食うために軍人になりました【一人称版】

KBT

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第二章

四元帥

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 部下じゃなくて駒?
 なんかあんまり良いイメージは湧かないんだけど、どういう意味だろう。
 
「あの……駒って言うのは?」

「文字通りの意味だ。貴官はジェニングス中将の駒として働き、彼女の出世のための道具となるのだ」

 出世のための道具!?
 それはおかしいでしょ!
 なんで俺が中将が出世するために働かないといけないんだよ!

「ふむ。貴官はどうやらあまり世の中の仕組みには詳しくないようだな」

 黙っていても怒っているのが伝わったのかな?
 でも、いいさ。
 実際に怒っているし、納得もできないからね。

「正直、駒扱いは納得できません」

自尊心プライドか。まだ若い証拠だな。だが、軍令部に行ってみろ。その自尊心を売り渡した上官達がゴロゴロいるぞ。そうしなければ出世出来ないからな」

「どういう意味ですか?」

「先も言ったが、我が帝国は最近の戦において目覚ましい功績がない。武勲を立てねば出世できない軍人にとっては由々しき事態であろう。しかし、武勲を立てるだけの力量もない。では、どうするか」

 別のことで功績を立てるとかかな?

「上官に媚びへつらい、出世させてもらうのだ。さっきのタルナート少佐は帝国軍大将ノルマイスターの愛人の縁者だ。奴は出世のためにノルマイスターに女を差し出し、今の地位を手に入れたのだ」

「なっ! そんな事が……」

「他にもそんな話はゴロゴロ転がっている。貴族の子弟が軍の要職に就くことも多い。それも後方勤務でな。そんな奴らに軍をいいように動かされないために、ジェニングス中将には駒が必要なのだ。有能な駒がな」

 ん? 軍が腐りきっているのは分かったけど、なんでその改革のために俺が駒になる必要があるんだ?

「派閥というものを知っているか? 今の帝国軍には大きく分けて4つの派閥が存在する。帝国軍軍隊司令長官のヴォルドン元帥、軍令部総長のヘルフォード元帥、軍務大臣のフェラース元帥。そして新任のウォーレイク元帥の派閥だ。先のノイマイスターはヴォルドンの派閥だな」

「はぁ……それが小官の駒とどういう関係があるのでしょうか?」

「わからんか? 派閥の力とは麾下に収めている者達の力で決まるのだ。それは戦闘力であったり、内政力であったり、経済力であったりと様々だが、それをどれだけ集められるかで派閥の力が決まる。力が強くなればそれだけ軍内部での発言権も大きくなるのだよ」

 そういう事か。
 あっ、だからさっき大尉は怒ってたんだ。
 自分の派閥に俺を入れたかったのに、少佐が横取りしようとしたから。
 多分、話の内容からして優秀な人材を取られた事もあるんだろう。
 上官に対して随分噛みつくとは思っていたけど、派閥の権力争いともなれば引いてばかりもいられないってことか。

「なるほど、小官は中将の『手駒』というわけですか」

「正確にはウォーレイク元帥だがな。ジェニングス中将はウォーレイクの派閥だからな。『平民上がりの元帥』と揶揄されておって派閥の中では最も小さい派閥だ」

 ウォーレイク元帥?
 初耳だけど、どんな人だろう。

「その、ウォーレイク元帥って……」

「それは私です」

 急に応接室の横の扉が開いて、1人の青年が入ってきた。
 誰だ? この赤髪の青年は?
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