁見があるのでな」

「そうなのかい? なら、あんたの晴れ舞台だ。気合入れてやらせてもらうとするよ」

 そう言うと、ミレーヌさんは俺の服を即行で仕立ててくれると言う。
 採寸もちゃんとしていて、さすがはプロ……って何してるの、この人?

「うはぁ! やっぱり実際触ると違うね……たまには若いツバメもいいかもね……」

 俺の身体を採寸という名の元にベタベタ触りまくるミレーヌ。
 顔が近いし、鼻息が荒い。
 気は確かなのか? この人は?
 結局、大尉と少尉が止めに入るまでの10分間彼女は俺を触り続けた。
 ちなみに後で支配人に聞いたが、彼女は見ただけで大体の採寸が出来るらしい。
 ……もう、この店には近づかないようにしよう。
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