食うために軍人になりました【一人称版】

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第三章

貴族の価値

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「だ、男爵ですとっ!?」

「陛下っ! 一体これはどういう事ですかっ!?」

「せ、説明を! 説明をお願いします!」

 すごい騒ぎになってきたな。
 さっきまではヴォルドンの派閥と思われる人達だけが騒いでたけど、今回は他の人達もかなり慌てているようだ。

「陛下っ! これは如何なるお沙汰でしょうかっ!? 納得のいく説明をっ!」

 ヴォルドンの奴も顔を真っ赤にして陛下に問い詰めてる。
 それにしても周りの奴らもだけど、激昂してないで冷静になって欲しい。
 
「静まれっ! これ以上、陛下の御前での無秩序な振る舞いは許さぬぞ!」

 また宰相さんが吼えた。
 っていうか、注意するのが2回目だからかさっきより機嫌が悪いような気がするな。
 だって、言葉に殺気が篭ってるもん。
 そのおかげでとりあえずの混乱は鎮まったけどね。

「ヴォルドン。この私に対する無礼な振る舞いが卿の言う『名誉ある帝国貴族』の振る舞いか?」

「……取り乱しまして申し訳ありません。ですが、陛下何卒ご説明をお願い致します」

「説明とは?」

 あれはわかってて惚けてるな。
 段々、陛下らしさが垣間見えてきた。

「シュナイデン大尉の男爵への陞爵の事でございます」

「何を言う? 卿の言を聞き届けてやっただけではないか」

「申し訳ありません。浅学非才の我々には陛下の御心を理解する事が叶わず……」

「卿は言ったではないか。シュナイデン大尉の准男爵への陞爵が不満だとな。だから再考してやったのだ。准男爵が不満であれば男爵なら満足であろう?」

 うわぁ……すごい嫌な笑みを浮かべてるよ。
 なんだろう、言葉で表すなら『ニヤァ』って感じか?
 あれは悪党の笑い方だぞ。

「へ、陛下……私が申し上げたのは陞爵の事で、准男爵の爵位が不満と申したのでは……」

「黙れ、ヴォルドン。卿の意を汲んで私が意を再考してやったと言うのにまだ不満と言うか? それは私に対する反意か?」

「め、滅相もございません!」

 陛下に対する反意と言われて、流石のヴォルドンも顔を真っ青にしてるな。
 しかし、俺の意見も聞かずにどんどん話が進んでいくなぁ。
 俺は別に男爵になんて興味ないんだけど、この雰囲気じゃ断りようがない。
 はぁ……ヴォルドンの奴、余計な事を言ってくれたもんだよ。

「シュナイデン大尉。前に出よ」

「……えっ! あっ、はいっ!」

 急に呼ばないで欲しい。
 ビックリしたじゃないか。

「貴族証を前に」
 
 陛下の前で平伏すると宰相さんからそう言われた。
 貴族証って、この指輪だよな?
 そのまま手を出せばいいのか?

「では、陞爵の儀を行う。リクト・フォン・シュナイデン騎士爵を男爵へと叙す。これよりは卿はリクト・フォン・シュナイデン男爵だ。これからも卿の働きに期待する」

「はっ! 身命を賭して帝国のために」

 俺が返事をすると、指輪が淡く光った。
 よく見ると、指輪に光文字で《ヴァランタイン帝国男爵》と書いてあるな。
 これで爵位がわかる仕組みな訳だ。
 便利なことだね。
 っていうか、男爵になっちゃったよ。
 これから俺はどうなるんだ?
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