食うために軍人になりました【一人称版】

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第三章

模擬戦

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「それで? つまり俺はジェニングス中将、ヴォルガング少佐、リンテール中尉と関係を持ちつつ、ウォーレイク閣下にも取り入った不埒者……というわけか?」

「お、俺が言ったんじゃないですよ! た、ただ軍令部内ではそんな噂があって……」

 俺の不機嫌さを自分への怒りだと思ったのか、フェルナン少尉は慌てて取り繕っていた。
 少尉を怒るつもりはないんだけど、それにしたって腹立たしい噂だ。
 中将、少佐、中尉はともかく、閣下は男だぞ?
 俺は人の性的嗜好にまで口を挟むつもりはないが、俺自身の事となると話は別だ!
 断固として言わせてもらおう!
 俺は女性が好きだ!

「だいたい無茶な噂だと思わないか? 少佐と中尉は絶世の美女で、中将に至っては傾国の美女と言われる程の人だ。その3人全員と関係を持つなんて無理だろ?」

「だから大尉が付き纏ってるって……だから、俺が言ったんじゃないですよ! 剣を構えないでください!」

 おっと、いかん。
 つい刀に手が伸びてしまったようだ。
 それにしても俺は付き纏った覚えなんかないぞ。

「とにかく、その噂は根も葉もない出鱈目だ。今度聞いたら訂正して……いや、ほっといていいか。反応すれば面白がられるだけだ」

「はぁ……」

「そんな事より! ちょうど集まってるから言うが、北方戦線で動きがあったようだ。戦端が開かれるのも近いだろう。出動命令が出るかもしれん。皆も心しておけよ!」

「「「はっ!」」」

 おう、全員が揃って敬礼するとさすがに様になっている。
 しかし、見た目だけじゃ戦場では役に立たない。
 うーん、ここらで全員の実力を把握しておきたいところだし、やるか。

「その意気や良し! お前達の覚悟はわかった。しかし、俺自身お前達の実力を掴みきれていないし、そこに時間をかけている猶予もない状況である。よって、今から模擬戦を行いたいと思う」

「模擬戦……ですか? それは小隊を2つにわけて行うのですか?」

 質問してきたのは、えっと……ブラス曹長だ。
 確か小隊の最年長兵だっけ?

「ブラス曹長。小隊としての訓練で二手に分かれるのは効率的とは言えないよ」

「では、別の小隊と?」

「それは無理だ。今から急に言われても応じてはもらえないさ」

「では、一体……」

 みんなわからないと言った目をしているな。
 おや? 若干勘づいているのか青褪めている人もいるようだ。
 勘がいいと言うのは重要な事だよね?
 フェルナンくん。

「相手は俺1人だ。副小隊長であるフェルナン少尉指揮のもと、小隊員49人全員でかかってこい!」

 俺の命令にみんなが唖然としている。
 たった1人フェルナン少尉だけが小刻みに震えていた。
 大丈夫だよ、もう折ったりしない……はずだから!
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