食うために軍人になりました。

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第二章

超一流

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「さぁ、飲んでくれ! ここは俺の馴染みの店なんだ! じゃんじゃん飲んでくれ!」

 裏通りの更に奥にひっそり構える小さな店で、俺と達人のおっさんこと、オフィリアンさんは飲んでいる。
 あの後、警備隊は報告書を上げてくれるなら問題ないと帰還してくれたが、問題だったのはヴィードだ。
 奴は冒険者組合の副ギルドマスターだったんだけど、どうにも軍人への対抗意識過剰で、警備隊が帰った後も喚き散らしていた。
 流石に俺もお灸を据えた方がいいかと思ったけど、タイミング良くギルドマスターが帰ってきたので、ヴィードよりも早くオフィリアンさんが事の顛末を報告した。
 ギルドマスターは常識ある人だったみたいで軍と揉め事を起こしたヴィードに大激怒、半ば引きずるように建物内に連れて入ったよ。
 その後は建物の外まで聞こえる声での大説教が延々と続いていたね。
 当然、俺は無罪放免って事で自由となり、さっきの誘いにのってこの店にやって来たって訳だ。

「しかし、あんたが噂のシュナイデン大尉だったとは驚きだね。若いとは聞いていたけど、若過ぎだっての! そりゃ、気づかない筈だよ」

「偽者かも知れないよ?」

「それはねぇな! さっき軍の警備隊に向かっての気迫、ありゃ並のもんじゃねえよ。あんたは軽く語気を強めただけかもしれねぇけど、相手は小便ちびるくらいビビってたぜ? でなきゃ、あんなにアッサリ帰るもんかよ」

 なんだ、報告書あげるから納得して帰ったんじゃなかったんだ。
 脅すつもりはなかったんだけどな。

「気をつけな。力を持つ者にはそれなりの責任と義務が付いてくる。なんでも自由って訳にはいかないのさ」

「オフィリアンさんみたいに、ですか?」

「へへへっ、さぁね~」

 ちぇ、そこははぐらかすのか。
 だけど、近くで見れば見るほどわかる。
 さっき言ってたように、この人もまた強大な力を持ってるから、こうやって隠して生きてるんだろうなぁ。

「まあ、なんにせよ、あんたには冒険者組合が世話になった。いずれギルドマスターからも礼があるだろうけど、俺からも貸し一つって事にさせてもらうぜ」

「貸し? ここの代金でも持ってくれるの?」

「へへへっ、それでもいいんだけどよ。そいつはやめといた方がいいな。騒ぎを収めた軍人が当事者に酒を奢って貰っていたなんて知られたら、あんたを問い詰める理由を与えちまう事になるぜ? 賄賂だの癒着だのと、偉いさんは優秀な部下の足を引っ張ることに御執心のようだからな。なぁ、あんたらもそう思うだろ!? 扉の外にいる人達よ!」

 扉の外から足早に去っていく足音が聞こえる。
 組合からコソコソと後ろをつけているとは思っていたけど、まさか俺の弱味を握るためだったとはね。
 たぶん諜報部だな。
 かなり尾行が上手かったし、気配の消し方も相当なもんだった。
 でも、それに気づいたこの人はやっぱり超一流の冒険者だ。
 

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