食うために軍人になりました【一人称版】

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第三章

制裁

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「へ、陛下……」

 青褪めた顔のカールハインツ君がゆっくりと後ろを確認して、今度は白くなった。
 血の気が引くってよく言うけど、ここまで引くものとは思わなかった。

「卿は何者か?」

「し、失礼致しました! カールハインツ・フォン・ゲートハイル男爵です! あのケラー公爵の……」

「ゲートハイル……ゲートハイル? おい、ドレッド」

「ケラー公爵の妹君の御夫君の再従兄弟の次男の御妻君の兄君の三男ですよ。今はケラー公爵領で代官見習いをしている筈です」

 遠いよっ!
 果てしなく遠いよっ!
 血縁関係があるかないかって言ったらあるんだろうけど、ほとんど他人じゃねえか!
 っていうか、宰相さん凄えよ!

「ふむ、それは置いておくとしてゲートハイル卿は私の采に不満があるようだな?」

「へ、陛下……こ、この場を借りて失礼致しますが、わ、私はシュナイデン卿の陞爵には納得しかねます!」


「ほぅ……理由を聞こう」

「め、名誉ある帝国貴族の門地は伝統と格式をもって脈々受け継がれていく神聖なものです! それが出世のために下賜されていくのは……」

「では卿は何の功を持って男爵となったのだ?」

「えっ……」

 調子に乗りすぎだ、アホ。
 陛下がめっちゃ怖い顔してるぞ。

「授爵や陞爵を出世のためと卿は言うが、では卿は何故男爵位を持っているのだ?」

「そ、それは……私が選ばれた帝国貴族で……」

「愚か者がっ!」

 っ! び、びっくりした……
 なんて気迫だよ、一瞬身体中に電撃が走ったくらいに焦ったよ。
 カールハインツの奴なんか腰抜かしてるじゃないか。

「帝国貴族とは帝国を繁栄させる全ての者達の範となる者達のことだ! 選ばれただと? 卿は何を勘違いしているのか! 選民意識の塊である卿に帝国貴族を名乗る資格はない! ドレッド! ゲートハイル男爵家は廃爵とする! よいな!?」

 まさかの急転直下の没落劇っ!
 怖い、怖過ぎるよ、陛下!
 傲慢だったカールハインツ君も涙目ですよ!

「そ、そ、それはあんまりです! 陛下、ご再考を! 私は帝国の未来を案じているだけなのです! さ、宰相殿! なんとか仰ってください!」

 宰相さんに泣きつくんかい?
 まぁ、流石にやり過ぎな気もするからわかるけどね。

「陛下……それは些か早計ではありませんか?」

 ほら、やっぱり宰相さんも……
 
「このような帝国貴族として看過できぬ教育をしたケラー公爵家に対しても制裁を加えるべきです。彼はケラー領の代官見習いですからな。知らぬ存ぜぬは通用しますまい。制裁金と領地割譲くらいは覚悟していただきましょう」

 より過激な意見だったのね……






 
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