食うために軍人になりました。

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第五章

メインホール

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「ほ、本当に正面から行くのか?」

 屋敷の正面扉を前にして、若造どもが尻込みし始めた。
 ったく、さっき作戦を説明したとこだってのに仕方のない奴らだ。

「さっきも言っただろ? 貴族の屋敷ってのは入り口の向こうはメインホールだ。そこは来客が最初に目にする場所だから自分の権力を誇示するために価値の高い調度品とかを並べられて、一番豪華にしてあるんだよ。俺達はそいつをいただくんだ」

「で、でもよ……正面って言ったら一番警戒する場所じゃないか? 中に入った瞬間に囲まれたりするんじゃ……」

「ばかっ! ちょっとは頭を働かせろ! それは相手が敵襲を知っていればの話だろうが! だいたい警戒してるなら屋敷の中に賊を入れたりするかよ! 万が一、屋敷の中に兵がいたとしても、そのまま後退すれば良いだけの話じゃねえか!」

 俺の答えにようやく納得したのか、全員が頷き始めた。
 本当に力ばかり強くて、頭の弱い奴らばかりで困る。
 もう一回作戦を説明し直した方がいいな。

「いいか? 先ずはコソッと潜入してホールの金目の物を奪えばいい。使用人を無理に探す必要はない」

「使用人はいいのか?」

「カルロとザードのチームが東西から入って行ったからな。もし、あいつらから逃げてくるならここに来るだろう。だから、逃げ道を塞いでおくんだよ。使用人を何人殺そうが報酬は増えないが、金目の物をたくさん集めればそれだけ儲けだからな」

「なるほどな! よし、それで行こうぜ!」

 何が『行こうぜ!』だよ。
 この説明は3回目だぞ?
 一回で理解しろよ。

「副長、鍵が開いたぞ」

「でかした。潜入は俺から行く。あとは後方を警戒しつつ、順に入って来い」

 本来なら隊長である俺が最初に入るのはおかしいんだが、こいつらを先に入れて宝に目が眩んではしゃがれても困るからな。
 それにここには戦力になりそうな奴もいないから問題ないだろう。
 ゆっくり扉を押すと、扉がスッと開いた。
 引っかかりもなく、音もない。
 手入れが行き届いている証拠だ。
 これなら飾ってある調度品にも期待ができる。
 中を覗いたても人の気配はない。
 広々とした空間、どうやらメインホールで間違いないようだ。
 中央に2階へと続く大階段があって、部屋の左右に扉があるな。
 もし、使用人がカルロとザードのチームから逃げてくるならあの扉から出てくる可能性が高い。
 あそこは警戒しておこう。
 ん? やはりあったか!
 左右の壁に絵画が飾ってある。
 階段の脇にも高そうな壺が飾ってあるし、こいつは大当たりだ!

「おまえら、大声出すなよ。ゆっくり入って来い」

 小声で手招きして他の奴らを中に入れる。
 直前に言っておいたから声は出さなかったが、はしゃいでいるのがバレバレだ。

「いいか、美術品ってのは傷ひとつで価値が下がるんだ。慎重に運び出す……」

「触れないでください」

 絵画に手を触れようとした瞬間、頭上から声がした。
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