食うために軍人になりました【一人称版】

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第二章

タダより怖いものはない

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 オフィリアン。
 一体何者なんだ?
 ギルドマスターとも親しげに話していたし、周りにいた冒険者達も笑顔で近づいてくる不思議な魅力を持った人。
 それに身のこなしや身体の造りからして隠している実力は相当なもんだ。
 諜報部の存在にも気づく鋭い感性といい、この人は絶対に只者じゃない。

「ん? どうしたんだ?」

「いや、オフィリアンさんは……」

「ちょい待ち! さっきから気になってたんだよ。さん付けなんて止めてくれよ、よそよそしいじゃねえか。俺とあんたの仲だろ? 気楽にいこうぜ」

 どんな仲にもなった覚えはないんだけど……まぁいいさ。
 俺も堅苦しいのは嫌いだからね。

「じゃあ俺もリクトでいい。互いに気兼ね無しって事で」

「いいのかい? その若さで帝国軍の新鋭ウォーレイク元帥直属の部下で大尉殿だ。これからもっと出世するってのに、俺みたいな奴と連んでたら決まりが悪いぜ?」

「それこそ最悪だよ。連れの善し悪しで出世が決まるなんて、人事が腐りきってる証拠だよ」

「言うじゃないの~だが、その通りだな。軍の腐敗はリクトが思う以上に深い。そして帝国の腐敗もかなり進んでいる」

 オフィリアン達冒険者もこの国が腐ってるって思うわけか。
 それはまずいな。
 冒険者は別に一つの国に定着する必要性はない。
 国内情勢が安定していないと冒険者の仕事も安定しなくなるから、住みにくいと思ったら別の国に活動拠点を移動することはあり得る。
 そうなると冒険者達が担ってきた軍の手が回らない魔物の討伐が出来なくなり、国内は更に不安定となる。
 それに未開地やダンジョンから出る豊富な資源、希少な魔道具が出回らなくなることで物流不足による物価の高騰、そこから強盗など犯罪の増加まで起こる可能性がある。
 冒険者を優遇しろとは言わないけど、適切な距離を保つことは重要だ。
 それが権力を持つアホどもにはわからないんだろうなぁ。

「オフィリアンはそれをどうすればいいと思う?」

「俺みたいな一介の冒険者にはどうしようもない話だな。せいぜい引き際を見誤らないようにするだけさ」

 だろうね。
 いいなぁ、俺も軍人じゃなかったら……いや、駄目か。
 ここは俺の生まれた国だ。
 できれば故郷が無くなるのは避けたい。
 そのためにも俺はウォーレイク閣下の元でより良い帝国を目指すしかないんだ。
 
「お前さんはそういうわけにもいかないって顔だな。仕方ねぇな。俺で役に立つ事があったら、言いに来るといい。友達価格で請け負ってやるよ」

「金取るのかよ! ったく、ちゃっかりしてるね」

「へへへっ、タダより怖いものはねぇからな」

 ちぇ、おっさんのクセに屈託のない笑顔しやがる。
 でも、オフィリアンの力は絶対に今後の役に立つはずだ。
 なら、先に手付けを払ってやろうじゃないか。
 麗しの妖精の魅了に耐えられるかな? オフィリアン。
 
 
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