209 / 480
第三章
何者?
しおりを挟む
「ブルフェン子爵は帝国東部のジェニングス辺境伯領の隣に領地を持つ方です。海産物の交易で財を成した一族で、資金力はかなりのものです」
「お金持ちってことか。でも、何でその子爵が俺に嫌がらせするんだ? 会ったこともないぞ?」
「理由は色々ありますが、一つはこの街です。先にも言った通りブルフェンは海産物の交易を行っており、帝都に海産物を流通させるにあたってこのロンドベルゲンは良い中継地点だったのです。それを取られた腹いせですな」
逆恨みじゃねえか!
それにこの街は田舎で誰も欲しがらない街って言ってたじゃないか!?
「ロンドベルゲンは誰も欲しがらないんじゃなかったのか?」
「帝都郊外の田舎のままならそうです。ですが発展し、貿易の中心地ともなれば誰もが欲しがる土地でしょうな。そもそも帝都から馬車で二日と言えばかなりの好立地なのですよ? ただ、発展のための初期投資には莫大な費用が必要です。それに余程上手い領地経営をしないと人も集まらないでしょう。下手をすれば初期投資分が水の泡にもなりかねません。そんな危ない橋を渡る貴族はおらず、結果として誰も欲しがってないわけです」
でも金持ちのブルフェン子爵は潤沢な資金があるからこの街に目を付けた。
なのに俺が急に領主になったもんだから腹が立ったわけか。
「それともう一つ。ブルフェン子爵は此度の騒動で旦那様の弱みを握り、それをネタに旦那様を自身の手駒にしようと思っていた節もあるようです」
「俺の弱み?」
「就任早々領民に暴行をはたらいたとなれば公明正大な陛下はお怒りでしょう。良くて解任、悪ければお家断絶もありえますからね。言われたくなかったら言う通りにしろ……そんなところでしょう」
はぁ……本当に貴族ってつまんない事するね。
主導権を握りたいってのはわからないでもないけど、それにしたってやり方が狡い。
なんか情けなくなってきたよ。
「まぁブルフェン子爵にはそれなりの賠償金を払ってもらい、この街の発展のための資金とさせてもらいましょう」
「そうだな、賠償金を……ん? もしかしてテラーズ。それも狙いだったんじゃないのか?」
「なんの事ですかな?」
「テラーズはブルフェン子爵の動きが事前にわかってたんだろ? 奴らを泳がせて騒動を起こしてから捕まえる。そしてこの街の発展のための資金をブルフェン子爵から賠償金って形でとろうとしたんじゃないのか?」
テラーズは何も言わずに俺をじっと見ていたが、やがてほくそ笑むだ。
「旦那様は想像力が豊かですね。素晴らしい。これはお仕えするのが楽しみです」
テラーズはそれだけ言うと屋敷に向かって先に歩いて行った。
話を逸らすのが下手なのはお互い様だ。
それにしても、さっきの影魔法といい、今回の情報収集早さといい……テラーズって一体何者なんだ?
「お金持ちってことか。でも、何でその子爵が俺に嫌がらせするんだ? 会ったこともないぞ?」
「理由は色々ありますが、一つはこの街です。先にも言った通りブルフェンは海産物の交易を行っており、帝都に海産物を流通させるにあたってこのロンドベルゲンは良い中継地点だったのです。それを取られた腹いせですな」
逆恨みじゃねえか!
それにこの街は田舎で誰も欲しがらない街って言ってたじゃないか!?
「ロンドベルゲンは誰も欲しがらないんじゃなかったのか?」
「帝都郊外の田舎のままならそうです。ですが発展し、貿易の中心地ともなれば誰もが欲しがる土地でしょうな。そもそも帝都から馬車で二日と言えばかなりの好立地なのですよ? ただ、発展のための初期投資には莫大な費用が必要です。それに余程上手い領地経営をしないと人も集まらないでしょう。下手をすれば初期投資分が水の泡にもなりかねません。そんな危ない橋を渡る貴族はおらず、結果として誰も欲しがってないわけです」
でも金持ちのブルフェン子爵は潤沢な資金があるからこの街に目を付けた。
なのに俺が急に領主になったもんだから腹が立ったわけか。
「それともう一つ。ブルフェン子爵は此度の騒動で旦那様の弱みを握り、それをネタに旦那様を自身の手駒にしようと思っていた節もあるようです」
「俺の弱み?」
「就任早々領民に暴行をはたらいたとなれば公明正大な陛下はお怒りでしょう。良くて解任、悪ければお家断絶もありえますからね。言われたくなかったら言う通りにしろ……そんなところでしょう」
はぁ……本当に貴族ってつまんない事するね。
主導権を握りたいってのはわからないでもないけど、それにしたってやり方が狡い。
なんか情けなくなってきたよ。
「まぁブルフェン子爵にはそれなりの賠償金を払ってもらい、この街の発展のための資金とさせてもらいましょう」
「そうだな、賠償金を……ん? もしかしてテラーズ。それも狙いだったんじゃないのか?」
「なんの事ですかな?」
「テラーズはブルフェン子爵の動きが事前にわかってたんだろ? 奴らを泳がせて騒動を起こしてから捕まえる。そしてこの街の発展のための資金をブルフェン子爵から賠償金って形でとろうとしたんじゃないのか?」
テラーズは何も言わずに俺をじっと見ていたが、やがてほくそ笑むだ。
「旦那様は想像力が豊かですね。素晴らしい。これはお仕えするのが楽しみです」
テラーズはそれだけ言うと屋敷に向かって先に歩いて行った。
話を逸らすのが下手なのはお互い様だ。
それにしても、さっきの影魔法といい、今回の情報収集早さといい……テラーズって一体何者なんだ?
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
960
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる