食うために軍人になりました【一人称版】

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第四章

良い考え

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「良い機会だから、今回の士官学校の期間中にお前に色々叩き込んでやろうと思ってな。そのための専属だ」

「何を叩き込む気ですか? もう嫌な予感しかしないんですけど」

 本当に嫌な事しか思いつかない。
 例えば泊まり込みとか……

「簡単なことだ。在校中は士官学校の隣にある屋敷に住んで朝から晩まで実生活を通して貴族の生活についても学んでもらいたい」

 予感的中かよ!
 なんでこの人はいつも俺が嫌だと思う事をするんだよ!

「これまでは騎士爵だったが、お前も男爵となり、ロンドベルゲンの領主となったのだ。流石に今まで通りというわけにもいかん。そこでだ。高等士官学校に2年通うのなら、ついでに貴族としても色々学べばいいと思ってな。我ながら良い考えを思いついたものだ」

「えっと……一応、確認させていただきたいのですが……」

「拒否権はない」

 でしょうね!
 そうでしょうとも!
 帝国で一番偉い皇帝陛下の御指示ですからね!

「そんな顔をするな。ちゃんと世話役にテラーズも呼び寄せたんだからな」

「私も暇ではないのですがね」

 テラーズが一瞬冷たい視線を陛下に向けたが、陛下と視線が合う前にいつも通りの顔に戻っていた。
 さすがは元帝城の執事。
 ちゃんと心得てるな。

「お前にも言い分はあるだろうが、私としてはお前には成長してもらわねば困る事情もあるのだ」

 ん? 
 今度は随分と真面目なトーンで話し始めたな。
 雰囲気がコロコロと変わるから、どうにもこの人の真意は分かりづらい。
 
「陛下、それは……」

「良いのだ、テラーズ。これは私の面子がどうのこうのと言っている場合ではないからな。シュナイデン卿、ロンドベルゲンは帝都の南方に位置する小さな街だという事はわかっているな?」

「ええ、自分の領地ですから。それが何か?」

「現在南方を治めているミュラー辺境伯だが、領地を治める能力に関しては疑いようがない実力を持っている。だが、荒事には向いておらんのだ」

 それは知ってる。
 軍内部でも結構有名な話だからな。
 
「今はローゼンハイム上級大将がいるから良いが、いつまでもそのままというわけにもいかん。そこで卿には南方の要となってもらいたいのだ」

「おれ……いえ、私がですか? しかし……」

「すぐと言うわけではない。いずれの話だ。だが、その時に卿が貴族の作法も知らぬようでは困るからな。この2年間で軍人として貴族として成長する事を期待している」

 うっ……
 強い眼でこっちをじっと見ないで欲しい。
 この人って本気の時は威圧感が半端ないんだよなぁ。
 2年……はぁ、やるしかないか。

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