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第三章
噂話
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あれ以来フェルナン少尉は従順になっちゃって、今も一生懸命先頭を走ってるよ。
他の奴らも概ね真面目に従ってくれるようになった。
でも、本当は違うんだよなぁ。
俺ってもっと和気藹々としたかったんだよ。
こんな力でねじ伏せるのってどうなんだ?
いや、軍隊らしいといえば軍隊らしいのかもしれないけど、なんか腑に落ちないんだよなぁ。
「ほぅ。猛訓練で部下をしごいていると聞いたが、なかなかじゃないか」
「ヴォルガング少佐? 珍しいですね。今日はどうされたのですか?」
ヴォルガング少佐は昇進後は軍令部に出向して専門教育を受けている。
少佐は中隊規模の司令官だ。
尉官を統括して組織的に動かす事もあるため、個人としての能力だけでなく集団を指揮する能力が必要となる。
だから佐官に昇進すると専門教育を受ける必要があるんだそうだ。
「毎日毎日つまらん講義ばかり聞かされて飽き飽きしている。貴官もその内、味わう事になるだろう」
「俺は大尉止まりですよ。俺は士官学校を出てませんからね。それに勉強も嫌いですし」
「ウォーレイク元帥も士官学校を出ていないさ。私とて勉学が得意なわけでもない。それより北方戦線の話を聞いたか?」
「いえ。何か動きがありましたか?」
「ここの所、共和国側の国境付近が慌ただしくなっているそうだ。不穏な空気を察してか、普段は行商人が大勢行き交うマーツァル街道も人通りがまばらになっていると言う」
マーツァル街道といえば帝国と共和国を結ぶ大街道だ。
街道沿いには宿場町もあるくらい賑わっていると聞いた事がある。
その街道から人が消えた。
いよいよ、怪しくなってきたな。
「既に北方方面軍は出撃準備を整え、相手より先に出撃しかねない状態らしい」
「北方方面軍司令のレッドウッド辺境伯は噂通りの方のようですね」
北方方面軍司令長官、オリバー・フォン・レッドウッド辺境伯。
貴族でありながら軍人として高い名声を受けた人で、家督を継ぐ前は身分を隠したまま数々の戦場で武勲を立てた英傑との事だ。
「あの方は直情的ではあるが、戦況を見れない方ではない。今は打って出ることはないだろう。だが、いずれにしても北方戦線は近いうちに戦端が開く。貴官にも出撃命令が出る可能性が高い。いつでも出れる準備をしておけ。じゃあな」
ヴォルガング少佐はそれだけ言うと俺の肩をポンと叩いて帰っていった。
わざわざ軍令部から情報を持ってきてくれるなんて、相変わらず優しい人だ。
「それにしてもいよいよ戦端が開くかもしれない、か。俺達も準備を怠らないように……って、何してんだ? お前達」
練兵場内を走らせていた部下達がいつの間にか、俺の真後ろに集まっていた。
はて? 集合命令なんか出したっけ?
「た、大尉殿! い、今の方はもしかして……」
「アリシア・フォン・ヴォルガング少佐だけど、それがどうかしたのか?」
「す、すげぇ美人だったな」
「あれがヴォルガング教官の御息女か……」
「その方と親しげに……やっぱりあの噂は本当だったのか?」
なんかごちゃごちゃ言ってるな。
どういう事だ?
「おい、フェルナン少尉。何の話だ? 噂ってなんだよ?」
「は、はいっ! じ、実は大尉殿がその……」
「俺が? なんだよ。怒らないから言ってみなよ」
「そ、そうですか? 実はその噂ってのは大尉殿が色んな女性に手を出している女ったらしって噂でして……」
へ? 女ったらし? 俺が?
……誰だっ!?
そんな噂流した奴は!?
他の奴らも概ね真面目に従ってくれるようになった。
でも、本当は違うんだよなぁ。
俺ってもっと和気藹々としたかったんだよ。
こんな力でねじ伏せるのってどうなんだ?
いや、軍隊らしいといえば軍隊らしいのかもしれないけど、なんか腑に落ちないんだよなぁ。
「ほぅ。猛訓練で部下をしごいていると聞いたが、なかなかじゃないか」
「ヴォルガング少佐? 珍しいですね。今日はどうされたのですか?」
ヴォルガング少佐は昇進後は軍令部に出向して専門教育を受けている。
少佐は中隊規模の司令官だ。
尉官を統括して組織的に動かす事もあるため、個人としての能力だけでなく集団を指揮する能力が必要となる。
だから佐官に昇進すると専門教育を受ける必要があるんだそうだ。
「毎日毎日つまらん講義ばかり聞かされて飽き飽きしている。貴官もその内、味わう事になるだろう」
「俺は大尉止まりですよ。俺は士官学校を出てませんからね。それに勉強も嫌いですし」
「ウォーレイク元帥も士官学校を出ていないさ。私とて勉学が得意なわけでもない。それより北方戦線の話を聞いたか?」
「いえ。何か動きがありましたか?」
「ここの所、共和国側の国境付近が慌ただしくなっているそうだ。不穏な空気を察してか、普段は行商人が大勢行き交うマーツァル街道も人通りがまばらになっていると言う」
マーツァル街道といえば帝国と共和国を結ぶ大街道だ。
街道沿いには宿場町もあるくらい賑わっていると聞いた事がある。
その街道から人が消えた。
いよいよ、怪しくなってきたな。
「既に北方方面軍は出撃準備を整え、相手より先に出撃しかねない状態らしい」
「北方方面軍司令のレッドウッド辺境伯は噂通りの方のようですね」
北方方面軍司令長官、オリバー・フォン・レッドウッド辺境伯。
貴族でありながら軍人として高い名声を受けた人で、家督を継ぐ前は身分を隠したまま数々の戦場で武勲を立てた英傑との事だ。
「あの方は直情的ではあるが、戦況を見れない方ではない。今は打って出ることはないだろう。だが、いずれにしても北方戦線は近いうちに戦端が開く。貴官にも出撃命令が出る可能性が高い。いつでも出れる準備をしておけ。じゃあな」
ヴォルガング少佐はそれだけ言うと俺の肩をポンと叩いて帰っていった。
わざわざ軍令部から情報を持ってきてくれるなんて、相変わらず優しい人だ。
「それにしてもいよいよ戦端が開くかもしれない、か。俺達も準備を怠らないように……って、何してんだ? お前達」
練兵場内を走らせていた部下達がいつの間にか、俺の真後ろに集まっていた。
はて? 集合命令なんか出したっけ?
「た、大尉殿! い、今の方はもしかして……」
「アリシア・フォン・ヴォルガング少佐だけど、それがどうかしたのか?」
「す、すげぇ美人だったな」
「あれがヴォルガング教官の御息女か……」
「その方と親しげに……やっぱりあの噂は本当だったのか?」
なんかごちゃごちゃ言ってるな。
どういう事だ?
「おい、フェルナン少尉。何の話だ? 噂ってなんだよ?」
「は、はいっ! じ、実は大尉殿がその……」
「俺が? なんだよ。怒らないから言ってみなよ」
「そ、そうですか? 実はその噂ってのは大尉殿が色んな女性に手を出している女ったらしって噂でして……」
へ? 女ったらし? 俺が?
……誰だっ!?
そんな噂流した奴は!?
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