360 / 480
第六章
東方方面軍の腐敗
しおりを挟む
「そ、そんな事は……」
必死に何か反論しようとしている幹部達だったが、クリスティーヌの毅然とした態度に押されているのか今ひとつ迫力がない。
現に今もクリスティーヌのひと睨みで黙ってしまった。
帝国軍の将校が揃ってこのあり様って大丈夫なのか?
だんだん不安になってきたぞ。
「フェンドラとの貿易によって、ここサザントールは帝国でも有数の大都市となっていますわ。当然、利権を持っている方々の懐も随分と肥えますわよね?」
「なに? ……まさか!? 賄賂か!?」
もし、フェンドラと方面軍の幹部達が金で繋がっていたとしたら大問題だ!
今すぐにでもこいつらを捕縛して軍法会議にかけなければ……
「中佐。それは違いますわ。と言っても、当たらずとも遠からずでしょうけど」
「なに? どういう事だ?」
「賄賂なんて足の着きやすい事はなさいませんわ。ですけど、ここにおられる方々の親類縁者がこの街で商売をなさっているとしたらどうでしょう?」
「……なるほどな。それなら合法だし、自分達の懐も潤うというわけか」
反吐が出るような話だ!
経済が発展している街で商売すれば、それだけ多くの利益を得ることが出来るだろうからな!
家族が儲けた金なら贈収賄には当たらないって事かよ!
こいつら、腐ってやがる!
「な、何を勝手なことを! デタラメを言うと承知せん……」
「あら? アーベントロート大佐の奥方様の御実家は珍しい帝国より北の工芸品をたくさん取り扱っておられるテラン商店ではありませんでしたか?」
「ぐっ……な、何故それを……」
帝国より北……つまり共和国からの輸入品か。
戦争と経済は別物とはいえ、よく戦争中の国からの商品を嬉々として売れるもんだ!
「よろしかったら他の方々も申し上げましょうか?」
幹部達は完全に沈黙していた。
なんで奴等だ……こいつらはフェンドラと敵対するのが嫌なんだ!
敵対してフェンドラに貿易を断わられるのが怖いんだ!
警備隊だけ動かしていたのは治安維持のためだったと言えば敵対した事にはならないって事か!
「閣下……どういう事か説明していただいてもよろしいでしょうか?」
「な、何を言う……? シュナイデン中佐。我々はただ敵の真意を見極めねば痛手を負うこともあると……」
「その通りだ。勇み足で虎の尾を踏む事もなかろう?」
「黙れ! 臆病者め! そもそも、この作戦は軍令部からの命令であり、貴官らはその美人を遂行する責務を負っているはずだ! 万が一に備えて防衛線を張ることもせずに何が真意を見極めるだ! いい加減な事を言うな!」
「な、なんだとっ! 黙って聞いておれば上官に向かって楯突く気か!」
「少しばかり出世したからと図に乗りおって! 上官反抗罪で拘束するぞ!」
「軍法会議にかけてくれる!」
「いいだろう! 拘束するってんならかかって来い! 相手になってやるぞ!」
「くっ……おのれ……」
幹部共は苦虫を噛み潰したかのような顔をしているが、口先ばかりで向かってこようとする奴は1人もいなかった。
これが……これが東方方面軍なのかよ!
ここも腐ってんのかよ!
「ええい! 警備兵を呼べ! こいつら全員を拘束……!?」
幹部の1人の喚き声と同時に会議室に入ってきた人がいた。
光沢のある銀髪に傷一つない艶のある肌、やや吊り目がちの切れ長の眼、誰もが認める絶世の美女。
「ジェニングス中将……」
必死に何か反論しようとしている幹部達だったが、クリスティーヌの毅然とした態度に押されているのか今ひとつ迫力がない。
現に今もクリスティーヌのひと睨みで黙ってしまった。
帝国軍の将校が揃ってこのあり様って大丈夫なのか?
だんだん不安になってきたぞ。
「フェンドラとの貿易によって、ここサザントールは帝国でも有数の大都市となっていますわ。当然、利権を持っている方々の懐も随分と肥えますわよね?」
「なに? ……まさか!? 賄賂か!?」
もし、フェンドラと方面軍の幹部達が金で繋がっていたとしたら大問題だ!
今すぐにでもこいつらを捕縛して軍法会議にかけなければ……
「中佐。それは違いますわ。と言っても、当たらずとも遠からずでしょうけど」
「なに? どういう事だ?」
「賄賂なんて足の着きやすい事はなさいませんわ。ですけど、ここにおられる方々の親類縁者がこの街で商売をなさっているとしたらどうでしょう?」
「……なるほどな。それなら合法だし、自分達の懐も潤うというわけか」
反吐が出るような話だ!
経済が発展している街で商売すれば、それだけ多くの利益を得ることが出来るだろうからな!
家族が儲けた金なら贈収賄には当たらないって事かよ!
こいつら、腐ってやがる!
「な、何を勝手なことを! デタラメを言うと承知せん……」
「あら? アーベントロート大佐の奥方様の御実家は珍しい帝国より北の工芸品をたくさん取り扱っておられるテラン商店ではありませんでしたか?」
「ぐっ……な、何故それを……」
帝国より北……つまり共和国からの輸入品か。
戦争と経済は別物とはいえ、よく戦争中の国からの商品を嬉々として売れるもんだ!
「よろしかったら他の方々も申し上げましょうか?」
幹部達は完全に沈黙していた。
なんで奴等だ……こいつらはフェンドラと敵対するのが嫌なんだ!
敵対してフェンドラに貿易を断わられるのが怖いんだ!
警備隊だけ動かしていたのは治安維持のためだったと言えば敵対した事にはならないって事か!
「閣下……どういう事か説明していただいてもよろしいでしょうか?」
「な、何を言う……? シュナイデン中佐。我々はただ敵の真意を見極めねば痛手を負うこともあると……」
「その通りだ。勇み足で虎の尾を踏む事もなかろう?」
「黙れ! 臆病者め! そもそも、この作戦は軍令部からの命令であり、貴官らはその美人を遂行する責務を負っているはずだ! 万が一に備えて防衛線を張ることもせずに何が真意を見極めるだ! いい加減な事を言うな!」
「な、なんだとっ! 黙って聞いておれば上官に向かって楯突く気か!」
「少しばかり出世したからと図に乗りおって! 上官反抗罪で拘束するぞ!」
「軍法会議にかけてくれる!」
「いいだろう! 拘束するってんならかかって来い! 相手になってやるぞ!」
「くっ……おのれ……」
幹部共は苦虫を噛み潰したかのような顔をしているが、口先ばかりで向かってこようとする奴は1人もいなかった。
これが……これが東方方面軍なのかよ!
ここも腐ってんのかよ!
「ええい! 警備兵を呼べ! こいつら全員を拘束……!?」
幹部の1人の喚き声と同時に会議室に入ってきた人がいた。
光沢のある銀髪に傷一つない艶のある肌、やや吊り目がちの切れ長の眼、誰もが認める絶世の美女。
「ジェニングス中将……」
1
あなたにおすすめの小説
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる