食うために軍人になりました【一人称版】

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第二章

ブーメラン野郎

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 上から下まで腐ってる軍部には吐き気さえ覚えるな。
 いや、貴族社会の事を考えると帝国全体が腐ってると言ってもおかしくないだろう。
 この原因を取り除かない限り、帝国の腐敗は続き、破滅の一途を辿るしかないってわけだ。
 腐った貴族や軍上層部がどうなろうと構わないが、事は帝国に住むすべての人に関する事だ。
 早急な改革が必要だな。

「しかし、これでシュナイデン少尉は大尉となるわけだ。貴官のこれからの働きに期待させてもらうぞ」

 ジェニングス中将が傾国とまで言われた美貌に最高の笑みを浮かべて、激励してくれる。
 否が応にも頑張ろうと思えるね。

「おい、鼻の下を伸ばしている場合ではないと思うが?」

「そうですよぉ~。シャンとしていただかないと示しがつきませんよぉ、大尉殿ぉ?」

 ヴォルガング大尉とリンテール少尉の目が怖い。
 別に下心なんてないのに。

「仲がよろしいんですね。信頼できる仲間とはかけがえ無いのないものです。これからもその繋がりを大事にしてください」

 ウォーレイク閣下って、すごい肯定的な方なんだな。
 今の状況を見てそう言えるなんて相当な大物だよ。

「では、これからの事について話をしたいと思いますので、一度戻り……」

 ん? 馬車が一台やってきたと思ったらウォーレイク閣下の表情が若干険しくなったぞ?
 いや、閣下だけじゃない。
 中将もかなり怪訝な顔をしている。
 一体誰だ?
 それにしても豪華な馬車だな。
 なんかキラキラしてて妙に鬱陶しい感じがする。
 おまけに危ねぇな!
 俺達の目前で止まったから土煙が舞っだじゃないか。
 リンテール少尉がさりげなく魔法でガードしてくれたからいいけど、俺達はともかく元帥閣下にこんな真似していいと思ってるのか?
 行者が扉を開けて出てきたのは……誰だ? このハゲは?

「ほぅ、総出で私を迎えるとは礼儀を心得ているじゃないか。ウォーレイク」

「恐縮です。ヴォルドン司令」

 ヴォルドン? って事はこいつが帝国軍軍隊司令長官のヴォルドン元帥閣下か?
 なんていうか……軍人って感じがしないなぁ。
 頭が禿げ上がってるのは本人のせいじゃないにしても、あのブヨブヨの身体はなんだよ。
 全然鍛えていないじゃないか。
 
「ふん。ウォーレイクよ。卿は幕僚をなんだと思っているのだ? 女軍人と年端もいかない子どもだけではないか。公私混同は厳に慎むべきだ」

 はぁ!? じゃあ、お前の馬車はなんなんだよっ!
 成金趣味の品のない馬車使ってるお前に言われたくねぇよ!

「助言、痛み入ります」

「そんな事では陛下に巧く取り入って手に入れた今の地位が水泡に帰すぞ? 今後は自重するがいい」

 テメェの体型のどこに自重があるってんだよっ!
 ウォーレイク閣下はちゃんと功績を立てた上で今の地位にいるんだよっ!
 お前の言ってる事全部返してやるぞ!
 このブーメラン野郎、マジで腹立ってきた。
 ……って、思ってるのは俺だけじゃなさそうだな。
 中将も大尉も少尉も殺気に近い気を出している。
 それに気づかないこのハゲ豚はどうしようもないな。

「ヴォルドン司令、本日の御用向きは何でしょうか?」

「はぐらかすか? まぁ良い。今日は卿の部下が持ち帰ったという虎龍を見にきたのだ。本物かどうか見極めるためにな」

 はい。
 もう限界です。
 こいつの首、斬ります。
 
 

 
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