食うために軍人になりました【一人称版】

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第六章

フォルネア

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 人間的な年齢で言えば10歳前後と言ったところだろうか。
 少しウェーブがかった髪は金色で肌は青い。
 よく見ると金色の瞳は猫のように瞳孔が縦に長く見える。
 耳先は尖ってるけど……エルフではないよな?
 
「あのね~あんまり他者をジロジロ見るはどうかと思うよ?」

「あっ! す、すまない! えっと……私はリクト・フォン・シュナイデン。ヴァランタイン帝国軍中佐で男爵だ。命を救ってくれた事を感謝する。その命を救ってくれた恩人の名前を是非教えていただきたいのだが……」

「へぇ、爵位持ってるんだ。意外だね! 私の名前は……んー、どうしよっかなぁ?」

 悪戯っぽい笑みを浮かべながら考えるフリをする彼女は、見た目通りの少女にしか見えなかった。
 ただ、違うのはその佇まいだ。
 まったく隙がない。
 人間誰しもどれだけ注意を払おうとも隙はできるもんだ。
 しかし、彼女には一切の隙がない。
 手本にしたいくらいだ。

「ん~まぁいいや! ちゃんと自分から名乗ってくれたし、礼儀はちゃんと返さないとね。僕はフォルネア! フォルネア・ルーン・マルベラって言うんだ」

 ルーン?
 聞いたことがないな。
 帝国では貴族は名前にフォンを冠しているけど、ルーンってのは聞いたことがない。
 
「失礼。不勉強で申し訳ないが、ルーンという名を知らないのだ。貴女は貴族なのか?」

「まぁ……貴族って言えば貴族かな? 正確には【上位種グレーター】だけど」

 上位種? 
 またわからない言葉が出てきたぞ。
 別の国の階位なのか?

「そうなのか? 重ねて失礼だが、貴女はどこの国の御方か?」

「僕の国? エレシュキナールだよ」

 全く知らない。
 王国より更に西の国か?
 あのあたりは小国家群だからいろんな国が点在していると聞く。
 その内の一つだろうか?

「ねぇねぇ。そっちばかり質問ってのもフェアじゃないよ。次は僕が質問していい?」

「あ、ああ。そうだな。何が聞きたい?」

「そりゃ何で僕の家の前で血だらけで転がってたかだよ。家を出たら死体が転がってんだよ? めっちゃビックリしたんだから。しかも海底で」

「まぁ確かに驚くな……別に好きで転がっていたわけじゃない。敵との戦闘に敗れて海に落ちたんだよ。それからは記憶がないからわからない」

「なんだ。君って弱虫なのか」

「ムッ……敗者である事は認めるが、弱虫ではない!」

「あっそ。どっちでもいいよ」

 自分から言っといて何て言い草だ!
 やっぱり貴族だな。
 傲慢なあたりがそれを表してる!

「じゃあ、次の質問ね。そこに置いてある【斬桜ざんおう】は君の?」

「斬桜?」

 フォルネアが指差した先にあるのは抜き身の俺の刀だった。
 しまった。
 鞘を落としてしまったんだっけ。
 抜き身は傷むからまずいなぁ。……っていうか、これも海に落ちたのか?
 ヤバい! 早く手入れしないと錆びる!

「安心して。手入れしといたから」

「えっ?」

 手入れのために慌てて刀の元に走った俺にフォルネアが意外な言葉をかけた。
 手入れって、刀の扱い方なんて知ってるのか?

「手入れしてくれたのはありがたいが、これは普通の剣と違って……」

「ちゃんと柄から刀身を抜いて綺麗に拭いてから、油を塗っておいたよ。植物油がなかったから鉱物油だけどね。刃こぼれは無かったから研ぎはしてないよ。意外と腕は良いみたいだね」

 完璧やん。
 刀の手入れの仕方が完璧……本当にこの子は一体なんなんだ?
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