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第六章
怒れるテラーズ
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このような事態になるとは、テラーズ一生の不覚。
諜報機関にまで奴等の手が回っていようとは思わなかった。
組織の腐敗は上からと言うが、影にまで及んでいるとなると、根本からの立て直しが必要となる。
欲に溺れた愚者共め、タダでは済まさぬぞ。
「テラーズ様」
「テレシアか。首尾は?」
音もなく部屋に入ってきたメイド姿のテレシアの報告は期待できそうにない。
主人に似て表情に出るようになったからだ。
「はっ……申し訳ありません。旦那様の担当区域周辺を探ってまいりましたが、誰もおりませんでした」
「それは旦那様を含めてか?」
「はい。周囲の探索も行ったのですが、何も。軍の方を調べましたところ、怪しい人影の追跡のために持ち場を離れると報告があったそうです」
虚偽だな。
旦那様は単独任務であり、通信兵も魔道通信機器も持っていないのだ。
どうやって連絡をするというのか。
その程度の事にも気付かぬ程兵士の質が落ちているのか、それともわかっていての事か。
どちらにせよ、旦那様が罠にかけられた可能性は高い。
しかし、旦那様を捕らえるなど私ですら容易ではない。
一体誰が……
「テラーズ様! 急ぎお伝えしたい事が……!?」
「騒ぐな」
「しっ……失礼しました……」
いかん。
あまりに騒がしかったので、ついソフィアに殺気を放ってしまった。
冷静さを欠くとは私も鈍ったものだ。
「報告を聞こう」
「はっ。エマと共に東方方面軍上層部を探りましたところ、フェンドラは奴等の親族が経営する店と優先的に取引を行なっていました。かなり価格や量も優遇されているようです。また、帝都の貴族からも昇進と褒賞を持ちかけられ、旦那様に不当な命令を出したようです。経緯はエマが引き続き調査しています」
やはりな。
いくらフェンドラに肩入れしているとはいえ、軍令部からの命令に方面軍のほとんどを動かしていないのはおかしいと思っていた。
愚かな者どもよ。
敵国の兵より自国の有能株の方が怖いと見える。
これだから馬鹿貴族は度し難いのだ!
「ソフィア。その貴族は誰かわかっているの?」
「ああ、帝都のボーエン伯爵だけど黒幕はケラー公爵みたいだ。他にもゲートハイル男爵や上級大将のノルマイスターも動いている。他にもケラー公爵の御機嫌伺いのために下級貴族達が動いてる! テレシア、この国は思ってた以上に馬鹿ばっかりだぜ!」
ソフィアと同意見だ。
しかし、我が主人はかなり恨まれておられるな。
ノルマイスターの腰巾着が動いておるのなら、その持ち主であるヴォルドンも動いておろう。
上級貴族と軍上層部のゴミ共には我が主人は自らの地位を脅かす存在にしか見えておらんようだ。
旦那様を失う事がどれほど帝国の損失となるかわからん程に頭の頂きから足の先まで腐敗しているようだ。
「テラーズ様。次のご指示は?」
「テレシアは引き続き旦那様の動向を追え。ソフィアとエマは上層部腐敗の確たる証拠を掴むのだ」
「クラリスは?」
「クラリスは私と共にジェニングス辺境伯家を調べている。もし、仮に当主が腐敗の一端を担っていれば……」
テレシアとソフィアの顔が恐怖からか引き攣っている。
やれやれ、私も主人に似て顔に出るようになったか。
だが、ここは敢えて隠す必要もない。
「その時は私がジェニングス辺境伯家を潰す」
諜報機関にまで奴等の手が回っていようとは思わなかった。
組織の腐敗は上からと言うが、影にまで及んでいるとなると、根本からの立て直しが必要となる。
欲に溺れた愚者共め、タダでは済まさぬぞ。
「テラーズ様」
「テレシアか。首尾は?」
音もなく部屋に入ってきたメイド姿のテレシアの報告は期待できそうにない。
主人に似て表情に出るようになったからだ。
「はっ……申し訳ありません。旦那様の担当区域周辺を探ってまいりましたが、誰もおりませんでした」
「それは旦那様を含めてか?」
「はい。周囲の探索も行ったのですが、何も。軍の方を調べましたところ、怪しい人影の追跡のために持ち場を離れると報告があったそうです」
虚偽だな。
旦那様は単独任務であり、通信兵も魔道通信機器も持っていないのだ。
どうやって連絡をするというのか。
その程度の事にも気付かぬ程兵士の質が落ちているのか、それともわかっていての事か。
どちらにせよ、旦那様が罠にかけられた可能性は高い。
しかし、旦那様を捕らえるなど私ですら容易ではない。
一体誰が……
「テラーズ様! 急ぎお伝えしたい事が……!?」
「騒ぐな」
「しっ……失礼しました……」
いかん。
あまりに騒がしかったので、ついソフィアに殺気を放ってしまった。
冷静さを欠くとは私も鈍ったものだ。
「報告を聞こう」
「はっ。エマと共に東方方面軍上層部を探りましたところ、フェンドラは奴等の親族が経営する店と優先的に取引を行なっていました。かなり価格や量も優遇されているようです。また、帝都の貴族からも昇進と褒賞を持ちかけられ、旦那様に不当な命令を出したようです。経緯はエマが引き続き調査しています」
やはりな。
いくらフェンドラに肩入れしているとはいえ、軍令部からの命令に方面軍のほとんどを動かしていないのはおかしいと思っていた。
愚かな者どもよ。
敵国の兵より自国の有能株の方が怖いと見える。
これだから馬鹿貴族は度し難いのだ!
「ソフィア。その貴族は誰かわかっているの?」
「ああ、帝都のボーエン伯爵だけど黒幕はケラー公爵みたいだ。他にもゲートハイル男爵や上級大将のノルマイスターも動いている。他にもケラー公爵の御機嫌伺いのために下級貴族達が動いてる! テレシア、この国は思ってた以上に馬鹿ばっかりだぜ!」
ソフィアと同意見だ。
しかし、我が主人はかなり恨まれておられるな。
ノルマイスターの腰巾着が動いておるのなら、その持ち主であるヴォルドンも動いておろう。
上級貴族と軍上層部のゴミ共には我が主人は自らの地位を脅かす存在にしか見えておらんようだ。
旦那様を失う事がどれほど帝国の損失となるかわからん程に頭の頂きから足の先まで腐敗しているようだ。
「テラーズ様。次のご指示は?」
「テレシアは引き続き旦那様の動向を追え。ソフィアとエマは上層部腐敗の確たる証拠を掴むのだ」
「クラリスは?」
「クラリスは私と共にジェニングス辺境伯家を調べている。もし、仮に当主が腐敗の一端を担っていれば……」
テレシアとソフィアの顔が恐怖からか引き攣っている。
やれやれ、私も主人に似て顔に出るようになったか。
だが、ここは敢えて隠す必要もない。
「その時は私がジェニングス辺境伯家を潰す」
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