食うために軍人になりました【一人称版】

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第三章

不穏な終焉

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 やれやれ、このまま大人しく終わるかと思ったところに殺気立った奴らが乱入してきちゃったよ。
 本当にしんどいから勘弁して欲しいな。

「小隊長! ご無事ですか!? おいっ! 早く治癒者ヒーラーを呼べ!」

「ルーストレーム様、お気を確かに! お前達、何をしている!? 早く治療せぬかっ!」

 来た奴らは互いを牽制するような陣形をとった。
 いや、もうお腹いっぱいなんですよ。
 みんなも帰ろうよ。

「小隊長にこれほどの傷を負わせるとは……やはり、相手はスティーグ・ルーストレームで間違いないようだな。全員に告ぐ! 気を抜くな!」

 いやいや、ブラス曹長まで熱くならないでよ。
 熱いのはフェルナン少尉だけで十分だって。

「おのれ、汚らわしい帝国の犬どもが! よくも麗しのルーストレーム様の身体に傷をっ! 総員、戦闘用意! 共和国特選隊の名誉にかけて奴等を血祭りに上げるぞ!」

 おいおい、向こうは向こうで盛り上がってるよ。
 マジで勘弁して欲しい。
 俺もルーストレームも回復魔法かけてもらってるけど回復の速度は遅い。
 それだけ重症って事なんだから、これ以上殺し合いなんてしたくないぞ。
 って、思ってる間にやる気満々になってるじゃん。
 こうなったらヤケになって死ぬまで戦ってやろうか?

「……やめろ」

 俺がシミターを左手に構えると、ルーストレームが向こうの隊長格を諌めた。

「ル、ルーストレーム様? や、やめろとは……」

「そのままの意味だ。撤退するぞ。全軍に通達せよ。全軍撤退だとな」

 ルーストレームの言葉に敵の援軍からはどよめきが起こった。
 
「ぜ、全軍撤退ですと!?」

「そんな我々はまだ……」

「ルーストレーム様、納得いく説明を!」

 隊員と思しき連中が口々に異議を唱えるのをルーストレームは黙って聞いていた。

「ルーストレーム様、御言葉を返すようで申し訳ありませんが、その命令は承伏しかねます。奴等は貴女の高潔なる身体に傷を……」

「……私の命令に叛くつもり?」

 っ! おおぉ……怖い怖い……
 何もそんなに脅かさなくてもいいでしょうよ。
 なんておっかない顔すんだ、この姉さんは。

「し、失礼しました。直ぐに撤退を……」

「わかればいいのよ。貴方、名前をもう一度聞いてもいいかしら?」

「俺? 帝国軍大尉、リクト・フォン・シュナイデンだよ」

「そう。リクト・フォン・シュナイデン大尉だったわね。共和国百勇士の第二席スティーグ・ルーストレームを倒したのは」

 あっ……いらん事言いやがったな。
 周りにいる奴らが俺を変な目で見てるじゃないか。
 特に隊長格さん、そんなに睨まないで。

「馬鹿なっ! ルーストレーム様が敗れるわけがないっ! そ、そんな事あってたまるかっ!」

「本当よ。彼が私の武器を持ってるのが何よりの証拠でしょ? わかったらさっさと撤退なさい。貴方達じゃ、あの人には勝てないわよ」

 なんでそう挑発するかなぁ。
 敵さん達からめっちゃ睨まれてるやん。
 
「じゃあね、大尉さん。次はきっと大尉じゃないだろうけど、また会える日を楽しみに待ってるわ」

「勘弁してくださいよ」

「いやよ。貴方がきにいったんだもん。私はしつこいわよ」

 うわぁ……ドン引きだよ。
 あんな恍惚とした表情でニタァと笑って……寒気がする。
 まぁ、帰ってくれるならいいか……
 ん? なんだ? あの隊長格?

「リクト・フォン・シュナイデン……名前は覚えたからな」

 おいっ! 
 そんな捨て台詞残して帰るなよ!
 絶対なんかしてくる気だろ!
 その人とはもう関わりたくねぇんだからな!

 

 
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