食うために軍人になりました【一人称版】

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第三章

新しい朝

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「ふわぁああああああああ……」

 あー、もう朝か。
 あれ? 今日って何だっけ?
 休みだよな? 仕事の日じゃないよな?
 なんか夢なのか現実なのかよくわからないなぁ。
 んんん……ここ何処だ?
 何でこんなフカフカのデカいベットで寝てるんだ?
 部屋はめっちゃ広いし、めっちゃ綺麗じゃないか。
 何で俺はこんな所にいるんだ?
 んんん……昨日は何してたんだっけ?
 えっと……

「おはようございます、旦那様」

「だぁああああああああ!」

 な、な、な、な、なんだっ!?
 いつからベットの横にいたんだっ!?
 全然気付かなかったぞ!

「旦那様。以前にも申し上げましたが、たとえ自宅でも緊張感を持ってください。油断すれば如何なる強者も卑劣な罠に堕ちる事もあるのです」

「落ち着けない自宅に何の意味が? っていうか、ここは自宅じゃないだろ? 何処なんだ?」

 言葉を失ったかのように固まるテラーズ。
 やがて呆れ顔に変わった後に冷たい視線を向けられた。
 なんか変な事言ったかな?
 
「何を寝ぼけてるんですか? ここはロンドベルゲンの領主屋敷。つまり、領主である旦那様の自宅です」

 はっ! そ、そうだった。
 昨日の夜、俺はこの街に着いて飯食った後案内された部屋に入って、それから……んー、記憶がないな。

「旦那様はこの部屋に入るなり、フラフラとベットに横たわっておられましたよ。よくお休みになられたようで良かったですね」

「つ、疲れてたんだよ……それにしてもここが俺の部屋か? なんか広過ぎて落ち着かないんだけど」

 俺が寝ているベットもそうだが、部屋の中は何もかもが違い過ぎる。
 部屋の広さは帝都の家くらいあるし、置いてある家具も調度品も全部高そうで居心地が悪いったらありゃしない。

「貴族で領主ともなると体面も気にしないといけません。領主がみすぼらしい生活をしていると、その領地に住まう者まで侮られる事になりますよ」

「それは困るけど……じゃあ表向きはここが俺の部屋って事で、他に空いてる小さい部屋を普段は使うってのはどうだ?」

 俺の提案にテラーズは少し悩んだように視線を逸らしたが、軽く溜息を吐いた後にゆっくり視線を戻した。
 どうやら折れてくれるらしい。

「仕方ありませんな。執務室の隣に本来は書斎として使う部屋があります。そこを使われてはどうですか?」

「おおおっ! ありがとう、テラーズ! さすが有能な執事は違うね!」

「煽てもこれ以上の譲渡はありません。それと代わりに今日からのスケジュールには一切手を抜きませんので。では、お早く御支度を」

「え? ちょ、ちょっと待って! て、手を抜かないって……テラーズさぁあああん!」

 俺の声が聞こえていないかのようにテラーズは部屋からサッと出て行った。
 ひ、酷い……

 
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