食うために軍人になりました【一人称版】

KBT

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第六章

終幕

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「グ、グランツ様……こ、この人は本当に人間なんですか?」

「儂も同じ事を考えておった。なんたる武人よ……」

 勝手な事を言ってくれる。
 自分達だって十分強いくせに……

「ううぅ……」

「ば、化物め……」

「アマーリエさん! ドルトンさんもしっかりしてください! 私がちゃんと治しますから!」

 くそ……倒しても倒してもあの回復者ヒーラーが治してしまう。
 こっちはもう限界だってのによ……

「い……い……いい加減に死ねよ! な、なんでまた生きてるんだよ! 僕の呪術で身体は蝕まれてるはずだ! 早く死ねよ!」

「フォールさんと同意見になる日が来るとは思いませんでした。私の毒も確かに効いているはず……なのに倒れない。これは敵ながら賞賛に値しますね」

「ふざけるな! メイビス! 僕の呪術は完璧なんだ! こんな奴、さっさと死ねばいいんだ!」

 ガタガタうるさい奴だ。
 お前の呪いもそっちの奴の毒もしっかり効いてるんだよ。
 ただ、魔力を体内に巡らせて侵攻を抑えているだけだ。
 それもそろそろ限界に近いけどな。

「グハッ……はぁはぁ……」

「確実にダメージはある。だが、油断はできん。総員に告ぐ! 確実に息の根を止めるまで気を抜いてはならんのである!」

 全然油断してくれないじゃないか。
 参ったなぁ……こっちは左眼が潰れてるし、右腕と左足の骨が折れて内臓もかなり損傷してるってのによ……くそ……眩暈がしやがる。
 
「トドメを刺すのである。アマーリエ、ドルトンも立て! 全員で一斉に仕掛けるぞ!」

 さっき倒した格闘家の姉ちゃんと捻れた槍のおっさんも回復したか。
 いよいよ覚悟を決める時が来たようだ。
 だけど、ただじゃ死なないぞ!

「ぬぅおおおおおおおおおっ!」

「ひっ! な、なんて人だ……ま、まだこれだけの力が残ってるなんて……」

「狼狽えるな、リンク! 認めるのである! 奴もまた勇者であると! なればこそ全力で葬るのである!」

 簡単には死なない。
 最期まで戦う。
 残ってる力を全部振り絞る。
 悔いは残さない!

「かかれぇええええええっ!」

「おぉおおおおおおおおおお!」

 老兵の号令で10人が一斉攻撃を仕掛けてきた。
 いいぜ、かかってこいよ!
 これが俺の最後の技だ!

「いくぜぇええええええ! 魔刃一刀流の六文字《静剣せいけん鴉殺三千世界あさつさんぜんせかい》!」

 音を置き去りにする超神速の抜刀術と奴等の攻撃がぶつかり合う。
 視界が真っ赤に染まり、耳をつん裂くような音がして身体中に嫌な感触が纏わりついてきた。
 そして、何かに叩きつけられたような衝撃の後で俺は暗闇の中にどんどん沈んでいった。
 冷たくて苦しいけど、もう身体は動かない。
 みんな……ごめんな。
 
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