食うために軍人になりました【一人称版】

KBT

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第四章

領兵志願

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 《英雄殺し》……なんて物騒な言葉なんだ。
 子どもが聞いたら泣き出しそうだ。

「何なんですか? その物騒な名前は?」

「卿の事に決まってるだろう? 共和国の百勇士の1人を討ち取り、あの大英雄ルーストレームすら退けたのだからな。当然だろう」

「だからって、もうちょっと他になかったんですかねぇ……」

「二つ名なんて箔をつけるためのものだからな。格好つけても仕方ないのだよ」

 格好つけたい訳じゃないんだけど、流石に《殺し》という言葉が付くのは嫌だなぁ。
 とは言っても元が《ダウスターの惨劇》だからあんまり変わらないか……

「まぁ、二つ名は置いておくとして、とにかくロースター曹長を歓迎します。領兵第一号ですね」

「失礼。旦那様、少し宜しいですか?」

 テラーズ? 珍しいな。
 来客中に口を挟むなんて今までした事ないんだけど。

「どうした?」

「領兵募集の件なのですが、少々困った事になっておりまして。ロースター曹長を先に呼んだのも関係しているのです」

 困った事? 
 もしかして全然募集がないとか?
 でも、それも当然だ。
 ダウスターと違って帝都の近くなら他に職だってあるだろうし、普通に考えたら片田舎の小領の軍になんか入りたがらないだろう。

「集まりが悪いのは仕方ない。集まらない間は今いる帝都の部隊の駐留を延長してもらえるように掛け合って……」

「違います。集まり過ぎております。100人の募集に5倍以上の671名の応募がありました。更に今後も増えていく事が予想されます」

「ろ、ろっぴゃくななじゅういち!? そんな馬鹿な……しかもまだ増えるって、どうなってるんだ? 皆んな勘違いしてるのか?」

「そうではありません。旦那様はご自身の影響について認識を改める必要があると思います。数々の武功は腐った貴族どもには目障りでしょうが、若い兵達にとっては羨望の的なのです。ロースター曹長も言っていましたが、旦那様の下で働きたいという者達はかなりいます。例えば元第78小隊の面々とかですね」

 第78小隊って、あいつらか!?
 
「フェルナン少尉が来たのか?」

「ええ。他にもブラス曹長やベンノ兵長、というか全員ですな。49名全員が一斉に転属願いを出したそうです。しかも私達が領兵の募集をかける前だったそうで、軍令部も深く考えてなかったのでしょう。全員受理されております。ですので領兵としてはロースター曹長を合わせて50人は決まってます」
 
 50人って……それは当初の領軍予定人数じゃないか。
 それにあと50人採用して100人となると、急いでこの街の軍施設も整備しないといけなくなる。
 ああ、また仕事が増えた……
 
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