食うために軍人になりました【一人称版】

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第三章

領民の想い

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 陽が傾きかけた頃、ロンドベルゲンの街に着いた俺達だったが、
 ゆっくりと速度を落とした馬車は門の手前で止まった。
 馬車の前には悲壮な顔をした領民達が座り込んでいる。
 一体何をやっているんだ?
 
「旦那様、とりあえず私が話を聞いて参ります。馬車からお出にならないように」

 そう言うとテラーズは馬車から出て行った。
 とりあえず様子を見るか。
 テラーズは座っている領民には目もくれず、門を守っている兵士に声をかけている。

「これは何事か?」

「あっ、あの……貴方は領主様の……」

「執事だ。これでは旦那様が街に入れないではないか。この者達を退け、門を開いてもらおう」

 抑えているけど、結構怒ってるな。
 そんなに怒らなくてもいいと思うけどね。

「そ、それは……」

「帰れ!」

 なんか大声を出した人がいるぞ。
 座っている領民の人かな?
 ……おいおい、テラーズ。
 そんな怖い顔するなよ。

「今、囀ったのはどなたですかな? 耄碌した私の耳には『帰れ』と聞こえましたが、聞き間違いでしょうか?」

「こ、ここは俺達の街だ! よ、余所者に勝手されてたまるか!」

「そうだ、そうだ! ここは帝国直轄地のままでいいんだ! 田舎者は帰れ!」

「ま、街の女達を慰み者にさせるものか!」

「ここは由緒正しきロンドベルゲン様の領地だ!」

 ふーん、なるほど。
 領民達の言い分は理解した。
 でも、言う相手を間違えてるよ。
 
「……ここは帝国直轄地であり、陛下のご意志によってシュナイデン男爵に下賜された地である。其方達がやっている事は帝国の法を犯す行為と理解しているのですか?」

「うっ……へ、陛下の……」

「それは……その……」

「うるさい! 我々は断固として拒否するぞ!」

「そうだ! 暴力で街を支配するような輩を街に入れるわけにはいかないんだ!」

「妻子を守れ!」

「そ、そうだ! 俺達は家族を守るんだ!」

「貴様ら……」

 テラーズ、めっちゃ怒ってるやん。
 それにしても妙な話だな。
 いや、待てよ。
 もしかして……やっぱりそうだ!
 なんかおかしいぞ、あいつら。

「其方達の覚悟はわかった。では、帝国の法に乗っ取り、其方達を捕らえる事にしよう。門兵がやらぬと言うなら、この私が直々に……」

 おいおい、本気か? テラーズらしくないな。
 ここは俺が出てみるか。
 
「ちょっと待ってくれ、テラーズ」

「旦那様。馬車から出ないようにと申し上げたはずです」

「俺が出なかったらテラーズは領民に何してたんだよ? ちょいと気になる事があるから確認させてくれ」

 俺はテラーズを制して、道に座り込んだ領民達の前に立った。
 俺を見るやポカンとする者、動揺する者、敵意を剥き出しにする者と色々だった。

「あ、貴方がシュナイデン男爵様?」

「若いぞ? 本当か?」

「悪名高い田舎者は帰れ!」

「そうだ! この女ったらしめ!」

「か、帰れ!」

 さっきと同じような罵声が飛び交って、テラーズの苛立ちが露わになっている。
 でも、やっぱりおかしいね。
 この人達。
 
 
 
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