食うために軍人になりました【一人称版】

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第三章

横槍

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 粛々とした空間に無粋な言葉が飛んできたかと思えば、やっぱりあのハゲだ。
 いや、この言い方は他の同じ頭皮の人に失礼だな。
 少なくともアイツと同類にされるのは俺は御免だしね。
 さて、列から出てきて俺の横で膝をついて平伏したけど、この無能なる軍隊司令長官殿は一体何を話すつもりなのかな?

「……何か異議でもあるのか? ヴォルドン」

「はっ! 陛下の御言葉を遮りますは不敬と心得ますが、どうか私の言葉に耳を傾けてくださいますようお願い致します」

 回りくどい言い方するなぁ。
 だいたい不敬と心得てるなら控えればいいのに、口を開くあたりが更に不敬でしょ?
 不敬どころか不快だな。

「話してみよ」

「はっ! 恐れながら此度のシュナイデン大尉の武勲は見事なれど、当人が申しますようにルーストレームを取り逃してございます。これは帝国の軍隊司令長官職を預かります私としましては見過ごす事はできません」

「ならば卿はシュナイデン大尉を罰すると言うのか?」

「とんでもございません! それを差し引いても大尉の働きは素晴らしく、昇進を否定することは致しません」

「陞爵が不満と言うのか?」

「左様にございます。失礼ながらウォーレイク元帥の叙爵の際にも申し上げましたが、名誉ある帝国貴族の籍を職責における功にて与えるのは些か無粋ではないかと愚考する次第でございます」

「陛下っ! 恐れながらこのノルマイスターもヴォルドン閣下と同じ意見であります!」

「陛下! 私も!」

「小官も同意であります!」

 おいおい、なんの騒ぎだよ。
 列席してた一部の奴らが口々にヴォルドンに肩入れし始めたぞ?
 筋書き通りなのかもしれないけどね。
 
「控えよ! 陛下の御前なるぞっ!」

 宰相さんの一喝で騒いでた奴らは黙ったけど、相変わらずヴォルドンの奴だけは引かないようだな。
 未だに列に戻ろうとしない。

「陛下、何卒ご再考を」

「なるほどな。卿の意見にも一理ある。では卿に免じて一度は再考するとしよう」

「はっ! ありがとうございます!」

 お? 陛下がヴォルドンの意見を聞くとは珍しい。
 でも、これはこれでいいか。
 ヴォルドンの思い通りになるのは癪だけど、准男爵になれなかったらロンドベルゲンの領主の話も無しだ。
 つまり! 俺は明日から休みを満喫出来るのだ!
 これは僥倖だ。
 おいおい、チラッと俺を見て口角上げるなよ、ヴォルドンさんよ。
 俺として陞爵なんかしなくても……

「では再考の結果、改めてシュナイデン大尉に褒美を与える」

 はい? 陛下? もう再考したの?
 普通こういうのって後日とかになるんじゃないの?

「リクト・フォン・シュナイデン大尉を帝国軍少佐に任ずる」

「はっ、ありがたく……」

「そしてへと陞爵させ、現在帝国直轄領のロンドベルゲンの街を与える事とする!」

 はぁああああああああああ!?
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