食うために軍人になりました【一人称版】

第三章

領民代表

「申し訳ありませんでした！」

　俺の姿を見た途端、その場にいたテラーズを除いた人達が床に伏して謝ってきた。
　玄関ホールに集まった領民の代表って人達は10人。
　テラーズの説明ではロンドベルゲンの冒険者組合のギルドマスターや商会の会長とか、この街に住む名士階位の人達全員が集まったんだそうだ。
　俺としては親と同じくらいの領民に頭を下げさせる続けるのは気が引ける。
　もう十分だろ。

「今回の件はもう……」

「旦那様は大変お怒りです」

　えっ！？　テ、テラーズ？
　急に何を言い出すんだ？

「事もあろうに領主就任のめでたき日に領主の入街を妨害し、挙句に非難するとは言語道断。首謀者及び一族郎党死刑となってもおかしくないのだぞ」

「ひっ！」

「い、一族郎党……死刑……」

「そ、それだけは御容赦を！　何卒、何卒御慈悲を！」

　いや、そんなに床に頭を擦り付けなくていいから。
　や、やめて……
　そんなに怯えた眼で見ないで……
　こ、心が抉られる！

「ですが、寛大な旦那様はこれから皆が旦那様の統治に尽力するなら、此度の蛮行については不問に処すとの事です」

「ほ、本当ですか！？」

「尽くします！　精一杯尽くさせていただきます！」

「末代まで領主様に忠誠を尽くします！」

　いや、忠誠って……
　参ったなぁ……俺はそんなつもりじゃないんだけど。
　まぁ、これで収まるんならこれでいいか。

「うん。じゃあ、これからの尽力に期待するよ」

「もし、次に不忠があれば……《ダウスターの惨劇》がロンドベルゲンにも現れる事になるでしょう」

　テラーズ……余計なことを。
　ほら、みんな完全に顔が青ざめちゃってるじゃないか！

「あ、あの恐ろしい《ダウスターの惨劇》が……」

「も、もちろんです！　二度と……二度と不始末は致しません！」

「ほ、他の者達にもよく言い聞かせておきます！　必ず言い聞かせます！」

「ですから何卒、何卒御慈悲を！」

　完全な恐怖政治やん。
　俺は絶対にこれだけはしたくなかったのに……テラーズのやつめ、必要以上に脅かしすぎだよ。

「では、今すぐ戻って皆に伝えてください。それと今後の領地運営、つまり税についての話もしたいので明日の午後一番に再度集まってください。当然、税の額も計算して数値化してくるように」

「は、はい……」

「仰せのままに……」

　膝をついたまま項垂れる代表達。
　テラーズめ、これが狙いだったか。
　引け目を感じさせて税金を上乗せさせるつもりだな。
　しかし、こればっかりは良くない。
　それにテラーズの手の平で俺まで踊らされるのは癪だからな。

「各代表は正確で詳細な収支報告も持ってきてくれ。怠れば困る事になるぞ？」

「は、はいっ！」

「わかりました！」

　うんうん、いい返事だ。
　ん？　なんが青ざめてるやつが何人かいるみたいだけど、気のせいか？