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第二章
一触即発
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俺が持ち帰った虎龍が本物か見極めるだと?
俺が偽物でも持ち帰ったとでも言いたいのか!
ふざけやがってっ!
「ヴォルドン司令。それは部下に対してであっても失礼なのでは?」
あの温厚なウォーレイク元帥が少し語気を強めている。
どうやら怒っているのは俺だけじゃなさそうだ。
よく見るとジェニングス中将は表情こそ変えていないが、両の拳がワナワナと震えている。
ヴォルガング大尉は剣の柄に手がかかっているし、リンテール少尉は明らかに不機嫌そうな表情をしている。
それとヴォルドン司令は気づかなかったようだけど、アンダーソン大佐も目が座っててヤバい。
普段目立たない人が怒ると怖いんだよなぁ。
何するかわからないから。
「何を言うかっ!? 昨今では士官や下士官の中で戦功の水増しや物資の横流しなど帝国軍人として看過できぬ問題が横行しておるのだぞ! それを調査するのはあたりまえのことではないかっ!」
「それについては問題ありません。報告書の内容は確認済みです。北方方面軍のリーカネン大佐のサインです」
「チッ! 寄越せ!」
あっ! あの野郎!
ウォーレイク元帥が差し出そうとした報告書を、わざわざ奪いとるようにしやがって!
目下の俺達ならともかく、同格のウォーレイク元帥にあんな態度をとるなんて……本当に首を落としてやろうかな。
「……ふん! リーカネンか。レッドウッド辺境伯の腰巾着が随分と偉くなったものだな」
あああっ!
今度は報告書を投げ捨てやがった!
もう我慢できん!
そのハゲ散らかした頭をツルピカにしてやる!
「ちょ……えっ?」
文句を言おうと前に出ようとした俺の手を大尉と少尉が掴んで止めた。
そして、俺の姿を隠すようにジェニングス中将が前に立つ。
そうだった。
この場で一番耐えているのは、ウォーレイク元帥閣下だ。
なのに部下の俺が暴発したんじゃ、元帥の顔に泥を塗るも同然だ。
ここは耐えるしか……。
「ん? なんだ? 小僧。女に守ってもらうとはママのおっぱいでも恋しくなったか? はっはっはっはー!」
はい、切れましたよ。
何かがプツンと切れました。
もう無理です。
この場で殺します。
「ヴォルドン司令。私の部下を侮辱なさるつもりですか?」
「黙れ! ウォーレイク! 平民の分際で偉そうに! 貴様のような下賤な輩が少しばかり手柄を立てたからと図に乗りおって! 分を弁えろ!」
ぁあああああ!
もう我慢できない!
中将、大尉、少尉も止めないでください……って、ヤバいやん。
3人の方が先にキレてるよ。
もう全身から殺気やらなんやらと負のオーラが漂ってる。
これは止めた方がいいのか? って、なんで俺が止める側に回ってるんだよ!
「なんだ、小娘ども? 私に何かするつもりか? 構わんぞ。そうなれば小賢しい蠅を一網打尽に駆除できるからな」
「くっ……」
中将が舌打ちしながら苦虫を噛み潰したような表情になってる。
そうか、こいつはわざと俺達を怒らせて不祥事を起こさせようとしてるんだ。
……落ち着いてみれば元帥府の通り付近に軍人の気配がある。
俺達が暴発したら速攻で現場を押さえる気なんだ!
このハゲ野郎。
どこまで陰険なんだよ!
「さぁ、どうした? 《帝国の女神》とやら。顔だけが自慢の看板軍人のくせに一丁前に中将とは、いい御身分だな?」
「ぬぅ……」
「おのれ!」
「中将を馬鹿にするなんてぇ!」
ダメだ! 大尉、少尉!
ここで奴に手を出したら元帥の立場が!
「その辺りで止めるんだな、ヴォルドン。これ以上は流石に聞くに耐えん」
えっ? だ、誰だ?
俺が偽物でも持ち帰ったとでも言いたいのか!
ふざけやがってっ!
「ヴォルドン司令。それは部下に対してであっても失礼なのでは?」
あの温厚なウォーレイク元帥が少し語気を強めている。
どうやら怒っているのは俺だけじゃなさそうだ。
よく見るとジェニングス中将は表情こそ変えていないが、両の拳がワナワナと震えている。
ヴォルガング大尉は剣の柄に手がかかっているし、リンテール少尉は明らかに不機嫌そうな表情をしている。
それとヴォルドン司令は気づかなかったようだけど、アンダーソン大佐も目が座っててヤバい。
普段目立たない人が怒ると怖いんだよなぁ。
何するかわからないから。
「何を言うかっ!? 昨今では士官や下士官の中で戦功の水増しや物資の横流しなど帝国軍人として看過できぬ問題が横行しておるのだぞ! それを調査するのはあたりまえのことではないかっ!」
「それについては問題ありません。報告書の内容は確認済みです。北方方面軍のリーカネン大佐のサインです」
「チッ! 寄越せ!」
あっ! あの野郎!
ウォーレイク元帥が差し出そうとした報告書を、わざわざ奪いとるようにしやがって!
目下の俺達ならともかく、同格のウォーレイク元帥にあんな態度をとるなんて……本当に首を落としてやろうかな。
「……ふん! リーカネンか。レッドウッド辺境伯の腰巾着が随分と偉くなったものだな」
あああっ!
今度は報告書を投げ捨てやがった!
もう我慢できん!
そのハゲ散らかした頭をツルピカにしてやる!
「ちょ……えっ?」
文句を言おうと前に出ようとした俺の手を大尉と少尉が掴んで止めた。
そして、俺の姿を隠すようにジェニングス中将が前に立つ。
そうだった。
この場で一番耐えているのは、ウォーレイク元帥閣下だ。
なのに部下の俺が暴発したんじゃ、元帥の顔に泥を塗るも同然だ。
ここは耐えるしか……。
「ん? なんだ? 小僧。女に守ってもらうとはママのおっぱいでも恋しくなったか? はっはっはっはー!」
はい、切れましたよ。
何かがプツンと切れました。
もう無理です。
この場で殺します。
「ヴォルドン司令。私の部下を侮辱なさるつもりですか?」
「黙れ! ウォーレイク! 平民の分際で偉そうに! 貴様のような下賤な輩が少しばかり手柄を立てたからと図に乗りおって! 分を弁えろ!」
ぁあああああ!
もう我慢できない!
中将、大尉、少尉も止めないでください……って、ヤバいやん。
3人の方が先にキレてるよ。
もう全身から殺気やらなんやらと負のオーラが漂ってる。
これは止めた方がいいのか? って、なんで俺が止める側に回ってるんだよ!
「なんだ、小娘ども? 私に何かするつもりか? 構わんぞ。そうなれば小賢しい蠅を一網打尽に駆除できるからな」
「くっ……」
中将が舌打ちしながら苦虫を噛み潰したような表情になってる。
そうか、こいつはわざと俺達を怒らせて不祥事を起こさせようとしてるんだ。
……落ち着いてみれば元帥府の通り付近に軍人の気配がある。
俺達が暴発したら速攻で現場を押さえる気なんだ!
このハゲ野郎。
どこまで陰険なんだよ!
「さぁ、どうした? 《帝国の女神》とやら。顔だけが自慢の看板軍人のくせに一丁前に中将とは、いい御身分だな?」
「ぬぅ……」
「おのれ!」
「中将を馬鹿にするなんてぇ!」
ダメだ! 大尉、少尉!
ここで奴に手を出したら元帥の立場が!
「その辺りで止めるんだな、ヴォルドン。これ以上は流石に聞くに耐えん」
えっ? だ、誰だ?
応援ありがとうございます!
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