食うために軍人になりました【一人称版】

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第二章

勘違いリクト

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 虎龍の首と胴体が分かれている。
 おかしいなぁ。
 3つの国を滅ぼした最強の亜龍がこんなに弱いはずがない。
 もしかしてまた狸寝入りか?
 でも、首を斬られて生きている奴なんかいるのかな?

「少尉……貴官というやつは……」

「大尉? こいつ首が斬れちゃったんですけど」

「首が斬れちゃったんですけど……じゃないよぉ! 嘘でしょぉ!? 虎龍の単騎討伐なんてありえないでしょぉ!」

 大尉と少尉が信じられないものを見るような目で俺を見る。
 なんか以前にもあったような気がするなぁ。
 っていうか、こいつは虎龍じゃないでしょ?
 こんなに弱いわけないんだから。

「大尉、少尉。多分こいつら虎龍じゃないですよ。こんなに弱いわけないですから」

「いやいやいやいや! どう見たってこいつは虎龍だろっ!?」

「弱いってぇ……あのねぇ、こんなに斬り刻まれたらさすがの虎龍でももたないでしょぉ?」

 その斬り刻まれるってのがおかしい。
 龍の鱗を持つ虎龍の鱗がこんなに軟らかいわけない。
 ーーーーほら、ブスッと刺した刃が通っちゃった。
 こんなに軟らかい龍鱗なんてあるわけないよ。

「やっぱり違いますよ。鱗がこんなに軟らかいんですよ?」

「それはそうだろう? 虎龍の鱗は毛皮の集合体だからな。それが鱗のように見えるだけに過ぎんのだ。硬さは龍鱗とは比べるべくもない」

 ん?

「虎龍って亜龍ではあるけど、それって火龍と同じように火の魔力を使って炎を吐くからだからねぇ。かなり曖昧な分類なんだよぉ?」

 んん?

「どちらかと言えば牙城虎フォートレスタイガーに近いからな。だが、それでも脅威には違いない」

 んんん?

「当然でしょぉ! 砦とか関所とか現れたら総出で戦っても勝てるかどうかなんだよぉ! 私が砦の視察に行った時に襲ってきて大変だったんだからぁ!」

 んんんん?
 おかしいぞ? 俺が聞いてた話と違う。
 俺の聞いた虎龍とは違いすぎる。

「砦なんか一瞬で破壊しちゃうでしょ? 3つの国を滅ぼしちゃうくらいなんですから」

「「はっ?」」

 えっ? なんで、そんな顔してるの?
 
「シュナイデン少尉……貴官は何と勘違いしているのだ?」

「いくらなんでも虎龍には3つも国を滅ぼす力はないよぉ?」

「えっ!? し、しかし、昔ダウスターに来た軍人がそう言ってましたよ? 国を滅ぼした虎龍を帝国軍の威信にかけて討伐したって……」

「なっ!? それは、まさか……」

「ありそうな事だよねぇ~。本当に恥ずかしいよぉ……」

 大尉と少尉が頭を抱えて俯いてしまった。
 どうしたんだ?

「はぁ……少尉、貴官がそれを聞いたのはいつ頃だ?」

「5、6年前ですけど……」

「って事は、あの時のことだねぇ……最低だよぉ」

 えっ? どういうこと?

「すまんが、よく聞いてくれ少尉。貴官が聞いた虎龍の話……それは嘘だ」

「えぇえええええええええっ!」
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