食うために軍人になりました【一人称版】

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第六章

岩の天井

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 見慣れない岩の天井が見える。
 ここは何処だ?
 俺は何でこんな所にいるんだっけ?
 確か四勲章競合戦に出て、その最中に反乱があって、それがフェンドラの陰謀で東方に……そこで……あぁ……そうか。
 俺は死んだんだな。

「やぁ、意識が戻ったかい?」

 なんか子どもっぽい声が聞こえてきた。
 随分と親しげに話しているけど、聞き覚えのない声だ。
 もしかしてあの世からのお迎えか?

「あれ? おっかしいなぁ。生命力を感じるから意識は戻ってるはずなんだけどなぁ。おーい! 聞こえてるかーい?」

 なんか呼びかけられている気がする。
 これに答えていいんだろうか?
 答えたらあの世に御招待って言うなら無視しておけば生き返れたりするのか?
 どちらにしても情報が足りない。
 もう少し静観していよう。

「うーん、壊れていたところは全部治した筈なんだけど。他に壊れてるところあったかな? 人間ってよくわからない身体してるからなぁ」

 なんかとんでもない事言ってるぞ。
 『人間って……』って言ってる時点で自分は人間じゃありませんって事だろ?
 やっぱり死んだのか……無念だ。
 せめてもう少し生きたかった。
 何も成せずに死ぬとは不甲斐ない。
 せっかく良き皇帝、良き上司、良き仲間に恵まれたと言うのに。
 俺がもっと強ければ……

「あれ? なんか顔がモゾモゾしてない?  やっぱり意識あるんじゃない?」

 フェンドラの10人に負けた事は仕方ない。
 戦場で卑怯もクソもないからな。
 ただ、帝国軍内部で俺をハメた奴等だけは許せない!
 せめて全員を一発ずつぶん殴ってやりたかった!
 
「今度は拳がワナワナと震えている。これは完全に起きてるね。もしもーし!」

 先ずはナガレス大尉だ。
 あいつが部隊の配置を決めたわけだし、奴等が俺を狙っていたのは間違いないんだからな!
 人の良さそうな顔して騙すとは許せない!
 あの世で会ったら地獄に叩き落とす勢いで殴ってやるからな!

「こらぁあああああ! いい加減に起きろ! 人間! いつまで寝てるんだよ!」

「だぁああああああ! もう! さっきから耳元でごちゃごちゃとうるさいなぁ! こっちは腹の虫が……あれ? だ、誰だ?」
 
 ガバッと起きた先にいたのは見たこともない……なんだろ?
 たぶん人じゃないよな? 
 見た目は女の子のようだけど、肌が全体的に青い。
 こんな種族を見たのは初めてだ。

「はぁ!? 治してやったのになんて口の利き方するんだよ! はっ倒されたいのか!? 人間!」

 治した? 何をだ?
 俺は確か死んで……えっ? あれ?
 じゃあ、何で俺は生きてるんだ?
 ん? 違う違う。
  死んでるから生きてないから……えっ?

「なんだ……記憶が混乱してるのか。相変わらず弱っちいなぁ、人間は。【鮮明クリア】」

 うおっ! な、なんだ!?
 急に頭の中で何か弾けたぞ!?
 でも、なんかスッキリしたなぁ。
 そういえば、この右腕は折れてたはずなのに痛くもなんともない。
 それに潰された左眼も見えてる。
 身体中の傷も全部無くなってるぞ。
 これって、もしかして……

「俺を助けてくれたのか?」

「そうだよ」

「そ、それは申し訳ない! 助けてくれた恩人に対する態度ではなかった!」

「いいよ。僕は大人だから許してあげる。それに君に興味もあったからね」

「興味?」

「うん。興味なかったらそのまま海中に投棄してたよ」

 サラッと恐ろしい事を……
 とにかく何か知らないが助かったみたいだ。
 でも、この子は一体何者なんだ?
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