食うために軍人になりました【一人称版】

KBT

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第五章

2年ぶりの帰宅

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「この情報が全てだとするなら、彼女が疑わしい存在なのは間違いありません」

「ええ。ですが、あくまで疑わしいだけです。過度な反応は厳に慎んでください」

「了解致しました」

「では、本日はこれで結構です。2年ぶりに御自宅に戻ってくださって結構ですよ」

 閣下は笑みを浮かべながらそう言った。
 なんだろう……なんか引っかかるな。
 少しカマをかけてみるか。

「ありがとうございます。ですが、閣下。何か小官に隠してる事はございませんか?」

「中佐。2年の間に随分と猜疑心が強くなったようですね。軍人としては正解ですが、私としては特に何も隠していませんよ」

 うーん、いつもと変わらない閣下だ。
 特に動揺してる素振りもない。
 俺の気のせいだったかな?

「失礼しました! では、小官はこれで」

「はい。馬車を用意してますから、どうぞ使ってください」

「ありがとうございます。お心遣いに感謝致します」

 俺は敬礼してから部屋を出た。
 しかし、なんだろうなぁ。
 このモヤっとした感じは。
 なんか嫌な感じがするんだけど……

「中佐! こっちだ!」

 考え事をしながら階段を降りていると、玄関の方から声をかけられた。
 この声は……

「大佐? アンダーソン大佐ではありませんか!?」

「久しぶりだな。しかし……デカくなったな。天井に届きそうじゃないか」

「大佐、それは流石に言い過ぎですよ。しかし、大佐と目線が合うのは少し妙な気分です」

 中将より背の高い大佐と話す時はいつも見上げてたんだけどな。
 人に会う度に自分の背が伸びたんだって実感が湧いてくるな

「はははっ、確かにな。しかし、まだ幼さが残った顔をしていたが、精悍な顔つきなったな。同僚として頼もしく思うぞ」

「ありがとうございます。微力ながら全力を尽くします」

「おいおい、貴官で微力なら他の者は立つ背がないではないか。立ち話もなんだ、道すがら話そう」

「えっ? まさか大佐が?」

「うむ。閣下から貴官の馭者を拝命したのだ。では、参りましょう。中佐殿」

 大佐は悪い笑いをしてから玄関に向かっていった。
 こんな人だったかな?
 昔は影が薄いとしか思えなかったんだけど、意外と知り合いに対しては茶目っ気のある人なのかもしれないな。
 上官に馭者をしていただくのは悪い気がするけど、今日は久しぶりの帰宅って事で、ここは閣下と大佐のご厚意に甘えさせてもらうとしよう。

「おーい、中佐。早く行くぞ。俺はもう待ちきれんのだ!」

「はっ! 今、参ります!」

 大佐に呼ばれて俺は慌てて馬車に乗り込んだ。
 俺が乗るや否や馬車は車輪を進めていった。
 何を急いでるんだろ?
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