食うために軍人になりました。

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第二章

中将の駒

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 少佐と大尉からの勧誘を助けてくれたサンイラズ侯爵はこれも何かの縁と言って俺を応接室に招待してくれた。
 いいのかな? 俺なんかがこんな所に来ちゃって。

「そうか。貴官はジェニングス中将の配下になるのか」

「はい。その、申し訳ありません。ダウスター領軍から離れてしまって……」

 やっぱり怒ってるかな?
 ダウスター男爵の元から離れるって事は寄親であるサンイラズ侯爵からも離れるって事だからな。
 裏切り者とか思われないか?

「謝る事はない。ジェニングスの娘は軍では横紙破りと言われておるが、それは軍が腐敗しておるからだ。腐敗の横紙破りであればまともだという事だろう。敵対せぬならそれでいい」

 ホッ、よかった。
 この侯爵様はかなり器の大きい人だな。
 外交のトップで怖い人だって中将が言ってたから警戒してたけど、今のところ悪い印象はないな。

「正式に貴官がジェニングス中将の配下になるのは少尉の辞令が降りた後だろう。それまでに他の奴らから変な勧誘や嫌がらせがあればコレを見せるといい。大抵の者はすぐに引くだろう」

 侯爵様が胸ポケットから出したのはコインか?
 なんだろう。
 金貨とは違うし、何か絵が彫ってあるぞ。

「それは我がサンイラズ侯爵家の家紋だ。それを持つ者は我が家の縁者である事を示しておる。つまり、それを持つ貴官に敵対するの事はサンイラズ侯爵家を敵に回すという事だ」

「そ、そんな大事なものいただけませんよ! 侯爵様にご迷惑をおかけする事になりかねません!」

 めちゃくちゃ貴重な物じゃないか!
 これって俺の後ろ盾にサンイラズ侯爵家が着くって事だろ?
 畏れ多いよ!

「一時貸すだけだ。騎士爵を授爵した後に返してもらう。まぁ、さっき言った私からの褒美だと思え」

「しかし……うーん、わかりました。お預かりさせていただきます」

 これ以上断るのも失礼かもしれないし、とりあえず預からせてもらおう。
 それに正直これは有難い。
 さっきみたいに階級が上の人から言われると軍人としては否とは答えにくい。
 例えそれが無茶な勧誘であってもだ。
 
「代わりと言っては何だが、これからもダウスターとの縁だけは切らないでもらいたい。それが最終的に私の利となるのだ。私は慈善家ではないからな」

「それは勿論です。男爵様には良くしていただいておりますから」

 それにサイモン上級曹長やロースター軍曹、カールもいるし、俺としてもダウスターとは繋がっていたい。
 っていうか、実家もあるしな。

「ならば良い。では、せいぜい栄達するといい。ジェニングス中将の駒としてな」

 ん? 中将の駒ってどういう事だ?

 
 
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