食うために軍人になりました【一人称版】

KBT

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第六章

隔絶

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「やはり全員で来るべきであった。この者は強いである」

「確かにね! アタイの拳を避けるとは大したもんだよ。だけど、強い相手を倒した分だけボーナスが出るんだ。こうでなくっちゃ困るよ」

 俺は金のために狩られるの?
 賞金首になった気分だな。

「フォールさん。貴方はちゃんとお仕事をしてるんですか? あちらの方は元気たっぷりのようですけど?」

「うるさいなぁ……ちゃんとしてるよ。でも、こいつゴギブリ並みにしぶといんだよ! クソクソクソ! さっさと堕ちろよ! このゴミクソがっ!」

 なんか悪態つかれてるけど、もしかしてこの妙に身体が重たいのはあいつのせいか?
 道理で身体が思うように動かないと思ったよ!
 呪い……呪術ってやつか?
 厄介な事をしやがるな。

「はい。ドルトンさん。これで大丈夫ですよ」

「すまねぇ、シラナ。フォールの【呪詛繋ぎ】食らっててこの一撃とはな。こいつはマジで油断ならねぇぞ」

「そうなると僕達の役目は重大だね、キリコ」

「そうね、キリク兄さん」

 げっ! 回復者ヒーラーがいるのかよ。
 どこまで周到に計画されてんだよ!
 参ったなぁ。
 回復者を先に潰すのが定石だけど、その横に弓を構えた男と大楯持った女がいて護衛してるみたいだ。
 弓のせいで近づくのは困難だし、大楯が俺の攻撃を防いでる間に他の奴等が集中攻撃してくる可能性がある。
 これは簡単な陣形じゃないぞ。
 でも、これで全員の戦力がだいたい見えた。
 あの爺さんが司令塔で、双剣の男は動きの速い軽装戦士ってところだろう。
 あの喋りがムカつくのが毒使いで、あそこの眼鏡が氷魔法使いで、あの暗そうな奴が呪術士だな。
 あとは螺旋の槍を使う男と馬鹿力の女、回復者の女とそれを守る弓使いの男と大楯使いの女か。
 海神十二将だから2人足りないけど、それでも強敵には違いない。
 このまま持ち堪えられるか?

「儚き希望は早々に捨てるがよかろう。誰も貴殿を助けには来ぬ」

「なに?」

「せめて仲間を恨みながら死ぬ事のないよう教えておくのである。貴殿は既に儂の結界の中にいるのである。従って貴殿の存在は外部からは感知されぬのだ。故に救援が来ぬのも止むなし。仲間を恨んではならんのである」

 結界魔法っ!? 
 めっちゃ希少な魔法じゃないか!
 それに道理で最初から妙な感じがすると思ったよ。
 あの根暗の呪術のせいかと思ってたが、まさかいつの間にか結界の中に囚われてたとはな。
 いつ結界を展開したんだ?
 全く気づかなかったぞ。
 
「例えば先程からメイドらしき者が辺りをコソコソと動いておる。なかなかの手練れのようだが、流石に儂の結界には気づいておらぬのである」

 メイド……クラリス達か!
 いくらあいつらでも珍しい結界魔法に気付くのは無理だ。
 でも、俺が担当区域にいない事で異変に気づくかもしれない。
 まだ望みはあるな。

「考えている事がわかりやすい男である。言っておくが、どうにもできぬぞ。既に欺瞞情報を流してあるからな。貴殿は怪しい敵を見つけて単独で追跡中とな」

「そんな怪しい情報で騙せると思ってるのか?」

「こじつける理由さえあれば良いのである。それだけで方面軍は動かぬようにできるのである」

 クッ……フェンドラと揉めたくない上層部には確かに効果的だろうな。
 だかが中佐が1人居なくなったところで軍を動かす理由にはならないだろうし、俺は元々単独任務だからな。
 多少持ち場を離れても不思議じゃない。
 それにしても完全に東方方面軍は舐められてるな。
 あのジェニングス中将とその父君である辺境伯がこんな惨状を放置しているとも思えない。
 一体、誰が……

「では、そろそろ第二幕である。貴殿を全力で仕留めさせていただく!」

 爺さんの号令で敵が一斉に襲いかかってきた。
 これはマズいな……
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